―要約―

世代間の給付と負担の公平性に対する将来評価−税・社会保障改革と世代間所得格差の関係−

永野 博之

能力主義の進展により、個人の努力や意思が反映される所得格差は容認される傾向がある。一方、税・社会保障制度は所得再分配機能により所得格差を縮小させる。しかし、高齢者に対しては過剰な所得移転が行われているとの指摘もみられ、個人の努力や意思が反映されない分、不公平感を助長させている側面もある。そこで本稿では今後の税・社会保障制度改革が所得格差、とりわけ世代間格差に及ぼす影響を検証した。
  その結果、2000年における再分配所得は引退世代も現役世代とそれほど遜色ないが、今後の税・社会保障制度改正により税・社会保険料負担が増える現役世代の所得は減り、医療・介護給付が増加する高齢者世代では所得が増加するため、世代間格差は将来にわたり拡大することがわかった。また、コーホート別の生涯負担と生涯給付の関係から制度改革による影響をみても、老齢厚生年金の支給開始年齢引き上げにより後世代ほど給付が減るため、世代間格差は拡大することが確認された。
  さらに、最近議論されている「公的年金等控除の廃止」や年金制度での「保険料固定方式」が再分配所得に及ぼす影響をみると、引退世代の給付削減や現役世代の負担減少により、一時点でとらえれば、世代間格差は縮小するものの、コーホート別でみた場合はむしろ格差を拡大させる結果となった。   こうした格差拡大を防ぐためには、医療・介護給付費を抑制させるための制度の抜本改革が必要である。さらに現役世代の給付増加に資する「育児保険」構想のような、これまでの現役世代から引退世代への一方向のみの所得移転ではない、逆方向も見据えた改革が求められているといえるだろう。

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