―要約―

相互扶助制度について−保障意識形成の視点から−

桾沢 英雄

保険思想の根源は相互扶助だと云われている。この視点に立つと、生命保険による保障を受容する深層意識において、相互扶助制度の存在が何らかの影響を及ぼしているのではないかと考えることもできよう。本稿では、このような問題意識を踏まえた上で、相互扶助制度の概念を共同体的慣行として確立し、不文律的制度のような意義を有するようになった助け合いと位置づけ、地域共同体における相互扶助制度の現状を整理した。

現存する相互扶助制度として、農作業、埋葬儀礼、建築に関する労働扶助、金銭貸借における相互扶助制度を諸文献資料により調べた結果、その特徴として、参加者全員の合意、厳密な作業規定、作業欠席の罰則を見出すことができた。つまり、相互扶助制度は、助け合いの恩恵を受けられる反面、そのための義務の履行が細かく規定され、厳正に運営されているという面をもっている。この面では、権利と義務が厳密に規定されている助け合いの制度である生命保険制度と類似しているといっても、あながち的外れではないだろう。その意味で、共同体における相互扶助制度の経験は、それにまつわる規範意識をも通じて、生命保険による保障を受容する深層意識形成に何らかの関連をもつ可能性は考えられる。

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