俳優 小倉久寛さん
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自分のおもしろさを引き出してくれる人がいたから役者をやってこられた
舞台をはじめ、テレビドラマや映画でも活躍する俳優の小倉久寛さん。就職先が見つからずに軽い気持ちで劇団に入ったが、そこで三宅裕司さんと出会って大きな影響を受けたという。そんな小倉さんに三宅さんとの関係や、所属する劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」の最新公演について、また趣味であるギターについてお話をお聞きした。
テレビドラマを見て 役者に憧れた学生時代
学生時代は舞台を観に行ったことがないのはもちろん、芝居に対して興味すらありませんでした。普通に就職して、サラリーマンになるものだと思っていましたし、そのつもりで就職活動もしていたんです。でも、ちょうどそのころオイルショックがあって、世の中は大混乱。その影響もあって就職先が決まらず、「これからどうしようかなあ・・・・・・」と思っていたときにテレビで見たのが『俺たちの祭』というドラマでした。 主演の中村雅俊さん演じる青年が劇団に入って、仲間といろんなことをやっていく青春ドラマなんですが、それがもう楽しそうで、見ているうちに自分も芝居をやってみたいと思い始めました。ただ、どうすればいいのかわからない。それでとりあえず『ぴあ』を見たら、「大江戸新喜劇旗揚げ公演」という記事が目に飛び込んできたんです。まず思ったのは、喜劇なら自分でもできそうだということ。なぜか簡単だと思っちゃったんですね。とにかく騒いでいればいいんだろうと。まあ、それが間違いであることはあとからわかるんですけれど、すぐにその旗揚げ公演を観に行って、「これだ!」と思いました。就職せずに役者をやっていくことに関しては、誰にも相談せずに自分一人で決めました。親は驚いたみたいです。「大学まで出したのに・・・・・・」って(笑)。 小倉久寛さん
究極の子分肌で人についていくのが好きなんです
2006年のSET公演「ナンバダワールドダンシング」  こうして入った大江戸新喜劇でしたが、結局1年ほどで辞めてしまいました。その理由は、看板俳優だった三宅裕司さんが独立することを決めて、僕に「一緒にやらないか」と声をかけてくださったこと。もちろん、「ついていきます!」と二つ返事でOKしました。だって、三宅さんですよ。当時の三宅さんはまだ雲の上の人でしたし、ものすごく憧れていましたから。だいたい三宅さんという人はその当時から親分肌で、「オレについてくれば大丈夫だ!」というオーラが出ていたんですよ。一方、僕は究極の子分肌(笑)。そういう言葉があるのかわかりませんけれど、人についていくのが大好きなんです。
  こうして、三宅さんをはじめ7人のメンバーで「スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」を結成したのが、もう29年前のこと。振り返ってみると、大江戸新喜劇にいたころに「三宅さんと同じ舞台に立ちたい」と思ってからずっと、「三宅さんと同じ場面に出たい」「三宅さんとセリフを交わし合いたい」「そのことでお客さんに笑って欲しい」、最後には「三宅さんと2人でやりたい」と、とにかく三宅さんを目標にがんばってきたような気がします。その気持ちは今も変わりませんね。
思い出深い作品のひとつは『剣はペンより三銃士』
 SETはとにかく新作をどんどんやる劇団だったので、もう稽古とアルバイトに明け暮れる日々を過ごしていました。でも、「ツライ」と思ったことはありません。もちろん、経済的には大変でしたけれど、それ以上に舞台に立つことが楽しかったんですよね。
  そうやってたくさんの作品に出演する中で、強く印象に残っているのが「剣はペンより三銃士」という作品。SETでは、三宅さんと僕の2人だけで演じるシーンが10分間ほど続くことが多いんですけれど、それに初めて挑戦したのがこの作品なんです。台本を見ると、そのシーンは簡単な決めごとが箇条書きになっているだけで、セリフが書いてない。で、その決めごとに沿って、2人がゆるーいシーンを演じるわけです。
