公益財団法人 生命保険文化センター

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保険法の概要

1.告知制度

保険法では、保険契約者や被保険者の告知義務の内容を、保険会社が告知を求めた事項に応答する義務として定めています。また、告知義務違反があった場合には、保険会社は保険契約を解除することができますが、一定の場合には、解除が認められない旨も定めています。

(1)告知義務

保険契約に加入する際には、保険契約者または被保険者は、保険会社に対して告知をする必要があります。この告知は、支払事由(被保険者の死亡等)の発生の可能性に関する重要な事項のうち保険会社が告知を求めた事項について、保険契約者等が回答する形で行うことになっています。

(参照条文:37条、66条)

(2)告知義務違反による解除

保険契約者等が故意または重大な過失により告知義務に違反した場合には、保険会社は、保険契約を解除することができます。

但し、故意または重大な過失による告知義務違反があった場合であっても、保険契約の締結時に保険会社がその事実を知っていたかまたは過失によって知らなかったときは、保険会社は保険契約を解除することはできません。また、募集人等の保険媒介者が保険契約者等の告知を妨害したり、保険契約者等に対して告知義務違反を勧めたりしたときにも、保険会社は解除をすることはできませんが、そのような行為がなかったとしても告知義務違反があったであろうと認められる場合には、解除をすることができます。さらに、保険会社が解除の原因があることを知ってから1ヶ月間解除をしなかったときまたは保険契約締結の時から5年を経過した時は、解除をすることはできません。

(参照条文:55条、84条)

(3)解除の効力

告知義務違反によって保険契約が解除された場合には、その効力は将来に向かってのみ生じますが、それまでに発生した支払事由について、保険会社は保険金を支払う必要はありません。但し、告知されなかった事実と支払事由の発生との間に因果関係がない場合には、保険会社は保険金を支払う必要があります。

(参照条文:59条1項・2項1号、88条1項・2項1号)

(4)片面的強行規定

保険会社が保険契約を解除できる期間についての規定を除いて、上記(1)から(3)までの規定は片面的強行規定であり、保険法の規定よりも保険契約者等に不利な内容の約款の定めは無効となります。

(参照条文:41条、65条1号・2号、70条、94条1号・2号)

2.被保険者の同意

保険法では、保険契約者と被保険者が異なる死亡保険契約は、被保険者の同意が必要とされています。また、保険契約者と被保険者が異なる傷害疾病定額保険契約も、一定の場合を除き、被保険者の同意が必要です。

保険契約者と被保険者が異なる死亡保険契約は、被保険者の同意がない限り効力を生じません。

また、保険契約者と被保険者が異なる傷害疾病定額保険契約は、原則として、被保険者の同意がない限り効力を生じませんが、保険金受取人が被保険者(被保険者の死亡に関して保険金が支払われる場合には、被保険者またはその相続人)である場合は、被保険者の同意は不要です。但し、被保険者が傷害または疾病により死亡した場合にのみ保険金が支払われる傷害疾病定額保険契約については、保険金受取人が被保険者またはその相続人であっても、原則どおり被保険者の同意が必要となります。

保険契約者と被保険者が異なる生命保険契約

生存保険契約[保険法には被保険者同意に関する規定なし]

被保険者の同意がなくても契約の効力は生ずる

死亡保険契約[38条]

被保険者の同意がないと契約の効力は生じない

保険契約者と被保険者が異なる傷害疾病定額保険契約

原則[67条1項本文]

例外

保険金受取人が被保険者(被保険者の死亡に関して保険金が支払われる場合には、被保険者またはその相続人)[67条1項ただし書]

被保険者の同意がなくても契約の効力は生ずる

例外の例外

支払事由が傷害疾病による死亡のみ[67条2項]

被保険者の同意がないと契約の効力は生じない

(参照条文:38条、67条)

3.保険契約締結時の書面交付

保険法では、保険契約を締結した際の、保険会社の書面交付義務について定めています。

保険会社は、保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次の事項を記載した書面を交付する必要があります。

