知っておきたい 「契約トラブルを避けるための知恵」 ー消費生活相談員の経験からの5か条ー
長年、消費生活相談員として働いてきた経験から契約トラブルを避けるための知恵をお伝えします。
1.契約書を必ず読みましょう。
まずは解約に関する条項を探して熟読してください。次に注目していただきたいのは、目立たぬよう隅に小さく記載された項目です。裏面の確認もお忘れなく。ネット通販の場合は画面表示を保存しておきましょう。
2.契約書の内容で分からないことは質問しましょう。
そもそも質問が出ないよう分かりやすい契約書を作るのが事業者の務めですから、遠慮は不要です。
3.担当者の説明と契約書の内容が違う場合は、契約を見合わせましょう。
一人暮らしの高齢の女性から受けた相談です。
「一昨日、自宅に来訪した事業者から『お宅の屋根瓦がずれています。放置すると雨漏りしますよ。』と、屋根の改修工事を勧められました。突然の話にためらいましたが、『当社の屋根工事は永久保証、家がある限りいつまででも保証します』と言われて魅力を感じ、150万円の契約書にサインをしました。工事は明後日からですが、今日、息子にこの話をしたら『だまされているのかもしれないから消費生活センターに相談するように』と言われました」
この契約は訪問販売なのでクーリング・オフができます。契約書をファクスしてもらい確認しました。150万円の屋根工事であることは書かれていますが、永久保証については全く記載がありません。隅に小さな活字で「本書面に記載されていないことはすべて無効です」とあるのに気付きました。相談者に永久保証は契約内容に含まれないことを伝えたところ、しばらく絶句していました。 目の前の担当者がどんなに誠実そうに見えても、やはり力を発揮するのは契約書なのです。
4.「確認書」にはその場でサインせず、持ち帰りましょう
契約時に「確認書」や「同意書」といった書面を出され、勧誘方法が適切だったことや契約内容を理解したことを認めるサインを求められる場合があります。
若い女性からこんな相談を受けました。
「SNSで知り合った男性の勤務先である宝飾品の事務所に連れていかれ、高額なネックレスを買ってしまいました。彼から『君と僕のために』と繰り返し勧められ、嫌われたくない一心で契約しましたが、その後連絡が取れなくなりました。支払いができません。返品できないでしょうか」
これは異性に惹かれる心を利用したデート商法という手口です。クーリング・オフ期間は過ぎてしまっていたので、デート商法を問題にして解約交渉をしようとセンターから事業者に連絡しました。ところが、事業者は「当社はそのような問題商法は一切いたしておりません。お客様ご自身が認めておられます」と言って、1枚のファクスを送って来ました。そこには、「商品の説明を十分受けて理解しました」、「自分の意思でネックレスを購入しました」、などの文章にチェックが付き、下には相談者の署名がありました。相談者にそれを見せたところ、男性から「ここに名前だけ書いて。形式だから気にしないで良いよ」と言われてチェック済みの紙を渡され、全く読まずに名前を書いてすぐに返したということでした。
返品はできましたが、かなりのキャンセル料を支払わざるを得ませんでした。
確認書は消費者のためのようですが、事業者が消費者の主張を封じ込める手段にもなり得るのです。署名を求められたら、いったん持ち帰って良く読み、納得してからにしましょう。
5.契約を急がせる場合は要注意
「今日、契約してくれたら〇割引き」などと魅力的な条件を提示されたら、事業者の立場になってその理由を考えてみましょう。利益を削っても契約をさせたいのは、消費者に比較・検討する時間を与えたくない、あるいは経営状況が思わしくないのかもしれません。目先のお得感に惑わされず冷静に判断することをお勧めします。