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ESSAY エッセイ
消費生活相談

消費者トラブルを防ぐための注意点や心構え ~デジタル時代の消費行動を中心に~

公益社団法人 全国消費生活相談員協会 柿沼 由佳

情報通信技術の進展により、インターネットを利用する機会は日常であり、インターネットがないと生活に支障をきたしかねず、既にインフラといえるものとなっている。

消費者行動においても経済社会のデジタル化に伴い、インターネットを用いた取引は増加傾向にあり、情報入手の簡便性、取引時間や取引場所を選ばないなどの高い利便性を有することから、消費者に広く受け入れられている。また、事業者も市場参入が容易であることから多種多様な分野において市場に名乗りを上げている。

このような消費生活のデジタル化は質の高い豊かな暮らしを享受するものである。政府においてもデジタル化を推進していくことは、デジタル庁を創設していることからも窺い知ることができ、コロナウイルス感染症拡大による新しい様式が求められる中、消費生活のデジタル化はこれからも加速していくと考えられる。

一方、インターネットは必要以上に消費者欲求が掻き立てられやすい傾向にあり、様々なインターネットを介した消費者トラブルが複雑巧妙化しながら増加している。消費者庁や行政の相談窓口から注意喚起を行っているが、消費者に情報が確実に届いているとは言い難い。これは、消費生活相談件数の推移をみてもトラブルが減らないばかりか、増加傾向であることや、インターネット関連の相談件数が常に上位を占めていることからもわかる。

インターネットでの取引自体はシンプルであるが、契約に事業者が多数介在している場合も少なくない。非対面取引のためトラブルが発生した際の申し出先の特定ができないなどの問題も起こっている。また、デジタル技術革新の進展が早いため、消費者は機器の利用ができても態様について知識が伴わず、事業者と消費者間の情報の非対称性、交渉力の格差が拡大し、消費者が十分に契約内容やサービスの品質を理解して契約することが困難である。

インターネットの消費者取引が始まったのは20数年前からであり、それ以前になかった契約形態であることから、従前の契約知識だけでは判断できないことがトラブルの一要因であると思われる。

デジタル時代にはその脆弱性を補強するような消費者教育と情報教育を考える必要があるが、社会教育分野で十分に実施されているとは言い難い。よって、今後は社会全体でデジタル化に伴う消費生活に関する教育の重要性を認識できるような環境作りが必要である。また、消費者のリテラシー向上だけではなく、情報の非対称性等を埋めるために事業者側が説明内容を充実させる工夫をしたり、デジタル技術を開発する者が取引トラブルに遭わないような仕組みづくりを醸成することも求められよう。

これにより、消費者がデジタル社会においても消費行動に対し批判的な視点と、自立した消費行動を身につけることができるようになる。しかし、消費者自身が積極的に関わることが大切だ。デジタル化が発展していく中で、消費者が取り残されることのないようにするために。

プロフィール

柿沼由佳(掲載用写真)

柿沼 由佳(かきぬま ゆか)

公益社団法人 全国消費生活相談員協会