  1. 保険会社の名称
  2. 保険契約者の氏名または名称
  3. 被保険者の氏名その他の被保険者を特定するために必要な事項
  4. 保険金受取人の氏名または名称その他の保険金受取人を特定するために必要な事項
  5. 支払事由
  6. 保険期間
  7. 保険金の額およびその方法
  8. 保険料およびその支払の方法
  9. 危険増加に関する通知をすべき旨が保険契約において定められているときは、その旨
  10. 保険契約を締結した年月日
  11. 書面を作成した年月日

(参照条文:40条、69条)

4.保険金受取人

保険法では、(1)保険契約者は保険金受取人を変更することができること、(2)保険金受取人の変更の意思表示の相手方は保険会社であること、(3)遺言による保険金受取人の変更も可能であること等を規定しています。

(1)保険金受取人の変更

保険契約者は、支払事由が発生するまでは、保険会社に対する意思表示をすることによって、保険金受取人を変更することができます。

保険金受取人を変更する意思表示は、その通知が保険会社に到達したときは、その通知を発した時にさかのぼってその効力を生じます。ただし、意思表示が保険会社に到達する前に、保険会社が変更前の保険金受取人に保険金を支払った場合には、その保険金の支払いは有効です。

(参照条文:43条、72条)

(2)遺言による保険金受取人の変更

保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができます。

遺言による保険金受取人の変更は、保険契約者が死亡した後に、保険契約者の相続人が保険会社に通知しなければ、保険金受取人の変更があったことを保険会社に対して主張することはできません。

(参照条文:44条、73条)

(3)保険金受取人の変更についての被保険者の同意

死亡保険契約について保険金受取人を変更する場合には、被保険者の同意が必要となります。

また、傷害疾病定額保険契約について保険金受取人を変更する場合には、原則として、被保険者の同意が必要ですが、変更後の保険金受取人が被保険者(被保険者の死亡に関して保険金が支払われる場合には、被保険者またはその相続人)である場合には、被保険者の同意は必要ありません。但し、被保険者が傷害または疾病により死亡した場合にのみ保険金が支払われる傷害疾病定額保険契約については、変更後の保険金受取人が被保険者またはその相続人であっても、原則どおり被保険者の同意が必要となります。

(参照条文:45条、74条)

(4)保険金受取人の死亡

保険金受取人が支払事由の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となります。

(参照条文:46条、75条)

5.支払事由発生の通知と保険金の支払時期

保険法では、約款で定めた支払期限が、支払にあたって必要な事項の確認のための相当の期間を超えている場合には、その相当の期間が経過した時から保険会社は遅滞の責任を負う旨を定めています。

(1)支払事由発生の通知

支払事由が発生したときは、保険契約者等は、遅滞なく、保険会社にその旨を通知する必要があります。

(参照条文:50条、79条)

(2)保険金の支払時期

保険金を支払う期限を約款で定めた場合であっても、その期限が、保険金を支払うために確認をすることが保険契約上必要とされる事項の確認をするために一般的に必要と考えられる相当の期間よりも長い場合には、その相当の期間を経過する日が保険金を支払うべき期限となります(したがって、このような場合については、保険金を支払うべき期限は、約款で定めた期限よりも短いものとなります)。

保険会社が保険金を支払うために必要な調査をするにあたって、保険契約者、被保険者または保険金受取人が正当な理由なしに、その調査を妨げたり、調査に応じなかったりした場合には、これらの保険契約者等の側の事情によって保険金の支払いが遅れた期間については、保険会社は遅滞の責任を負いません。

(参照条文:52条1項・3項、81条1項・3項)

(3)片面的強行規定

上記(2)の規定は片面的強行規定であり、保険法の規定よりも保険金受取人に不利な内容の約款の定めは無効となります。

(参照条文:53条、82条)

6.保険会社の免責と保険料積立金の払戻し

保険法では、支払事由が発生しても保険会社が保険金を支払う必要がない場合があり、またこの場合には、原則として保険会社は保険料積立金の払戻しをする必要がある旨を定めています。

(1)保険会社の免責

死亡保険契約において、被保険者が自殺したとき、保険契約者もしくは保険金受取人が被保険者を故意に死亡させたときまたは戦争その他の変乱によって被保険者が死亡したときには、保険会社は保険金を支払う必要はありません。

