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教育の現場から
No.01

夏季セミナー家庭科授業実践報告 「生活設計やリスク管理に関する授業の実践報告」

東京都立竹早高等学校 兼 日本女子大学通信教育課程 客員教授 三野 直子 先生

2020.09

竹早高校は、NHKの「いだてん」の金栗四三先生が教壇に立っていた高校が前身で、自分自身も出身校なので、私自身、楽しんで教壇に立っています。
今回はPPTを使用する授業実践例をご紹介します。考えてみると、明治時代から黒板とチョークは続いていますが、今回のコロナ禍で、日常的にICTを駆使した授業展開をしないといけない時代になってきました。ただし、媒体環境がないと成り立たないのがネックかと思っています。

PPTを使用した授業はハードルが高いと思う先生もいると思いますが、やってみると印象は違うと思います。実際、私の授業はすべてPPTでやっています。生徒の反応を見ながら、文字を増やしたり、行間を開けたりして工夫しています。
私は進学校や定時制高校、農業高校など色々な学校で授業を行ってきました。PPTを使った授業ができるのは進学校だけではありません。1学期1テーマでもいいのでやってみると生徒の反応が違うので、ぜひ取り組んでいただきたいです。

最近、生徒の言動で気になるものがありました。生徒がよく「損か得か」と聞いてきませんか。「誰得ですか」という発言もありました。保険というものを説明する中で、損得勘定はどういうことか考えると、一瞬、自分が満足することかな、と思います。この損得勘定について解説している本があるのですが、長期的課題解決においては、損得勘定はほとんど意味がないと謳っています。
わかりやすい例でいうと、バイキングの例があります。損をしたくないから高いものをたべたい、という感情です。しかし、最終的には適量、つまりおいしいものをおいしく食べたい、と感じます。だから、損得勘定というのは、「一瞬、その場だけのもの」だと思います。

そして、保険をどう考えるかというときに、リスクに備えて安心を買う、という感覚があります。何もなくてよかった、と思うことです。例えば海外旅行保険等で何も事故がなかった場合に、何もなかったから加入しないほうがよかった、と思う生徒もいるが、それは違うと教えています。何もなかったことがよかったということです。余裕があれば色々なことができます。心配事が減ったということで保険に加入する行為に意味があります。また、身の丈にあった保障を付加するという考えもあると思います。

2020.09

学校向け無償提供教材
生徒用ワークブック「君とみらいとライフプラン」~もしもの備えと生活設計~
B5判/26ページ(シール付)

それでは生命保険文化センターが作成している「君とみらいとライフプラン」(以下、本教材)という「ライフプラン表」の作成ができる教材を使った授業展開についてお話します。実際に授業で活用できるかというと、実は3学期になって余裕のあるクラスしかできていないのが現状です。ただ、本教材のデータ類や自立に関する事柄、経済、保育、住居、最後生命倫理という題目で小論文を書かせて終わりということにしています。

2020.09

 

本教材の2ページ「生活設計」のテーマを見てください。ワークを進めていける人はここでどんどん進めていきます。竹早高校の生徒は書くのは早いですが、学校によって違うので生徒のスピードに合わせて進めればよいと思います。ライフコースのところで、家族やDINKSなどを含め説明をしています。自立のところでも進路について学習しているので、ここは話すだけにしています。

次に2ページと同様、「生活設計」のテーマ、本教材の3ページを見てください。夢や目標、資金計画、リスク管理を考えてもらいます。大切なことを実現するための手立てであることを説明します。高校生にとって資金計画はまだ早いということもありますが、知識として必要ではないかと思います。リスク管理に関しても軽く説明をしています。その下のライフサイクルの変化を見てください。大正時代から現代にいたるまで、出生率は変化していっていますが、その説明としてNHKで放送されていた「おしん」というドラマを見せることがあります。なぜこれがよいかというと、明治時代のおしんという女性が、色々なところに奉公に行って働く姿を、画面を通じて見ることで、生徒は「大変だな」という印象を持ちます。その姿を見ることで、今の自分に投影できるという点があり、良い教材ということで今も使用しています。核家族の進行で少子化が進んでいる現状をここで読み取ることができます。ライフサイクルの変化のところを見てください。1920年は約60歳、1961年は約70歳、2013年は約85歳が平均寿命となっています。つまり、「おしん」の時代はほとんど寝込むことなく亡くなっていたかもしれませんが、現在は介護期があるため、認知症の問題などがあることを話します。

2020.09

次に本教材の4ページ「職業と働き方」のテーマを見てください。こちらも各テーマごとに記載されている4コマ漫画を見てからワークに取り組んでもらいます。こちらのキーワードはキャリアプラン、正規・非正規雇用、非消費支出です。非消費支出については経済の授業でも行っています。「働く目的は」と記載がありますが、貨幣経済の中の私たちには、お金がないとどうしようもない、という側面があります。被服の授業で、裸族の人は洋服を着ていない、という話をしています。彼らは自給自足で幸せだ。そして彼らに被服を与えたとします。そうすると洗濯を教えないといけない。洗濯をするためには、お金も必要になります。例えば飴玉を子供に挙げたとして、また食べたい、となっても彼らは買えません。彼らを貨幣経済に巻き込むと、その瞬間に極貧になってしまう。社会貢献をする場合は自分なりに考えて行ってほしいと伝えています。

4ページと同様、「職業と働き方」のテーマ、本教材の5ページに行きます。昭和時代はいい会社に入って終身雇用の時代でした。しかし、現在は転換期に入っています。今後ボーナスが続くのか、AIが台頭するとどうなるか、キャッシュレスも浸透している。時代は変化しています。今子供が好きなものはYouTubeです。竹早高校の卒業生で、YouTube関連で起業した方もいます。若い人が起業している例もあるということです。雇用形態の中で賃金に男女差があることに触れていきます。私は社会保障と家計の授業で触れているので省略しています。

