家計に関する調査結果を参考にするときの注意点
物価変動や家計消費に関するニュースなどを見聞きすることが多くなっています。総務省統計局による「家計調査」の結果として、消費額や収入額の変動(前年の同じ月との比較)、餃子やラーメンなど地域別の消費の特徴なども様々に報道されています。
「家計調査」は、全国約9,000世帯を対象に家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査しているもので、総務省統計局のホームページで公開されています。自分の支出内容を評価するときの参照値にしたり、経済計画を立てるときにライフステージ別の支出状況を参考にすることができます。
しかし、数値を読むときには少し注意が必要です。
例えば、「家計調査(2024年)」によると、「2人以上世帯のうち勤労者世帯」の実収入(給料や家賃収入、社会保障給付など)は約64万円、「単身世帯のうち勤労者世帯」では約37万円です。この金額は年間合計値を12カ月で割って算出した1カ月分の数値のため、ボーナスのない月と比べると高く見えるかもしれません。「2人以上世帯のうち勤労者世帯」では、6月、7月、12月(ボーナス月)以外の実収入は概ね50万円台です。消費額(消費支出)の金額も月により変動があり、12月の金額は他の月に比べて10%から20%程度高くなっています。ボーナスにより収入が増え、それに応じた高額の買い物や、年末年始の準備などで支出が膨らむ傾向にあります。
また、「家計調査」では、消費支出の住居費に家賃・地代や設備修繕・維持費が含まれており、住宅ローンは入っていません。持家率の高いグループの集計結果では、住居費は比較的少なくなっており、参考にする場合はこの点も考慮に入れる必要があります。このほか、貯蓄保有額の100万円刻みの世帯分布は低い方に偏っており、平均値は中央値(金額順に並べたときの中央の数値)とは大きく異なっています。
数年前に金融庁のワーキンググループの報告書(2019年6月3日)に掲載された「必要な老後資金は2,000万円」という数値は社会に大きなインパクトを与えましたが、この数値も「家計調査」がもとになっています。「家計調査(2017年)」の「高齢夫婦無職世帯」の月々の赤字約5.5万円が30年間続くことを想定して算出されました。「家計調査(2024年)」の結果を用いて算出すると、社会保障給付を含む実収入が増加したこともあり、必要な老後資金は約1,200万円となります。消費額も増えていますが、無職世帯ながら就労収入が少し増え、社会保障給付金が2017(平成29)年より約3万円増えたことで、赤字が縮小しています。
とはいえ、老後に対する不安感は依然大きい状態です。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2025年度)」では、老後生活に対する不安の有無について、「非常に不安を感じる」16.7%、「不安を感じる」30.9%、「少し不安を感じる」35.5%を合計した「不安感あり」は約8割を占めています。また、内閣府の「高齢者の経済生活に関する調査(令和6年度)」によると、経済的不安には、年齢や家族との同居形態、健康状態が影響していました。保健・医療関係の費用にお金を優先的に使いたいと考えている場合には、経済的不安感が高くなっていました。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査[2人以上世帯](2024年度)」では、過去3年間に介護経験のある人の実際にかかった介護費用は、一時的な費用の合計額が平均47万円、月々の費用は平均9万円でした。
病気や介護の備えとして公的に保障される内容や金額の長期的展望の提示が期待されますが、自分で生活設計を考えるときに「家計調査」やその他の調査結果などを参考にする場合、どのようにその数値が算出されているかも気にしてみてください。