また、傷害疾病定額保険において、保険契約者、被保険者もしくは保険金受取人が故意もしくは重大な過失により支払事由を発生させたときまたは戦争その他の変乱によって支払事由が発生したときは、保険会社は保険金を支払う必要はありません。

(参照条文:51条、80条)

(2)保険料積立金の払戻し

上記の事由によって保険契約が終了したときには、保険会社は、保険契約者に保険料積立金を払い戻す必要があります。但し、保険契約者が死亡保険契約の被保険者を故意に死亡させたときまたは故意もしくは重大な過失により傷害疾病定額保険の支払事由を発生させたときは、保険会社は、保険料積立金を払い戻す必要はありません。

(参照条文:63条、92条)

(3)片面的強行規定

上記(2)の規定は片面的強行規定であり、保険法の規定よりも保険契約者に不利な内容の約款の定めは無効となります。

(参照条文:65条、94条)

7.保険契約者による解除

保険法では、保険契約者による保険契約の解除(一般に、「解約」と呼ばれています)について定めています。

(1)保険契約者による解除

保険契約者は、いつでも保険契約を解除することができます。

(参照条文:54条、83条)

(2)解除の効力

保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生じます。

(参照条文:59条1項、88条1項)

(3)片面的強行規定

上記(2)の規定は片面的強行規定であり、保険法の規定よりも保険契約者、被保険者または保険金受取人に不利な内容の約款の規定は無効となります。

(参照条文:65条2号、94条2号)

8.重大事由による解除

保険法では、保険契約者または保険金受取人が保険金目的で被保険者を殺害しようとした場合等の一定の場合には、保険会社が保険契約の解除をできる旨を定めています。

(1)重大事由による解除

保険契約に関し、次のいずれかの事由が生じた場合には、保険会社は、保険契約を解除することができます。

  1. 死亡保険契約において、保険契約者または保険金受取人が、保険会社に保険金を支払わせることを目的として、故意に被保険者を死亡させ、または死亡させようとしたこと
  2. 傷害疾病定額保険契約において、保険契約者、被保険者または保険金受取人が、保険会社に保険金を支払わせることを目的として、その保険契約の支払事由を発生させ、または発生させようとしたこと
  3. 保険金受取人が、その保険契約に基づく保険金の請求に当たって詐欺を行い、または行おうとしたこと
  4. 上記(1)から(3)のほか、保険会社の保険契約者、被保険者または保険金受取人に対する信頼を損ない、その保険契約の存続を困難とする重大な事由

(参照条文:57条、86条)

(2)解除の効力

重大事由による解除がされた場合には、その効力は将来に向かってのみ生じますが、上記(1)~(4)の事由が生じた時から解除がされた時までに発生した支払事由については、保険会社は保険金を支払う必要はありません。

(参照条文:59条1項・2項3号、88条1項・2項3号)

(3)片面的強行規定

上記(1)および(2)の規定は片面的強行規定であり、保険法の規定よりも保険契約者、被保険者または保険金受取人に不利な内容の約款の定めは無効となります。

(参照条文:65条2号、94条2号)

9.被保険者による解除請求

保険法では、被保険者は、一定の場合に、保険契約者に対し保険契約を解除するよう請求することができる旨を定めています。

(1)被保険者による解除請求

保険契約者と被保険者が異なる死亡保険契約または傷害疾病定額保険契約に関し、次のいずれかの場合には、その被保険者は、保険契約者に対し、その保険契約を解除することを請求することができます。

  1. 死亡保険契約において、保険契約者または保険金受取人が、保険会社に保険金を支払わせることを目的として、故意に被保険者を死亡させ、または死亡させようとした場合
  2. 傷害疾病定額保険契約において、保険契約者、被保険者または保険金受取人が、保険会社に保険金を支払わせることを目的として、その保険契約の支払事由を発生させ、または発生させようとした場合
  3. 保険金受取人が、その保険契約に基づく保険金の請求に当たって詐欺を行い、または行おうとした場合
  4. 上記(1)から(3)のほか、被保険者の保険契約者または保険金受取人に対する信頼を損ない、その保険契約の存続を困難とする重大な事由がある場合
  5. 保険契約者と被保険者との間の親族関係の終了等その他の事情により、被保険者が保険契約の締結時に同意をするに当たって基礎とした事情が著しく変更した場合
  6. 傷害疾病定額保険契約のうち保険契約の締結時における被保険者の同意が不要なものについて、実際に保険契約の締結時に被保険者の同意がなかった場合

