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ESSAY エッセイ
生活設計

高齢期の介護とそのマネジメントへ向けての情報共有へ

大東文化大学(経済学部)非常勤講師 藤田 由紀子

高齢期の生活を現実的な生活課題として強く意識するようになるのは50代になってからではないだろうか。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、50代では「最も重要なライフイベント」として「老後生活の充実」をあげている割合がおよそ50%と最も高くなっている。この割合は40代の約2倍である(注1)。50代は、住居や、子供がいる場合は子供の教育など生活課題の目処がつく時期であり、仕事の引退期を意識する年代でもある。高齢期の生活は、何をするのかという自由度が高い。つまり時間の使い方や人間関係を自分でマネジメントしていくライフステージである。その意味でも、それを目前にする世代では、新たな生活スタイルを築く期待も不安も高まる。


期待と不安のうち、不安の方に焦点をあててみる。前述の調査では「生活上の不安」についても聞いているが、50代では老後生活が経済的に苦しくなることを不安としてあげている割合が高い。しかし60代では、経済的不安より自分の介護が必要になることや、病気がちになることへの不安をあげている割合の方が高くなる(注2)。生活上のリスクとして意識する事柄は、生活環境や健康状態によって次第に変化していくと考えられる。


また、50代から60代にかけては、親の介護を経験する割合が高くなる世代でもある。自身の親や周囲で耳にする親の介護経験は、自身や配偶者の高齢期の健康や介護リスクを意識し、考えるきっかけにもなるのではなかろうか。介護は高齢期の避けられないリスクのひとつである。何かしらの支援・介護が必要になった場合には、それまでの生活スタイルや生活リズム、あるいは居住場所などの生活基盤が変わる可能性を意識せざるをえない。その意味で、介護リスクは生活基盤に影響を与えるリスクのひとつでもある。


では、いつ頃からそのリスクが高くなるのだろうか。厚生労働省「介護保険事業状況報告」によると、令和元年の要支援・要介護の認定者総数は669万人。年齢別にみると、65歳以上75歳未満では、その年齢の人口に占める要支援・要介護認定者の割合は4%程度である。しかし、80代では36%、85歳以降ではおよそ6割となる(注3)。もちろん、介護の状況は個々に異なるのだが、平均値としてみると、60代では親の介護リスク、そして80代以降は自身や配偶者の介護リスクを意識することになると思われる。ただ、昨今の一層の少子化や非婚化の進展は、今後の単身高齢者の介護の増加を予想させる。介護を担う子供が高齢である可能性が高いことも含めて、子供や配偶者等の家族による介護を前提としない介護がさらに増えると思われる。その場合、自身の介護は、判断能力が低下した場合にどうするのかということも含めて、自分で一定程度マネジメントを行う必要があるということなのではなかろうか。


マネジメントのためには、介護保険のしくみはもとより、介護の実態を知っておくことも大切である。そこで、介護の期間、場所、費用を生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」からみてみた。まず、介護の期間だが、過去3年以内に介護を経験した人の平均介護期間は(現在進行形のケースも含む)4.7年となっている。介護期間が4年~10年未満と回答した割合は28.3%、10年以上の割合も14.5%存在する。介護場所は、在宅が6割、施設が4割程度であるが、昨今は施設介護の利用割合がやや増えている(注4)。当初は在宅で介護を受けていたが、施設へ移行した、というケースもあると思われる。費用についてみると、住宅改造や介護ベッドの購入など一時的にまとまった支出を要した金額の平均は69万円。一方、月々の介護費用の平均は、在宅介護では4.6万円、施設介護では11.8万円となっている。施設介護では在宅介護に比べてばらつきが大きく、月々15万円以上と回答した割合も30.1%となっている。施設には、民間の有料老人ホームやケア付き住宅が含まれていることも、金額のばらつきが大きい理由と思われる。


支援や介護が必要になった場合にも自分らしく生活するためには、どのように介護サービスを利用し、どこで介護を受けるのか。経済的な事柄も含めてマネジメントの範囲は広い。その一方で、多くの人が介護を経験する時代になっていることで、様々な情報交換や相談もしやすくなっているように思う。もはや介護は、超長寿社会においては、社会で共有する経験、情報のひとつとなっているのではなかろうか。

1 生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)。最も重要なライフイベントとして「老後生活の充実」をあげた割合は男性:40代19.9%、50代49.4%。女性:40代24.1%、50代56.6%。

2 生命保険文化センター、前掲調査。「最も不安な生活上の不安項目」として「老後の生活が経済的に苦しくなること」をあげた割合は男性:50代18.5%、60代11.4%。女性50代15.8%、60代12.0%。「自分の介護が必要になること」男性60代15.8%、女性60代17.8%。「年をとって体の自由がきかなくなり、病気がちになること」男性60代13.3%、女性60代22.4%。

3 厚生労働省「介護保険事業状況報告」(令和元年度) から、年齢階級別の要支援・要介護者数を、総務省統計局「人口推計」(2019年10月1日現在)の年齢階級の人口で割った。

 表_要支援・要介護認定者数と人口_20211221

 要支援・要介護認定者数:厚生労働省「介護保険事業状況報告」(令和元年度)
 人口:総務省統計局「人口推計」(2019年10月1日現在)

4 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年度)

プロフィール

藤田 由紀子

藤田 由紀子(ふじた ゆきこ)

奈良女子大学修士課程修了。元生命保険文化センター研究室主任研究員。
主に家計分析や、生活設計論等を担当。現在は、大東文化大学経済学部非常勤講師。
近著は共著で吉野直行監修『生活者の金融リテラシー: ライフプランとマネーマネジメント』朝倉書店、2019。