―要約―

社会保障の重複給付−社会保障給付の総合調整による給付費削減に関する一考察−

永野 博之

これまでの社会保障制度改正は制度ごとに独立して行われており、総合的な給付調整までには至っていない。そうした中、入院や入所期間中の医療・介護保険給付と年金給付は同じ高齢者の生活保障機能を持っており、この意味において調整するべき給付額が存在するのではないかと考えられる。そこで、入院・入所した場合の生活費と健常時の生活費を比較することによって、重複給付の存在を確認している。

高齢者の健常時の生活は、交際費や教養娯楽費等、人とのつき合いや趣味のための支出が4割近くに達しており、活発的であることが窺われる。しかし入院・入所期間中には自己負担医療費や入院・入所に伴って発生する費用に関する支出が多く、こうした支出にまで手が回せない現状にあると考えられる。こうした前提のもと、入院・入所した場合の生活費を求めた結果、健常時に比べ低く、1ヶ月当たりの医療・介護給付と年金給付の重複給付額は1〜7万円程度であることが確認された。

重複給付は社会保障制度の非効率性を排除する意味においても早急に解決すべきだが、制度の見直しにあたっての課題が多く、慎重かつ十分な検討が必要であるだろう。

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