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ESSAY エッセイ
消費生活相談

消費者としての「気づき」と「行動」が未来を変える ―エシカル消費を広げよう―

公益財団法人 消費者教育支援センター 柿野 成美

買い物は投票

「誰かの犠牲によってつくられた商品、地球環境に悪影響を与える商品を買いたい人はいますか?」

全国各地で行うエシカル消費の講演会で、私はよくこの質問をしています。5年以上経ちますが、誰一人、買いたいと答える人はいません。もし、日常的に購入している商品に、「児童労働によって作られています」とか「この商品は地球環境に悪影響を与えます」といった情報が掲載されているとしたら、そのような商品を選ぶ消費者はいないでしょう。

しかし、商品には一切、そのような情報は掲載されません。企業はネガティブ情報より、ポジティブ情報を積極的に出そうとします。ポジティブ情報として、「原材料は持続可能な調達をしています」「森の豊かさを守っています」といった情報や認証マーク等により消費者に情報開示されている商品が増えれば、公正で持続可能な社会を創りたいと願う消費者の選択の幅も広がっていきます。その時、提供された情報が信頼できるかどうか、クリティカルな視点を持つことは不可欠です。

私たちの買い物はまさに「投票」であり、適切な情報のもとで日々の選択を行うことが、社会を変える力になっていくのです。 

「エシカル消費」に向けた市場環境をつくるためには

近年、人や社会、地域、環境に配慮した消費行動である「エシカル消費」が注目されています。SDGs達成に向けた消費者の責任ある行動として、買い物に限らず身近なところから取り組むことができます。

しかし、上記の例のように、私たちはどの商品を選んだら「エシカル」であり、公正で持続可能な社会に繋がっているのか、まだ十分に市場が醸成されていないように感じています。これを解決する一つの方法は、消費者が企業に声を届けることです。お客様の声によって気づきが生まれ、新しい取り組みにつながることが期待されます。

私が関心を持っている今一つの方法は、企業の経営者や従業員の方々が消費者志向を高める学びの機会をもち、一人の消費者としての気づきを企業経営に活かす試みです。

消費者としての感覚を普段の仕事に活かそう

私たちは2020年度に静岡県浜松市をフィールドとして、「SDGs調査隊―つくり手とつかい手とつなぐ消費者教育プロジェクト―」(消費者庁委託事業)を実施しました。現代の消費構造においては、つくり手(事業者)とつかい手(消費者)は分断されがちであり、お互いにその顔が見えづらくなっているため、つかい手がつくり手のもとを訪ね、つくり手の思いやこだわりを知ることで、エシカル消費について考えるという体験プログラムです※1。 

上記のプログラム実施後、つくり手である事業者の従業員の方々に、プログラムの様子を動画で見てもらい、つかい手の感じたことを共有する研修を実施しました。従業員からは、「より安全安心な野菜を栽培している農園情報を知りたい」(農業)、「地元の製品を買っていきたい」(畜産業)といった従業員自身のつかい手としての気づきや、「食品ロスをなくすために加工するなどして貢献したい」(農業)、「つくり手の気持ちや考え方を多くの人に知ってもらえるよう、SNSなどを使って発信してみたい」(畜産業)のように、そこで得た気づきを仕事にも取り入れていこうとする意欲的な発言が見られました。

このようにつくり手も、自分自身の消費者としての気づきを得て、そして、普段の仕事においても消費者視点からの気づきが活かされることで、よりエシカルな市場環境に近づくのではないかと思います。消費者としての学びの場は職場での研修だけではありません。いつもと違った体験から、気づきを得ることもあるでしょう。是非、みなさんの消費者としての気づきを仕事の場で活かすことで、エシカル消費を推進していきましょう。

※2

 

※1 当日の様子は動画で視聴できます。
   つくり手とつかい手をつなぐ消費者教育プログラム SDGs調査隊(消費者庁委託事業) https://sdgs-chousatai.net/index.html

※2 この画像は消費者教育の場づくりに関する取組において、自由にダウンロードして利用していただけます。上記URLをご参照ください。

プロフィール

柿野 成美(かきの しげみ)

公益財団法人消費者教育支援センター専務理事・首席主任研究員。博士(政策学)。消費者の行動で未来を変える消費者市民教育を推進するため、全国で講演を行う。文部科学省消費者教育推進委員会委員、東京都消費生活対策審議会委員。主な著書に『消費者教育の未来―分断を乗り越える実践コミュニティの可能性』法政大学出版局などがある。