―要約―

フリンジベネフィットの経営的効果の理論的背景−ワークモチベーション、組織コミットメントとの関係性−

西久保浩二

福利厚生制度や退職給付制度などのフリンジ・ベネフィットについてはこれまで、費用と効果、換言すれば、投資とそのリターンの関係があまり注目されてこなかった。実務的にも「効果測定が困難」とされ、明確な経営管理の対象として扱われてこなかったといってよい。しかし、高度成長を果たしたわが国の「日本的経営モデル」のなかにあって、“手厚い福利厚生”は基本的な要素のひとつとして認められてきたことも事実である。すなわち、結果的に、企業の組織活力の維持・向上、そしてそれが高い国際競争力とつながり、最終的には国家的な経済成長に幾ばくか貢献したと考えられるのであり、大いなる効果があったはずなのである。

しかし残念ながら、フリンジ・ベネフィットの経営的効果の存在は、現在にあっても疑いの眼差しでみられているといってよい。近年の福利厚生制度への投資の削減、退職給付制度からの撤退といったわが国企業の動きをみてもそうした評価を裏付けていると思われる。世界的にみてもその恩恵(経営的効果)に最も恵まれたと思われる日本企業にあってもそうなのである。このような状況に至った原因としては、この経営的効果の実証面での研究蓄積に乏しいことと同時に、理論的な議論が十分になされてこなかった点に負うところも大きいと考えられる。本稿ではこの反省を出発点として、モチベーション理論、組織コミットメント理論などの観点からフリンジ・ベネフィットの経営的効果を考えてみることとする。

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