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ESSAY エッセイ
生活設計

コロナと生活

岐阜大学副学長/教育学部教授 大藪 千穂

コロナ禍での生活

2020年の1月に新型コロナ感染症が確認されてから、すでに3年目の秋になりますが、完全に終息することはなかなかないようです。最近はコロナ以外に、天候不順による穀物の不作や、戦争によるエネルギーの輸入禁止や燃料費の上昇等により、これまでになく物価が上昇しています。ガソリン価格もかなり高くなったことで、2022年に入ってから数回、政府の介入によって価格が抑えられてきました。これまで日本は、比較的豊かな時代を過ごしてきたと言えます。私の幼少期はまだ高度経済成長の生活での実感がこれからという時だったので、日本はそれほど豊かではなく、スーパーもなく、買い物は買い物かごを持っていき、うどんを買う時も、ゆでた麺が「すのこ」の上に置いてあり、紙に包んで渡してもらっていました。魚屋さんも八百屋さんもすべて新聞紙で包んでくれました。豆腐はもちろん、鍋を持っていって入れてもらっていました。プラスチック製品はなかったのです。それから一気に経済成長が進み、生活は便利さ豊かさと引き換えに公害やごみ問題が急増し、心の貧困など、様々な負の面もあらわになってきました。

コロナ禍による生活の変化

コロナによって私たちの生活はかなり変わりました。ネット環境が整備され、テレワークが当たり前になってきました。人口も首都圏から地方へと少しずつ動きがみられるようになってきました。これによって通信費は上がりましたが、住宅費や通勤費は下がりました。もちろんコロナによって、最初の頃は外出できずに家庭内でのいざこざやDVなど、マイナスのことも多くありました。ただコロナも3年目になると、これまで当たり前だと思っていた規則や方法が、コロナによって案外すんなりと変更できるようになりました。今までは時間をかけて東京や大阪に1日仕事で行っていた出張は、オンライン会議が可能となり、時間、エネルギー、お金を違うことに使うことができるようになりました。それによって、家族との時間が増え、コミュニケーションが増えた人もいます。大学も当初は大学に行けない、講義をみんなで受けられない、という不満が学生から多かったのですが、3年目ともなると、わざわざお金をかけて下宿しなくても、家で安心して何度もオンデマンド配信の講義を聞くことができる、と好評な面もあります。外食も楽しみの一つですが、これまでは敷居の高かった料亭やホテルがデリバリーを開始してくれたのは嬉しい変化です。デジタル変革に続き、CO2排出量ゼロへの政策も急速に進展すると考えられます。

ポストコロナの生活

コロナだけでなく、海外の情勢の変化や燃料費の高騰によって、家計はかなりの影響を受けています。日本は原材料が少なく、輸入に大幅に依存している国なので、特にエネルギー関連の費用は、今後も高騰が予想されます。さらに天候不順や輸入の減少により、小麦粉を始めとする様々な食品の値段も春から何度も上がっています。

このような中、今後の生活はどうあるべきなのでしょうか。生活を元に戻すわけではないですが、ちょっと便利だけど人件費やエネルギーが必要な生活はしない、プラスチックをなるべく使わない、代替品の利用を考える、節電に心がけるなど、年配者にはなじみがあり、若い人には新しい生活に急速に舵を切らなければなりません。そのためには柔軟な頭、「昔はこうだったのに・・・」と愚痴を言わないポジティブな考え方が必要です。

 

プロフィール

大藪 千穂(掲載用写真)

大藪 千穂

1962年京都市生まれ。京都ノートルダム女子大学文学部を卒業後、大阪市立大学生活科学大学院修士課程を経て博士課程単位取得修了(学術博士)。1994年より岐阜大学教育学部助教授(家政教育講座)を経て現在、岐阜大学教育学部教授(兵庫教育大学大学院 連合学校教育学研究科教授を兼任)。2021年より副学長(多様性・人権・図書館長)。日本消費者教育学会副会長。文部科学省消費者教育アドバイザー、金融広報アドバイザー(日本銀行)、京都銀行社外取締役、消費者ネットワーク岐阜代表。
専門は、家庭経済学(家計分析、消費者教育)、環境とライフスタイル論(アーミッシュ研究)。
主な著書に、「岐阜人の不思議」(岐阜新聞社)、「生活経済学」(放送大学)、「はじめての金融リテラシー」(昭和堂)、「お金と暮らしの生活術」(昭和堂)、「ちほ先生の家計簿診察室」(名古屋リビング新聞社)、「アーミッシュの謎」「アーミッシュの昨日・今日・明日」(論創社、訳書)など。