―要約―

ペイオフ一部解禁に伴う定期性預金の預け換え行動とその規定要因

長井 毅

平成14年4月にペイオフの一部解禁が実施された。その結果、1,000万円以上の定期性預金については、これまで全額保護されていたものが、元本1,000万円とその利息までに限定され、それ以上の部分は一定のリスクを有する金融商品へ質的に変化した。
  ペイオフ一部解禁に伴う預金者の対応行動をみると、預け換え行動を積極的に行った預金者がいる一方で、特に預け換え行動を取らなかった高額預金者も少なからず存在しており、個々の対応行動には大きな違いが生じている。
  そうした預け換え行動の違いはどのような要因から生じていたのであろうか。預け入れ先の金融業態や金融機関の違いという、単なるそれだけの要因なのであろうか。預金者の個人差要因や、預金目的の違いなど様々な要因も内在しているのではないだろうか。
  また預け換え行動は、1,000万円以上の高額預金者だけの行動だったのだろうか。ペイオフ解禁によっても全額保護されるような低額の預金者の中にも、預け換えを行った預金者が存在しているのではないだろうか。またそうだとすればその要因は高額預金者とどのように相違するのであろうか。 本稿では、このような問題意識のもと、預金者個々の家計サイドからみた預け換え行動の実態とその要因に着目した。とりわけ生活者の個人差要因の1つである知覚リスクや金融知識の程度と預け換え行動とのかかわりを中心に分析を進めた。
  分析の結果、単に預入先の金融機関に対する不安から生じているだけでなく、預金者自身の金融商品に対するリスク回避志向や、保有動機、金融知識など様々な要因によって、預け換え行動を取っていることが確認された。一方、ペイオフ一部解禁の対象外である低額預金者でも金融知識の高い層で預け換えが進んでおり、いわゆる“逆バンドワゴン効果”のような選好が確認された。

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