公益財団法人 生命保険文化センター

X youtube
リスクに備えるための生活設計
万一の場合

公的な遺族年金の仕組みについて知りたい

万一の場合に見込める社会保障「遺族年金」

遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。どの遺族年金を受け取れるかについては、亡くなった人の職業によって異なります。また、遺族年金を受け取れる遺族の範囲も遺族基礎年金と遺族厚生年金では異なります。

2028(令和10)年4月から遺族年金の大幅な見直しが行われます。

遺族年金の受給と年金額のめやす

遺族基礎年金は、子どものいる配偶者(妻または夫)か子どもが受け取れます(子どもとは、18歳到達年度の末日までの子どものほか、20歳未満で1級・2級の障害状態にある子どもを含みます)。

2025(令和7)年度の遺族基礎年金の年金額は、69歳以下の配偶者(妻または夫)が受け取る場合、子ども2人の期間では1,310,300円、子ども1人の期間では1,071,000円です。

図表_遺族年金早わかり2025年度

  • 上記の表では69歳以下の年金額を記載。受け取る人の年齢(69歳以下か70歳以上か)で基礎年金の年金額が異なる。

69歳以下:1956(昭和31)年4月2日以降生まれ
70歳以上:1956(昭和31)年4月1日以前生まれ

妻が受け取る遺族厚生年金への加算と寡婦(かふ)年金

妻が受け取る遺族厚生年金には、次の2つの加算があります。
また、国民年金(第1号被保険者)の独自給付として、妻のみが受け取れる寡婦年金があります。

<中高齢寡婦加算(厚生年金)>
  • 夫の要件:厚生年金に加入中の夫が死亡した場合、または厚生年金の被保険者だった夫(厚生年金の加入期間が原則20年以上あった人)が死亡した場合に加算の対象となります。
  • 妻の要件:夫が死亡したときに40歳以上65歳未満の妻、または子どもが18歳到達年度の末日を迎えて遺族基礎年金を受け取れなくなったときに40歳以上65歳未満の妻が加算の対象となります。
  • 2025(令和7)年度の中高齢寡婦加算の金額は623,800円/年です。妻が65歳になるまで加算されます。
<経過的寡婦加算(厚生年金)>
  • 妻が65歳になると妻自身の老齢基礎年金を受け取れるため、中高齢寡婦加算がなくなりますが、中高齢寡婦加算に替わって1956(昭和31)年4月1日以前生まれの妻には経過的寡婦加算が付きます。
  • 夫死亡時に65歳以上の妻にも付く場合があります。
  • 経過的寡婦加算の金額は生年月日によって異なります。1956(昭和31)年4月1日生まれの妻の場合、2025(令和7)年度の経過的寡婦加算は20,757円/年です。
<寡婦年金(国民年金)>
  • 第1号被保険者としての加入期間が10年以上ある夫の死亡時に、夫に生計を維持され、かつ、婚姻期間が10年以上継続した妻が60歳から65歳になるまで受け取れる年金です。他の年金との併給はできませんが、遺族基礎年金を受け取っていた人も受け取れます。ただし、夫が老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取っていた場合や妻が老齢基礎年金を繰上げ受給していた場合などは受け取れません。
  • 寡婦年金の金額は、夫の老齢基礎年金相当額の4分の3です。

夫が受け取る遺族年金

<遺族基礎年金>
  • 「子どものいる夫」が受け取れます。ただし、妻の死亡が2014(平成26)年4月以降の場合です。
<遺族厚生年金>
  • 妻の死亡時に夫が55歳以上の場合に受け取れます。ただし、60歳になるまでは支給停止されます(子どものいる夫は55歳以上60歳未満でも受け取れます)。
  • 妻の死亡時に55歳未満の夫は受け取れませんが、子どもがいれば、子どもが遺族厚生年金を受け取れます。
  • 夫には中高齢の寡婦加算や経過的寡婦加算は付きません。

※子どもとは、18歳到達年度の末日までの子どものほか、20歳未満で1級・2級の障害状態にある子どもを含みます。

年金制度改正により2028(令和10)年4月から遺族年金が大幅に見直されます。

  • 遺族厚生年金の男女差解消のため、夫の年齢条件(妻死亡時・夫55歳以上)が廃止されます。
  • 遺族基礎年金の対象となる子どもがいない60歳未満の夫・妻が受け取る遺族厚生年金は、原則5年の有期年金となります。ただし、妻については2028(令和10)年度末で40歳未満の妻が5年の有期年金の対象となり、その後20年かけて段階的に60歳未満に引き上げられます。
  • 原則5年の有期年金にするにあたっては、様々な配慮措置(年金額の増額、所得などに応じて最長65歳になるまでの継続給付、死亡時分割制度の導入)が設けられます。
  • 中高齢の寡婦加算は、25年かけて段階的に縮小されます。
  • 子どもを持つ年金受給者の保障を強化する観点から、現在受給している人も含めて子どもの加算額が引き上げられます。見直し後は第3子以降も第1子・第2子と同額で一律281,700円(2024(令和6)年度価格)となります。
  • 遺族の収入要件(年収850万円)が廃止されます。
  • 子どもに支給される遺族基礎年金の支給停止要件が見直されます(親の再婚など、子ども自らの選択によらない事情による支給停止がされないようになります)。