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ESSAY エッセイ

生活設計

新時代を創造するウェルビーイングな消費者市民~ウェルビーイングに生きるために消費者リテラシーは不可欠~

大阪教育大学教授 大本 久美子

SDGs(持続可能な開発目標)やOECD(経済協力開発機構)がウェルビーイングを重要な項目として挙げるなど、今日、ウェルビーイングは幸福や健康をあらわす概念として注目されています。
特にこれからの学校教育では、子どもたちの学ぶ力の育成に加え、自分らしく、幸せに生きていく力(ウェルビーイング)を育むことが重視されます。

ウェルビーイングに生きるためには、消費者リテラシーの獲得は不可欠です。

そこで本エッセイでは、持続可能な社会をつくる担い手としての消費者に必要なリテラシーとはどのようなものか、またこれからどのような消費生活を営むことが求められているかについて、今月から3回にわたって考えてみたいと思います。1回目の本稿では、消費、消費生活の意味とウェルビーイングを向上させる要素を、2回目は主体的に消費生活を営むためには、どのような力が必要なのか、3回目はそれらの力の育み方について提案したいと思っています。

そもそも「消費」の言葉は、「消える」「なくなる」「ついやす」「使う」の意味があることから、「使い果たしてなくなる」という概念を表すものとして多くの人に認識されていると思います。一方、経済学的には、「生産」と対をなす概念でもあり、近年、倫理的消費、持続可能な消費など、単に使ってなくなるだけではなく、社会との関係で、意識的な行為として「消費」をとらえる動きもみられます。

また「生活」は、英語では「LIFE」ですが、LIFEは、人生・いのち・生涯・一生などの意味も持ちます。生活の辞書的な定義は、生存して活動すること、生きながらえること、世の中で暮らしていくことなど、生存する面と、人間的・社会的に暮らしていくことの両面を含んでいます。
私が学んできた家政学では、単に「生命」を維持するだけではなく、よりよく、充実したものに高めていくための主体的・創造的な活動も含めて「生活」をとらえています。

以上のことから、消費生活を営む消費者は、「生活者」と言い換えることもでき、「よりよい消費生活」とは、いのちや人生を輝かせるために、「健康」や「社会・環境との関わり」で消費を捉えたさまざまな主体的な活動、ということもできそうです。

さらにこの「よりよい」の基準は人によって異なり、これまでより「よりよい」レベルも人によって、また状況によっても異なります。
学びを積み重ねることで、自身の価値が洗練され、「よりよさ」が向上しますが、このさまざまな学びと修正の積み重ねが「生活」そのものなのです。
家庭生活における消費は、単に使い果たしてなくなるのではなく、健康や快適、安心・安全、団らんなど、消費することで新たな価値を生み出し、今よりも「よりよい」生活を目指して、日々暮らしていることに注目したいと思います※1。

最後にポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマン博士らによって提唱されたPERMA理論を紹介しましょう。
PERMAとは、

  • P=Positive Emotion:ポジティブ感情
  • E=Engagement:エンゲージメント
  • R=Relationship:関係性
  • M=Meaning and Purpose:意味・意義
  • A=Accomplishments:達成

の略語です。2011年に出版された著書『Flourish』 の中で、彼は善い生活を送るための本質的要素に関する広範な理論を示しています※2。
この理論を消費生活に当てはめてみると、よりよい生活や社会の創造を目指す「目的追究」やよりよい生活の「実現(達成)」がウェルビーイング向上につながり、例えばポジティブな感情で豊かな人間関係のある消費生活を送ることでウェルビーイングを高めることができそうです。

  • ※1 「シリーズ 家庭科教育とSDGs8 消費生活領域の学習とSDGs」 日本家庭科教育学会誌(2021年11月) 64巻3号 P.208-211  https://doi.org/10.11549/jjahee.64.3_208(外部サイト) 
    • ※2 『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』 (2014)P.33-34
         マーティン・セリグマン
         宇野カオリ・監訳
         『POSITIVE EDUCATION The Geelong Grammar School Journey 』(2015) JACOLYN NORRISH,PhD. P.311

プロフィール

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大本 久美子(おおもと くみこ)

大阪教育大学教授。
消費者教育及び家庭科教育を専門とし、現在の主な研究テーマは、ウェルビーイングを育む学校教育のカリキュラム開発。