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ESSAY エッセイ
生活設計

人生の3大費用

岐阜大学副学長/教育学部教授 大藪 千穂

教育費は一人約1千万円!

平均的な家計で、人生で最もお金がかかるのは、教育費、住宅費、老後の費用です。これが人生の3大支出です。

教育費は2019年10月から全面実施となった「幼児教育の無償化」によって近年減少傾向にあります。実は幼児の教育費(私立幼稚園)は、高校生(公立)にかかるのと同じぐらいかかっていましたが、認可保育園や認定こども園にかかる費用が、0歳~2歳は住民税非課税世帯のみ、3歳~5歳は原則全世帯が無償化されているのでありがたいですね。私立幼稚園でも月2万5,700円が上限ですが、利用料を補助しています。ただこれに気をよくして習い事の費用が増えてしまわないようにしないと、その後家計を圧迫します。

小学校の6年間は私立に行かない限り、貯蓄ができる最後の期間です。ここでしっかり今後の教育費の準備や住宅ローンの繰り上げ返済をしておきたいものです。公立の場合、習い事等の費用を入れても6年間で200万円ほどしかかかりません(私立は約1千万円)。中学校と高校では、実は中学校の方が教育費は高くなります。3年間で公立が約150万円、私立が約420万円ですが、高校は3年間で公立が約140万円、私立が約290万円です。

大学は最も教育費がかかる最後の教育機関です。国公立でも4年間で約250万円、私立は400万~500万円かかります。私立の医歯系では約2,400万円もかかりますが、もともとこの金額を出せる人はお金があるので問題にはならないのかもしれませんね。下宿は地域にもよりますが、4年間で約440万円なので、大学だけで1千万円という人もいます。大学入学時に100万~200万円が準備できる子ども保険に、出産時から加入しておくなど、少しでも早い時期から地道に準備をしておく必要がありますね。それが間に合わない場合は、奨学金等があります。最もよく利用されている日本学生支援機構の奨学金には、返還不要の給付型と返還を要する貸与型があります。貸与型には、無利息で返還する「第一種奨学金」と利息付で返還する「第二種奨学金」に分かれています。ただし、利用金額は第二種の場合月12万円が上限に設定されていますが、ずっと12万円も借りていると、4年間で576万円もの借金となってしまうので、安易に借りず、返済のことを考えて借りる必要がありますね。

老後の費用は自助努力?

住宅は人生で最も高価な買い物ですが、持ち家の人もいるので、ここでは誰もが通る老後の費用についてみておきましょう。老後の費用は、年金がもらえる65歳から90歳まで、夫婦でゆとりある生活(36.1万円)を送るには、約4千万円の貯蓄が必要となります。最低限の生活費(22.1万円)で計算した場合は、概ね年金だけで生活できます。65歳以上の世帯の平均貯蓄額は約2,300万円なので、最低限の生活の場合や、一人暮らしなら足りますが、ゆとりある生活で夫婦の場合は2千万円足りないことになります。今後、高齢化が進み、医療費や介護費等もさらに増えてきます。平均寿命と健康寿命との差は男性で約8.7年、女性で約12年です。今後は、子どもがいる世帯は教育費がかからなくなったら、すぐに老後の準備を始め、いかに健康で過ごすかが、豊かな老後を過ごすための鍵と言えますね。

 

※ 上記の「老後の費用」は、公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)、年金額は2022年度の金額を参考にしています。

(参考)
・夫婦2人でゆとりある老後生活を送るための費用:36.1万円×12カ月×25年=1億830万円
・夫婦2人で最低限の老後生活を送るための費用:22.1万円×12カ月×25年=6,630万円
・夫婦2人が受給する年金総額:2022年度の年金月額219,593円×12カ月×25年=6,587万円(千円未満切捨て)
「25年」は、本文中の65歳~90歳までの年数
年金月額219,593円は、夫の厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金を合わせた標準的な年金額として厚生労働省が例示している額(平均的な収入(平均標準報酬43.9 万円)で 40 年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の満額の老齢基礎年金)の給付水準)

なお、その他の金額は次の各資料のデータを参考にしています。
・文部科学省「子供の学習費調査」(平成30年度)
・文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」
・文部科学省「私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」(令和3年度)
・独立行政法人日本学生支援機構「学生生活調査結果」(平成30年度)
・総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(2021年)
・厚生労働省「第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料」(2021年12月20日)

プロフィール

大藪 千穂(掲載用写真)

大藪 千穂

1962年京都市生まれ。京都ノートルダム女子大学文学部を卒業後、大阪市立大学生活科学大学院修士課程を経て博士課程単位取得修了(学術博士)。1994年より岐阜大学教育学部助教授(家政教育講座)を経て現在、岐阜大学教育学部教授(兵庫教育大学大学院 連合学校教育学研究科教授を兼任)。2021年より副学長(多様性・人権・図書館長)。日本消費者教育学会副会長。文部科学省消費者教育アドバイザー、金融広報アドバイザー(日本銀行)、京都銀行社外取締役、消費者ネットワーク岐阜代表。
専門は、家庭経済学(家計分析、消費者教育)、環境とライフスタイル論(アーミッシュ研究)。
主な著書に、「岐阜人の不思議」(岐阜新聞社)、「生活経済学」(放送大学)、「はじめての金融リテラシー」(昭和堂)、「お金と暮らしの生活術」(昭和堂)、「ちほ先生の家計簿診察室」(名古屋リビング新聞社)、「アーミッシュの謎」「アーミッシュの昨日・今日・明日」(論創社、訳書)など。