公的介護保険で受けられるサービスの内容は?
介護の度合いに応じてサービスも様々
市町村が運営主体となって、介護を社会全体で支える仕組みとして、公的介護保険が2000年にスタートしました。もし自分自身が要介護状態になった場合、公的介護保険からどのような給付を受けることができるのでしょうか。
公的介護保険の仕組み
公的介護保険は40歳以上の人が加入して介護保険料を納め、介護が必要になった時に所定の介護サービスが受けられる社会保険です。65歳以上の人は「第1号被保険者」、40歳~64歳の人は「第2号被保険者」となります。
第1号被保険者は、要介護状態になった原因を問わず公的介護保険のサービスを受けることができますが、第2号被保険者は、加齢などに起因する特定の病気(16疾患)によって要介護状態になった場合に限り、介護サービスを受けることができます。
- 介護療養型医療施設は2023(令和5)年度末で廃止されました。
公的介護保険のサービスを受けるには
介護サービスを受けるには「介護を要する状態にある」との要介護認定を受ける必要があります。この要介護認定は、介護の度合いに応じて「要支援1~要支援2」「要介護1~要介護5」の7段階に分けられます。
要介護度別の身体状態の目安
要介護度 | 身体の状態(例) | |
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要支援 | 1 | 要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態 食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、立ち上がりや片足での立位保持などの動作に何らかの支えを必要とすることがある。入浴や掃除など、日常生活の一部に見守りや手助けが必要な場合がある。 |
2 | 生活の一部について部分的に介護を必要とする状態 食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、日常生活に見守りや手助けが必要な場合がある。立ち上がりや歩行などに不安定さがみられることが多い。問題行動や理解の低下がみられることがある。この状態に該当する人のうち、適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持や、改善が見込まれる人については要支援2と認定される。 |
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要介護 | 1 | |
2 | 軽度の介護を必要とする状態 食事や排泄に何らかの介助を必要とすることがある。立ち上がりや片足での立位保持、歩行などに何らかの支えが必要。衣服の着脱は何とかできる。物忘れや直前の行動の理解の一部に低下がみられることがある。 |
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3 | 中等度の介護を必要とする状態 食事や排泄に一部介助が必要。立ち上がりや片足での立位保持などがひとりでできない。入浴や衣服の着脱などに全面的な介助が必要。いくつかの問題行動や理解の低下がみられることがある。 |
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4 | 重度の介護を必要とする状態 食事にときどき介助が必要で、排泄、入浴、衣服の着脱には全面的な介助が必要。立ち上がりや両足での立位保持がひとりではほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。 |
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5 | 最重度の介護を必要とする状態 食事や排泄がひとりでできないなど、日常生活を遂行する能力は著しく低下している。歩行や両足での立位保持はほとんどできない。意思の伝達がほとんどできない場合が多い。 |
公的介護保険の自己負担
要介護認定を受けた利用者が所得に応じて「1割~3割」の利用料を支払うことで、「現物給付」による介護サービスを受けることができます(一部、現金による給付もあります)。
- 65歳以上(第1号被保険者)で、合計所得金額が160万円未満の人の自己負担は1割、160万円(単身で年金収入+その他の合計所得金額が280万円)以上の人は2割、合計所得金額が220万円(単身で年金収入+その他の合計所得金額が340万円)以上の人は3割です。
- 40歳~64歳の人や住民税が非課税の人などは所得に関わらず1割負担です。
*合計所得金額:収入から公的年金等控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の所得金額。長期譲渡所得及び短期譲渡所得に係る特別控除がある場合は、控除した額で計算。
*その他の合計所得金額:上記の「合計所得金額」から、年金の雑所得金額を除いた所得金額。
在宅サービス・地域密着型サービスの支給限度額と利用の目安
在宅サービス・地域密着型サービスでは、要介護度に応じて下表のとおり支給限度額が設けられています。 限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担です。
※同一月内に利用したサービスの「1割~3割の自己負担合計額」が高額になった場合の軽減措置(高額介護サービス費)があります。
要介護度 | 1カ月あたりの支給限度額 (自己負担1割または2割、3割) |
利用できる在宅サービス・地域密着型サービスの目安 |
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要支援1 | 50,320円 (1割5,032円) (2割10,064円) (3割15,096円) |
週2~3回のサービス ◎ 週1回の訪問型サービス(ホームヘルプサービス等) ◎ 通所型サービス(デイサービス等) ◎ 月2回の施設への短期入所 |
要支援2 | 105,310円 (1割10,531円) (2割21,062円) (3割31,593円) |
週3~4回のサービス ◎ 週2回の訪問型サービス ◎ 通所型サービス ◎ 月2回の施設への短期入所 ◎ 福祉用具貸与(歩行補助つえ) |
要介護1 | 167,650円 (1割16,765円) (2割33,530円) (3割50,295円) |
1日1回程度のサービス ◎ 週3回の訪問介護 ◎ 週1回の訪問看護 ◎ 週2回の通所系サービス ◎ 3カ月に1週間程度の短期入所 ◎ 福祉用具貸与(歩行補助つえ) |
要介護2 | 197,050円 (1割19,705円) (2割39,410円) (3割59,115円) |
1日1~2回程度のサービス ◎ 週3回の訪問介護 ◎ 週1回の訪問看護 ◎ 週3回の通所系サービス ◎ 3カ月に1週間程度の短期入所 ◎ 福祉用具貸与(認知症老人徘徊感知機器) |
要介護3 | 270,480円 (1割27,048円) (2割54,096円) (3割81,144円) |
1日2回程度のサービス ◎ 週2回の訪問介護 ◎ 週1回の訪問看護 ◎ 週3回の通所系サービス ◎ 毎日1回、夜間の巡回型訪問介護 ◎ 2カ月に1週間程度の短期入所 ◎ 福祉用具貸与(車イス、特殊寝台) |
要介護4 | 309,380円 (1割30,938円) (2割61,876円) (3割92,814円) |
1日2~3回程度のサービス ◎ 週6回の訪問介護 ◎ 週2回の訪問看護 ◎ 週1回の通所系サービス ◎ 毎日1回、夜間対応型訪問介護 ◎ 2カ月に1週間程度の短期入所 ◎ 福祉用具貸与(車イス、特殊寝台) |
要介護5 | 362,170円 (1割36,217円) (2割72,434円) (3割108,651円) |
1日3~4回程度のサービス ◎ 週5回の訪問介護 ◎ 週2回の訪問看護 ◎ 週1回の通所系サービス ◎ 毎日2回(早朝・夜間)の夜間対応型訪問介護 ◎ 1カ月に1週間程度の短期入所 ◎ 福祉用具貸与(特殊寝台、エアーマットなど) |
※1・2・3割負担の額は、高額介護サービス費適用前の金額です。
※支給限度額は標準的な地域の例です。大都市等の場合、介護サービスの内容に応じて利用料が高くなるため、支給限度額は上記よりも高くなります。
※支給限度額を超えた分は全額自己負担になります。また、施設における食費や居住費・滞在費、日常生活費などは公的介護保険の給付の対象にはなりません。
※支給限度額の対象外のサービス(居宅療養管理指導、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護)があります。
※介護福祉士の割合が一定以上の場合の「サービス提供体制強化加算」など、一部の加算は支給限度額の対象外となります。
※現金で給付される福祉用具購入費や住宅改修費は支給限度額とは別枠で、要介護度にかかわらず、それぞれ限度額が決まっています。
参考:在宅サービスの利用例