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ESSAY エッセイ
年金

公的年金の受取りは 原則65歳から ー長生き時代、あなたは繰下げを検討する?ー

(公財)生命保険文化センター 編集子(R)

最近、「人生100年時代」とよく耳にします。

厚生労働省の「簡易生命表」(平成28年)によると、死亡数が一番多い年齢(死亡のピーク)は男性で87歳、女性で93歳です(男女各10万人の出生に対する年齢別の死亡者数)。男女とも平均寿命を約6年超えた年齢です。

自宅の周りを見渡しても、80~90歳代の人がかなり多い昨今です。87歳になる父の代役で今年に入って2回お通夜に参列しましたが、故人は99歳と95歳でした。やはり長生きは身近なことのように感じます。

老後が長くなると、その生活を支える収入源が一層気がかりです。

公的年金(老齢年金)は原則65歳開始で、繰上げ・繰下げ受給を選ぶと60~70歳までの間で受取りが始まります。繰り上げれば減額されますが、繰り下げれば増額された年金を一生涯受け取れます。一度受取りの手続きをすると、変更や取り消しができません。

年金額を増やせる繰下げ制度ですが、利用者はまだまだ少ないというのが現状です。受け取りを遅らせたのに意に反して短命だったら…と思うと繰り下げづらいということはあるかもしれません。

ひとくちメモ ―「60歳代前半に受け取れる特別支給の老齢厚生年金」について―

会社員の知人から、「60歳代前半に受け取れる老齢厚生年金」を繰り下げて年金額を増やせないか」と尋ねられました。答えは「ノー」で残念ながらできません。
厚生年金の加入期間が1年以上ある人は、生年月日によっては65歳前に厚生年金(報酬比例部分)を受け取れます。65歳前は特別に支給される年金のため、繰下げの対象外です。なお、60歳代前半の年金を受け取ったうえで、65歳以降の年金を繰り下げることは可能です。

⇒ 生年月日ごとの厚生年金の受取開始年齢はこちらから

繰下げによって年金額はいくら増える?

65歳ではなく、66歳以降70歳までの希望する時期に手続きをすることで増額された老齢年金を受け取るのが繰下げ制度です。65歳から「繰り下げた月数×0.7%」が増額され、66歳(12か月繰下げ)で8.4%、70歳(60カ月)で最大42%増額になります。

例えば、5年繰り下げて70歳から受け取ったときは、82歳になるまで生きれば繰り下げたほうが累計の年金額は多くなります。

≪例≫平成30年度の老齢基礎年金の満額(40年間納付した場合)779,300円の場合

82歳になるまで受け取った場合の比較
◇【繰下げない】65歳から82歳になるまでの年金累計額(17年分)
13,248,100円(779,300円×17年)
◇【5年繰下げ】70歳から82歳になるまでの年金累計額(12年分)
13,279,272円(779,300×1.42倍×12年)
⇒82歳になる時点で、繰り下げたほうが約3万円多く受け取れます。

90歳になるまで受け取った場合の比較
◇【繰下げない】65歳から90歳になるまでの年金累計額(25年分)
19,482,500円(779,300円×25年)
◇【5年繰下げ】70歳から90歳になるまでの年金累計額(20年分)
22,132,120円(779,300円×1.42倍×20年)
⇒90歳になる時点で、繰り下げたほうが約265万円多く受け取れます。
(注)毎年度見直される年金額の改定率は考慮していません。

繰下げは「老齢基礎年金だけ繰り下げる」あるいは「老齢厚生年金だけ繰り下げる」、「両方繰り下げるがそれぞれ別の時期にする」などを選ぶことができます。

繰り下げる場合の留意点は?

厚生年金に20年以上加入していると、老齢厚生年金に年額約39万円の「配偶者加給年金」が加算される場合があります。加給年金は厚生年金に加算されるものなので、繰り下げている期間は受け取れません。また、繰り下げた厚生年金のように増額されませんし、配偶者が原則65歳になる時点で加算が終わるのは、繰り下げない場合と同じです。

なお、遺族年金や障害年金を受け取る権利がある人は繰下げできない場合があります。

70歳以降の繰下げ受給も視野に!?

平成30年2月に閣議決定された高齢社会対策大綱では、「積極的に繰下げ制度の周知に取り組むこと」や「70歳を過ぎても繰下げ受給を選べるなど、柔軟で使いやすい制度になるよう検討すること」が記されています。

また、65歳を迎える前に年金加入記録などが印字された「年金請求書」が届きます。請求に関する案内文書は、繰下げの申出ができることをアピールした内容に見直されました。

老後の生活設計を考えるとき、年金の受取り開始時期の選択は大切なポイントの一つともいえます。いつまで現役で働くのか?預貯金や退職金は?企業年金、個人年金保険、不動産収入など公的年金以外の収入源は?など様々なことを考え合わせて選ぶことになります。

何歳まで生きるかは分かりませんが、長生き時代に家計が成り立つよう考えておきたいところです。

生命保険文化センターでは、公的年金制度と個人年金保険の仕組みをわかりやすく説明した「ねんきんガイド―今から考える老後保障―」を作成しています。Q&Aでは今回取り上げた繰下げのほか、繰上げについても説明しています。また、資料編では「老齢基礎年金の繰上げ・繰下げによる受取累計額の比較表」などを掲載しています。 2018年6月改訂版をぜひご活用ください。

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