社会が必要とする力−「基礎力」−-1
前回、田園調布雙葉中学高等学校の小林潤一郎教諭の公開授業をご紹介しましたが、「基礎力」という言葉を初めて目にした方も多いのではないかと思います。そこで、「基礎力」にはいったいどんな力があるのか、どのように身につけられるかについて、ワークス研究所主任研究員の辰巳哲子氏に解説していただきました。
ワークス研究所 辰巳哲子 主任研究員
辰巳哲子(たつみさとこ)
関西学院大学卒業後、92年株式会社リクルート入社。組織人事コンサルティング室を経た後、キャリア事業にて既卒未就業者を対象としたキャリアカウンセリングに携わる。2000年にワークス研究所にて小学生を対象としたキャリア教育を開始。現在は、発達段階別のキャリア教育の進め方について地方自治体や学校(小・中・高)と共同研究を進めている。
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「生きる力」と「基礎力」
2002年度からの新学習指導要領では、子どもたちに基礎的・基本的な内容を確実に身につけさせ、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]をはぐくむことをねらいとして、総合的な学習の時間を設けている。特に中・高等学校においては情報に関する教科・内容を必修として、教育の現場ではさまざまな試みがなされている。小林先生のように、「情報科」でライフプラニング教育をするというのもまさに新教育課程ならではと言えるだろう。
昨今のフリーターやニートの増加を受け、社会で必要とする力を発達の段階に応じて子供に身につけさせる取り組みも少しずつ始まっている。一部の教師は手探りでコミュニケーション力や課題解決力などを児童や生徒に身につけさせる授業を行っているが、総じて、教育現場が頭を抱えがちなのが、社会で必要とする「力」の中身がよくわからないことだ。
一方、どこの企業でも「求める人材像」を言語化する取り組みは行われているが、実際に聞いてみると各社の違いはほとんどなく、「行動力のある人」「自立した人」「コミュニケーション力のある人」「チームで仕事ができる人」といった言葉が並ぶことが多い。これらの力は短期間で開発できる力ではない。小学校での班活動や運動会など協働する経験を通じてコミュニケーション力がつき、学生時代に自らが課題解決に関わり意思決定することにより、少しずつ自立してゆく。つまり、社会で求められている基礎力は子どもの頃から少しずつ育むものである。仕事に必要な力は、その基盤となる「基礎力」があってこそ開発されるものである。
ワークス研究所では、社会で働く上で不可欠となる力を「基礎力」と定義し、企業の人事部や現場の管理職、キャリア教育に携わる学校教諭、大学教授などへの取材を通じて、その研究を進めてきた。
「基礎力」とは
「基礎力」は「5つの力」で構成され、そのそれぞれがいくつかの力の要素で構成されている(図表1参照)。
【図表1】
1.対人基礎力−親和力、協働力、統率力によって構成される。
| <親和力> |
他者との豊かな人間関係を築く力である。営業現場で顧客と良好な関係を築いたり、職場の先輩や同僚から必要な情報を得たりする場面などで必要になる。 |
| <協働力> |
目標に向けて協力的に仕事を進める力である。チームで仕事をする際、メンバーと良い関係を築き、共通の目標に向かって協働するために欠かせない力である。 |
| <統率力> |
場を読み、組織を動かす力である。会議を仕切ったり、集団の中で自分の意見を主張したり、他人の主張も取り入れながら、意見をまとめていく場面で必要になる力である。 |
2.対自己基礎力−感情制御力、自信創出力、行動持続力によって構成される。
| <感情制御力> |
気持ちの揺れをコントロールする力を指す。この力があると、職場でストレスを感じても自分なりにうまく処理することができる。 |
| <自信創出力> |
ポジティブな考え方やモチベーションを維持する力を指す。自己に足らない力を認識した上で、自己を成長させる力である。 |
| <行動持続力> |
主体的に行動すること、良い行動を習慣づける力である。さらに、そのような過程で、学習の習慣化を可能にする力である。 |
3.対課題基礎力−課題発見力、計画立案力、実践力によって構成される。
| <課題発見力> |
問題の所在を明らかにし、必要な情報分析を行う力である。与えられた課題を解決するだけでなく、自ら課題を見つけ出し解決に取り組む力である。 |
| <計画立案力> |
課題解決のため、効果的な計画を立てられる力である。仕事全体の流れをとらえ、複数の関係者のスケジュールにも気を配りながら、計画を立案・調整していく力である。 |
| <実践力> |
効果的な計画に沿った実践行動をとる力である。机の前で長時間考え続けるのではなく、他の人に相談する、まずやってみるといった行動を起こす力である。 |
4.処理力−言語処理力と数量処理力に分けられる。
| <言語処理力> |
言葉の意味を正しく把握し、文章の構成や要旨を的確に理解する力を指す。システムの指示書を依頼先に意図が伝わるようにまとめる、顧客からのメールに書かれた内容の背景を読みとるといった場面で活用される。 |
| <数量処理力> |
加減乗除の計算能力や、グラフ・表を正確に解釈する力である。営業場面で顧客に対し、売り上げに与える効果を即座に計算して示したり、調査結果をわかりやすく表現したりするなど、数量処理力を使う仕事場面は多い。
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5.思考力−論理的思考力と創造的思考力に分けられる。
| <論理的思考力> |
知識や情報を組み合わせ、構造的に物事をとらえ、的確な判断を導きだす力である。論理の構造を把握する力はあらゆる仕事の場面で必要となる。 |
| <創造的思考力> |
既存の物事を別の視点で見ること、決まったやり方で進められていた仕事の中で新しいやり方や考え方を生み出す力である。 |
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