コロナ禍の中、私達の生活に身近な年金制度の改正法が、この春2020(令和2)年5月の通常国会で成立しました。この改正は、「多様な形で、より長く働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図る」ことが目的とされています。

そこで、その主な改正内容を見てみますと
.僉璽箸覇く人などの厚生年金保険の加入範囲の拡大 国民年金・厚生年金保険の年金受給開始時期の選択肢の拡大 Fきながら年金を受給する「在職老齢年金の基準緩和」 といったもので、2022(令和4)年4月以降から実施されるものがほとんどとなっています。

現在、公的年金制度には「国民年金」と「厚生年金保険」の2つの制度がありますが、国民年金は日本に居住する20歳から60歳になるまでの全ての人(国籍は問わない)が加入しなければならない制度となっており、国民年金の他にサラリーマンや公務員、学校の先生などが厚生年金保険に加入しなければならないこととなっています*1。

*1a.「法人」と「常時5人以上を使用する個人経営の事業所(農林水産業、飲食業などのサービス業等は除く)」は 強制適用となっています。
b.上記の強制適用の事業所で働くパート、アルバイトといった短時間労働者の方は、加入条件を満たす場合を除いて、厚生年金保険の強制加入対象となっていません。
加入条件とは、所定労働時間が正社員の3/4以上ある場合や、所定労働時間が正社員の3/4未満であっても以下の5つの要件をすべて満たす場合などです。

1.週の労働時間が20時間以上 2.雇用期間が1年以上見込まれる 3.賃金の月額が8.8万円以上 4.昼間学生ではない 5.厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の法人・個人の適用事業所、および国または地方公共団体に属するすべての適用事業所(特定適用事業所)に勤めている。なお、501人未満であっても、労使合意に基づき申出をした場合は、任意特定適用事業所となる。

今回の改正内容の 屮僉璽箸覇く人などの厚生年金保険の加入範囲の拡大」は、現在、厚生年金保険の強制加入の対象となっていないパート、アルバイトといった短時間労働で働く人を厚生年金保険の強制加入の対象にするというものです。現在、短時間労働で働く人の加入が強制となっている事業所は「従業員501人以上の事業所*1 b」ですが、2022(令和4)年10月から「従業員101人以上の事業所」に、さらに2024(令和6)年10月から「従業員51人以上の事業所」に適用拡大し、短時間労働で働く人の厚生年金保険への加入を拡大していきます。また、2022(令和4)年10月からは、弁護士や税理士などの個人事務所で働く人も強制加入となります。なお、2022(令和4)年10月の改正時には、上記*1 bの「雇用期間が1年以上見込まれる」という条件が撤廃される予定です。

次に、改正内容の◆峭駝映金・厚生年金保険の年金受給開始時期の選択肢の拡大」については、繰上げ受給・繰下げ受給それぞれ以下のとおり変更されます。

■「繰上げ受給*2」を選択した場合
現在は、1ヵ月繰上げるごとに65歳時点の年金額から0.5%(最大30%)が減額されますが、2022(令和4)年4月1日からは、0.4%(最大24%)の減額に引き下げられます。

*2 「繰上げ受給」とは、65歳からの年金を、60歳から65歳になるまでの間で、本人の希望するときから受給することです。

■「繰下げ受給*3」を選択した場合
現在は、1ヵ月繰下げるごとに65歳時点の年金額に対し0.7%(最大42%)が加算され、繰下げができる上限の年齢は70歳になるまでとされています。2022(令和4)年4月1日からは、繰下げができる上限の年齢を5年延ばして75歳になるまでとし、65歳時点の年金額に対し、最大84%が加算されます。

*3「繰下げ受給」とは、 65歳からの年金を、66歳から70歳になるまでの間で、本人の希望するときから受給することです。

改正内容の「在職老齢年金の基準緩和」は、60歳から65歳になるまでの間に厚生年金保険に加入(=在職中)しながら、老齢厚生年金を受給する人の年金額調整の基準額が変更されます。この改正は、年金の支給停止が開始される「基準額(給与・賞与と年金の合計月額)*4」を現行の28万円*5から47万円に引き上げ、在職老齢年金の受給額を増やすというものです。

*4 給与・賞与の計算方法:給与(標準報酬月額)+賞与(過去1年間の標準賞与の合計額)÷12ヶ月
年金の計算方法   :受給する老齢厚生年金÷12ヶ月


*5 現在は、基準額が28万円を超えた場合、その超えた金額に応じて年金の全部または一部が歴月単位で支給停止されます。

プロフィール

田村 三雄(たむら みつお)

社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー。田村社労士・CFP事務所代表。
官公庁・労組等での年金制度を中心とした講演や企業での労務相談、ライフプランセミナーの講師、執筆活動などを行っている。
趣味は映画観賞と散歩。

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