―要約―

わが国の退職給付制度が労働移動に与える影響

菅沼 弘樹

戦後、わが国で導入された確定給付型の退職給付制度は、長期勤続者優遇的な性格が強く、導入当時の目的であった“労働移動の抑制”といった役割を担ってきたわけであるが、2001年1月より、ポータビリティという特性を持ち合わせた確定拠出型年金制度が新たに導入される運びとなった。この退職給付制度は、3年間同じ企業に勤めれば、積立金額を自由に転職先に移行できる予定であり、わが国の労働移動に一役買うものと予想される。

しかし、本当に労働移動に影響を与えるのであろうか。仮に、与えるとするならば、どの年代層に与える影響が大きいのであろうか。従業員におこなったアンケートの結果をみると、ポータビリティのある退職給付制度は、従業員の転職に対する抑制意識を緩和し、かつ、若年層の転職意識よりも、中高年層の転職意識をより高める効果を持つといえそうである。

このポータビリティのある確定拠出型年金制度の普及が高まるにつれ、今後の労働市場は、現在みられるような若年層の自発的な労働移動、中高年層の非自発的な労働移動のみならず、中高年層の自発的な労働移動が高まるといった方向に進むと考えることもできよう。

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