公益財団法人 生命保険文化センター

メニュー
閉じる

公益財団法人 生命保険文化センター

X youtube
ESSAY エッセイ
消費生活相談

消費生活相談から みえること

公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 樋口 容子

公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(通称NACS)では、行政機関が休みの週末に、消費生活相談に助言を行う「ウィークエンド・テレホン(WET)」を開設しており、大阪では土曜日、東京では日曜日に相談を受け付けています。昨年度は、1518件もの相談に対応いたしました。行政の相談機関は、主に平日のデイタイムに開設されているため、相談者の属性は日中在宅率の高い高齢者の割合が多くなります。しかし、当相談室では、平日デイタイムに相談しにくい、中・若年層の勤労者の割合も高く、そうした方々の「駆け込み寺」としての役割の大きさを痛感しております。

昨年の相談事例からは、下記のような傾向がみられます。①アダルト情報サイトの「ワンクリック詐欺」や動画閲覧料の「架空請求」などの「放送・コンテンツ類」が突出して高いこと、②建築関連のリフォームや修理などの「土地・建物・設備類」も多いこと、③通信販売での健康食品や化粧品も増加していること。

①は、スマホやタブレット端末から容易にこうしたサイトを検索できることから、ワンクリックしただけで高額請求されたり、見てもいない動画の閲覧料が突然請求メールで送信されたりします。②は、訪問販売に多い手口で、無料で家屋を点検すると言われ安心していたら、次々と補修箇所を指摘され、高額で無駄なリフォームや修理をされる破目になります。③は、①と同じく、スマホなどで、痩身や美白を謳う健康食品や化粧品の廉価のお試し広告に惹かれ申し込むと、2回目以降は高額な定期購入の契約となっており、商品が送付され続け、簡単に解約できないということになります。

どの事例でも、相談者は慌てており、中にはパニックになって相談してくる人も少なくありません。①の、アダルトサイトなどは、年齢認証画面をクリック(タップ)しただけで、いきなり登録画面になり、登録料数万円を請求されることもあります。または、見てもいない動画の高額な閲覧料請求のメールがいきなり送信されると、以前に少しでもアダルトサイトなどを見た覚えのある人は、怯えてしまうことも多いようです。どれも契約自体成立していないので、無視すればいいのです。②の訪問販売での、無料点検後の不要な有償修理の強要は、いわゆる点検商法というもので、業者は言葉巧みに修理の必要ない箇所を、次々と修理が必要だと思いこませてしまうのです。ターゲットは主に高齢者で、契約自体は不要なものが多いと言えます。③の定期購入は、広告をよく見ると、定期購入の表示があり、消費者への契約時の慎重さが求められます。

以上のような事例から言えることは、消費者には、いつも批判的思考を持ってほしいということです。事業者は、利益を上げることに必死ですので、広告、表示、勧誘は、消費者への警告や甘言に満ち満ちています。「今すぐ払わないと訴訟する!」、「今だけ無料!」、「今すぐリフォームしないと危険!」、「必ず痩せる!」などなど。消費者は、このような広告や勧誘に出会うことがあれば、内容を鵜呑みにせず、一度は疑ってかかる姿勢が必要です。

NACSでは、このような相談に対応しながら、一人でも多くの相談者が安心して週末を過ごしていただけるよう、今後も鋭意務めてまいる所存です。

NACSウィークエンド・テレホン
大阪相談室:毎土曜日(10:00~12:00,13:00~16:00) TEL 06-4790-8110
東京相談室:毎日曜日(11:00~16:00) TEL 03-6450-6631

プロフィール

樋口 容子

樋口 容子(ひぐち ようこ)

消費生活アドバイザー、消費生活専門相談員、NACS西日本支部支部長、NACS相談室室長。平成15年より消費生活相談員として、行政の消費生活センターで勤務。関西学院大学非常勤講師。