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ESSAY エッセイ
消費生活相談

消費生活相談の現場で感じる変化とその先に見えるもの

公益社団法人 全国消費生活相談員協会 関東支部 野田 夜賜重

近年、消費生活相談に多数寄せられる相談の中で、法解釈がより明確に示されたことで相談処理のあり方が大きく変わったのが、暮らしのレスキューサービスに関するトラブルです。暮らしのレスキューサービスとは、カギの紛失や、トイレの水漏れ・詰まり、害虫駆除など緊急の復旧や駆けつけを必要とするサービスで、以前から消費生活センターに寄せられる相談の一つでした。ところが、新型コロナウイルス元年ともいえる2020年頃から、トイレの修理サービスの相談が急増しました。

内容は、トイレが詰まったので、ネットで「トイレ詰まり980円~」という広告を見て修理業者に連絡をして自宅に来てもらった、最初はポンプを使って作業をするので2万円と言われ承諾をしたが、詰まりは解消せず、次に便器を外して作業するので5万円かかると言われ、トイレが使えないと困るのでやってもらったら、さらに通管作業代として3万円が追加され、最終的に10万円の請求をされたが高すぎるのではないかというのが、典型的なパターンでした。従来、消費者がトイレの詰まり解消を頼んでいるのに新しいトイレ便器への交換を勧められ契約した場合など、当初依頼した内容と異なる勧誘をされ契約をした場合は、クーリング・オフの主張が可能との考えはありましたが、トイレの詰まりの修理が最終的に高額になったという事案については、修理サービスであることに変わりがなく、消費者から広告を見て自宅に呼んでいるので、事業者がクーリング・オフを認める可能性がほとんどないことから、クーリング・オフの主張は困難と消費生活センターでは助言せざるを得ませんでした。クーリング・オフとは、訪問販売など法律で定められた条件で契約をした場合、一定期間、無条件で契約解除ができる制度です。ところが、前記の事例のような場合、事業者との斡旋交渉でクーリング・オフの主張をしてもクーリング・オフを認める事業者はほとんどありませんでした。事業者からは「お客さんからの要請で自宅を訪問しており、作業に入る前にその都度金額の説明をして本人も了承していたはずだ」と反論されることがほとんどでした。すでに作業代金を支払っている場合は事業者から返金してもらわなければなりません。事業者にクーリング・オフの趣旨を理解してもらうために繰り返し説明をするということが続きました。結果的に事業者とは減額交渉になることがほとんどで、消費者の希望する解決金額とは開きがあるのが現実でした。

相談現場で解決に苦慮する中で、消費者庁からウェブサイト上の安価な修理代金を見て訪問修理を依頼したにもかかわらず、実際には高額な修理工事の勧誘を受けて契約した場合など、消費者がもともと高額な修理代金を伴う契約を締結する意思を有していなかったといえる場合には、通常どおりクーリング・オフが認められるとする見解が出されました。これを機に相談現場では消費者にクーリング・オフの主張が可能と明確に助言できるようになり、解決への方向性が大きく変わりました。

消費生活トラブルは、被害の実情に合わせて法改正や法解釈の明確化が他の法律と比べるとフレキシブルに行われる分野です。消費者被害をなくすための法整備がされることは歓迎すべきことですが、その趣旨を消費者や事業者など関係するすべての人が同じように理解するには一朝一夕にはいきません。しかし、すべての出発点は、納得できないことは消費生活センターに相談するという相談者の思いと行動です。消費者からの相談はご自身の問題解決を図るためであることはもとより、次の被害者をなくすためのアクションでもあり、制度を変え得る第一歩につながることを相談現場から実感しています。

 

プロフィール

野田 夜賜重(掲載用写真)

野田 夜賜重(のだ やすえ)

公益社団法人 全国消費生活相談員協会 関東支部