(参照条文:58条、87条)

(2)解除の効力

被保険者による解除請求を受けて保険契約者がした解除は、将来に向かってのみその効力を生じます。

(参照条文:59条1項、88条1項)

(3)片面的強行規定

上記(2)の規定は片面的強行規定であり、保険法の規定よりも保険契約者、被保険者または保険金受取人に不利な内容の約款の定めは無効となります。

(参照条文:65条2号、94条2号)

10.契約当事者以外の者による解除の効力等

保険法では、保険契約の差押債権者や破産管財人等が保険契約を解除しようとした場合に、一定の場合には、解除の効力が1ヶ月後に生じることとなり、一定の要件のもと、所定の保険金受取人が保険契約を継続できることを定めています(介入権)。

(1)契約当事者以外の者による解除の効力と介入権

保険契約の差押債権者や破産管財人等の保険契約者以外の関係者(以下では、「差押債権者等」といいます)が、死亡保険契約または傷害疾病定額保険契約のうち保険料積立金のある保険契約を解除する場合、その通知がされてから1ヵ月を経過した日にその効力が生じます。

この場合に、保険金受取人のうち解除の通知がされた時点で保険契約者もしくは被保険者の親族または被保険者本人であるもの(保険契約者であるものを除きます。)は、解除の効力が生じるまでの間(解除の通知がされてから1ヵ月以内)に、次の要件を満たしたときには、保険契約を継続させることができます。

  1. 介入権の行使について保険契約者の同意を得ること
  2. 解約返戻金の相当額を差押債権者等に支払うこと
  3. 保険会社にその旨を通知すること

(2)介入権行使前における支払事由の発生

介入権が行使されるまでの間に支払事由が発生したとき(ただし、傷害疾病定額保険については、その支払事由によって保険金が支払われることにより保険契約が終了するときに限定されています)は、保険会社は、保険金のうち解約返戻金相当額を差押債権者等に支払います。この場合には、保険金受取人には、保険金額から差押債権者等に支払った金額を差し引いた残額が支払われます。

(参照条文:60条、61条、62条、89条、90条、91条)

11.保険料の返還の制限

保険法では、保険契約が無効となったり取り消されたりした場合でも、保険会社が保険料を返還しなくてもよい場合について限定的に定めています。

(1)保険料の返還の制限

次のいずれかの場合には、保険会社は、保険料を返還する必要がありません。

  1. 保険契約者、被保険者または保険金受取人による詐欺や強迫を理由として、保険契約が取り消された場合
  2. 保険契約者、被保険者または保険金受取人が、死亡保険契約または傷害疾病定額保険契約の申込みの時に、既に支払事由が発生していることを知っていたため、保険契約を締結する前に発生した支払事由に関し保険金を支払う旨の約款の定めが無効となった場合(保険会社が支払事由の発生を知りつつ申込みを承諾した場合を除きます。)

(参照条文:64条、93条)

(2)片面的強行規定

上記(1)の規定は片面的強行規定であり、保険法の規定よりも保険契約者に不利な内容の約款の定めは無効となります。

(参照条文:65条3号、94条3号)

12.消滅時効

保険金等を請求する権利を行使しない状態が一定期間継続すると、その権利は消滅します。

保険金受取人が保険金を請求する権利または保険契約者が保険料の返還を請求する権利もしくは保険料積立金の払戻しを請求する権利は、時効により3年で消滅します。

保険会社が保険料を請求する権利は、時効により1年で消滅します。

(参照条文:95条)

13.経過措置の原則、旧保険契約に関する経過措置

保険法の規定は、原則として、施行の日以後に締結された保険契約に適用されます。ただし、施行の日よりも前に締結された保険契約にも適用される規定があります。例えば、次の規定がこれに当たります。

  1. 重大事由による解除
  2. 保険金の支払時期
  3. 契約当事者以外の者による解除の効力等

(参照条文:附則2条、4条、5条、6条)