  稽古でやったことの中からおもしろいことだけを抜き出してやるので、完全なアドリブではないんですけれど、やっぱりセリフが決まっていないというのは緊張しますよね。最初はもうメチャクチャ不安でした。ところが、いざやってみるとお客さんは大爆笑。ウケたことはもちろん、三宅さんが僕のキャラクターを引き出してくれたというか、「お前はここがおもしろいんだぞ」と教えてくれたことがうれしかったですね。役者としてやっていくことに自信が持てたのもこのころです。
小倉久寛さん
子どものころは日常生活の中に感動があった
小倉久寛さん  ちょうど今、稽古の真っ最中(※インタビューを行ったのは9月中旬)なんですが、今度のSET公演もおもしろいですよ。『教育再生シリアスゲーム 昭和クエスト』というミュージカル・アクション・コメディで、テーマはずばり「教育」。教育と聞くと何だか重い感じもしますが、そこはSETですから、誰が観ても楽しめるおもしろい作品に仕上がっています。
  思えば僕たちが子どものころって、日常生活の中にもっと感動があったような気がしませんか。モノが豊富にあったわけじゃないけれど、そのぶん、苦労して何かを手に入れたとか、何かをやり遂げたとか、そういう経験をいっぱいしてきたし、それがものすごく楽しかった。でも、何もかもが便利になった現代社会では、子どもたちがそういう経験をする機会って少ないですよね。それで、文部科学省が開発したゲームを使って、子どもたちに昭和40年代の生活を体験させる、というのが『昭和クエスト』の設定です。
  SETといえば音楽を芝居に盛り込むことが多くて、以前には劇団員全員の津軽三味線の演奏とかもありましたし、ニューヨークからゴスペルシンガーを呼んできたりもしました。今回もスゴイですから、期待してください(笑)。
加山雄三さんとの共演がきっかけでギターにハマる
 ギターは子どものころから好きだったんですが、本格的にハマったきっかけは、テレビ番組で加山雄三さんとご一緒させていただいたこと。あるとき、収録スタジオの廊下を歩いていたら、加山さんの控え室から「テケテケテケテケ!」とエレキギターの音が聞こえてくるじゃありませんか。驚いて控え室に行ってみると、近々コンサートがあるそうでエレキの練習をなさっていたんですね。しばらく練習を見学させていただいたんですが、加山さんの姿がもうとにかく、かっこ良くて、翌日、ギターを買いにいきました(笑)。
  それ以来、ギターに夢中ですね。楽器屋巡りもしますし、もう何本も買っています。お気に入りのギターって、眺めているだけでも楽しいんです。それをつまみにビール1本いけますよ。もちろん、演奏もします。『昭和クエスト』のように公演の中で演奏することもありますし、それだけじゃなくて、SETのメンバーで世田谷ベンチャーズというバンドを結成していて、ちょっとしたライブをやることもあります。今は、ギターのない生活は考えられませんし、もしかしたらギターこそが僕の元気の素になっているのかもしれませんね。
愛用のマーチンのフォークギター。
プロフィール 小倉久寛さん

1954年、三重県生まれ。学習院大学法学部卒業後、大江戸新喜劇を経て、そこで知り合った三宅裕司が主宰する劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」の創立に参加。現在は舞台を中心に、テレビドラマやバラエティー、ナレーション、アニメの声優など幅広い分野で活躍。現在テレビ東京系の「ペット大集合!ポチたま」のレギュラー・ナレーションをしている。

劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第45回本公演
教育再生シリアスゲーム「昭和クエスト」
公演日程および会場についてはスーパー・エキセントリック・シアターホームページで確認してください。
http://www.set1979.com/

発行/(財)生命保険文化センター Interview & Writing/福田智生 Photo/田中誠
Editor/宮澤省三(M-CRUISE) Web Design/Ideal Design Inc.