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ESSAY エッセイ
税金

消費税改正時の 支援策を賢く利用

税理士法人 TOTAL代表社員 沓掛 伸幸

2019年度税制改正法案は、大幅な改正もなく、3月末までには可決成立する見込みです(注:本稿執筆は3月初旬)。さて、今般の税制改正法案が「大幅な改正もなく」という点を意外に感じる読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。2019年10月に消費税の税率改正が予定されていますが、この改正は2016年11月に決定されているものです。今回は、前回の税率改正時に改正前の駆け込み需要と、その反動減による景気停滞を招いた反省から様々な対応が考えられています。今回は、消費税改正に伴う対応を確認していきます。

1. 軽減税率

飲食料品および定期発行される一定の新聞について、消費税率が8%のままで据え置かれる軽減税率制度が導入されます。なお、飲食料品からは、外食、酒類等は除かれます。ただし、ファーストフード店などは、店内で食べる場合は「外食」となり税率10%、持ち帰りの場合は「食料品」となり軽減税率8%が適用されることが想定されています。実施後、しばらくの期間は一部で混乱も予想されていますので、注意が必要です。

2.ポイント還元

中小の小売店でクレジットカード等によるキャッシュレス決済を行えば、5%または2%のポイント還元が受けられる制度が導入予定です。ただし、商品券などの換金性の高いもの、医療費・住宅家賃など消費税が非課税のサービス、住宅、自動車などが対象外となります。また、対象店舗が、中小に限定されていること、実施期間が9か月間であることなど注意が必要な点もありますが、消費税率の改正分2%を埋め合わせるものとして期待してよいと思います。

3.プレミアム商品券

「プレミアム商品券」は、最大25,000円分の買い物ができる商品券が20,000円で購入できるものです。この、商品券は、自治体が発行し、自治体内にあるすべての店で商品やサービスの購入に利用できます。前回改正時は、購入に制限がありませんでしたが、今回は、低所得の住民税非課税世帯と0~2歳児がいる家庭のみ購入でき、対象の子どもが複数いる場合は人数分の金額(2人なら50,000円)まで購入できる見込みです。詳細は未定の部分がありますが、対象となりそうな方は、関連ニュースに注意するとよいでしょう。

4. 住宅購入支援

住宅購入支援策は、住宅ローン控除について期間の延長と限度額の拡大、また住まい給付金について所得制限の緩和と最大給付額の拡大が行われます。さらに、一定の要件を満たす次世代住宅では、1点1円で商品等と交換できる次世代住宅ポイント制度も検討されています。一定の新築住宅では、1戸当たり最大35万点の付与が予定されており魅力的な制度です。住宅は、高額商品であり、景気に与える影響も大きいため手厚い対策が講じられていますので、住宅購入をお考えの方はご確認ください。なお、経過措置として、2019年3月31日までに契約し、引き渡しが2019年10月以降となる住宅については、消費税率が8%とされますが、前述の支援策の恩恵は受けられないこととなりますので注意が必要です。

5.自動車関連

自動車関連では、購入時の自動車取得税が廃止され、環境性能割が新設されます。燃費基準が厳しくなったうえで、2020年9月までの時限措置として軽減が行われます。自動車取得税は購入価格の3%(エコカー減税対象外の場合)でしたが、環境性能割の軽減措置では購入価格の0~2%となり、減税となります。ただし、エコカー減税対象車では、増税となってしまうケースも考えられます。また、保有にかかる自動車税も小幅ながら減税されます。

目前に迫った消費税の改正、こうした支援策を賢く利用して、生活への影響を少しでも緩和していただきたいと思います。

プロフィール

沓掛伸幸

沓掛 伸幸(くつかけ のぶゆき)

税理士法人TOTAL代表社員(税理士・医療経営コンサルタント・CFP(R))
一橋大卒、生命保険会社を経て2007年税理士法人設立。税理士・司法書士・社会保険労務士等が属するTOTALグループ全15拠点、スタッフ400名にて、法人、医療機関、相続の三分野の総合サービスを展開。