本教材の6ページ「結婚と家族」のテーマですが、晩婚化の話をします。結婚のイメージを生徒に聞き、女性と男性は結婚観が違うという話や、生涯未婚率の男女のデータを出し、他の国とも比較してみます。例えば韓国は、生涯未婚率は男性が5.8%、女性が2.8%です。国によって違うことを理解してもらいます。今後、日本では初婚年齢が上がっていくというデータがあり、結婚イベント費用についても小規模化しています。女性が経済力を持つようになり、発言力も増してきました。パートナーシップとして立ち位置を尊重するということを教えていただきたい。過去の男尊女卑の歴史を教えて欲しい。かつては、男は体育、女は家庭科といった教育課程がありました。昔聞いた言葉で、家庭科は息抜きという生徒がいて、先生が「家庭科は”生き抜く”教科だ」といったことがあったそうです。
日本では結婚しないと子供が生まれないという社会ですが、フランスでは非嫡出子が56.7%と高率です。日本は2.3%です。この差は、結婚に関してのハードルです。日本は紙で結婚をしますが、フランスは結婚も離婚もハードルが高いのです。そこで非嫡出子が高くなるのですが、結婚に代わる制度(PACS)もあるためそうなっています。また共働き世代の増加に関して、新聞で記事になっていましたが、コロナ禍で妻が料理をし、夫がリモートで仕事をしていて、子供がうるさいから外にいかせる、といった記事がありました。また、待機児童に関しては、収入の少ない世帯の方が待機児童となり、働けないというデータがあります。

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次に、本教材の8ページ「子育てと教育」のテーマに行きます。こちらは子育てに関して記載してあります。教育資金を計算する際に注意するべきは、複数の子供がいる場合、その数をきっちり人数分足して考えることを教えてあげないといけません。実際は中堅校以下となると計算に手間がかかる場合もありますが。その場合でも時間をきっちりととらないといけません。また、教育費用をかけすぎると親が老後破産となってしまったりすることも伝えます。また、大学入試は人生初の高額商品となります。慎重に大学を選んで、自分が将来どの職業に就くのかまで考えることが大切ということを教えてください。

2020.09

 

次に本教材の10ページ「住まい」のテーマのところです。私は授業で、今の住まいが変わる可能性がありますか、ということを聞いています。例えば一人暮らしをしたりなどです。東京は住宅費用が高額ですが、実際に住宅情報サイトを検索し、自分の家の近くの賃貸相場を調べさせます。そうするとイメージがしやすい。また、収入の3分の1が住宅費用の相場という話をして、いい家に住みたいのであれば収入を増やすか、何かを我慢する必要がある、といった話をしています。住宅ローンについては、「マイホーム・マイルーム」というビデオを見せているので、そこで学習したことを伝えて終わっています。家計としては収入の10%という目安を教えています。

2020.09

次に本教材の12ページ「高齢期」のテーマです。生涯収入や要介護期などの説明をしますが、3人に一人が65歳以上になる現状を見せて、外国人労働者の受け入れを絡めて、将来外国人の社会保障費をどうしたらよいかまで含めて話をしています。多死社会という言葉があり、その説明もしています。介護は大変な現状がテレビ等で伝わっていますが、介護は共倒れになってはいけないと思っています。介護をするために仕事を辞める人が多いですが、何とか仕事をしながら介護を続けないと、親が死亡すると親の年金が無くなり生活に困窮してしまう、といった事例も交えて教えています。

2020.09

次は、本教材の20ページ「私的保障」のテーマです。公的保障については、社会保障に4時間使用して、厚労省のビデオも見せているので、イメージはつきやすいため、省略しています。自分に必要なリスクを考えて、損得を考えないこと、未来は予測できないことを伝えていきます。また、保険と貯金の違いについてはよく教えていきます。貯金は貯まらないと活用できないが、保険は加入した瞬間に保障が始まる、という違いを詳しく教えています。また、一人っ子が親の財産を相続しない場合に国庫へ帰属するといったことも知識として教えています。
 社会保障については、「社会保険は5種類(公的医療保険、公的年金、公的介護保険、労働者災害補償保険、雇用保険)、年金は3種類(老齢年金、障害年金、遺族年金)」をポイントとして教えています。年金は老齢だけでなく遺族、障害もあるため、必ず加入すること、そして申請主義のため申請しないともらえないことも伝えます。

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次に24ページからの「ライフプラン表の作成」についてです。例えば海外旅行保険では、安心を買うことで旅行がより楽しくなることを教えてあげて欲しいです。 シートに名前、番号を記入してもらい、自由に今の考えで記入するように言います。ちなみに、竹早高校では一人っ子はどれくらいいるかを聞くと、20人中3人は一人っ子という感じですが、農業高校に赴任していたときには18人に聞いたら、一人っ子は0でした。地域によって違いはあると思うので、実情に合わせた形でライフプランを作成すればいいと思います。

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ここまでを20分でまとめて話、30分弱でライフプラン表を書いて提出、という方法で授業を行っています。最後になりますが、家庭科というのは教員側の自分の実体験が出やすいので、考えを押し付けないことが大事かと思います。人生は非常に長く、老後は遠い先の話に思えてしまいます。生徒たちにとって近い将来は進学という生徒が多いかと思います。近い将来からイメージさせるようにしてください。また。結婚をする、しないの選択についても今は独身の人も多いです。押し付けないで、色々な選択肢があるということを伝えられればと思います。家庭科は科目の中でも非常に短い時間の授業となりますが、その中においても子供たちに何か残して欲しいという想いの中、このライフプラン表を活用していただければと思います。ご清聴ありがとうございました。