日本の医療費

厚生労働白書(平成26年版)によると平均寿命と健康寿命のひらきは、男性で9.13年、女性で12.68年となっています。健康寿命とは、人の寿命において健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいいます。医療の進歩により日本人の寿命は長くなったと思われますが、それに伴ってやはり医療費は膨大になってきています。

今年9月に厚生労働省から発表された概算医療費によると、2016年の医療費総額は41.3兆円。前年からは0.4%の若干のマイナスとなりましたが、既に40兆円を超えた日本の医療費が、私達の暮らしに大きく関わってくることは変わりません。

私の父が緊急入院による大腸がんの手術をした際、父が心配したのは自分の病気ではなく、医療費の負担と、緊急が故に入らなければならなかった個室の差額ベッド費用のことでした。私が父に提案して既に加入していた民間の医療保険のことなどは頭にはなく、自営業だったこともあり母と自分達の生活が立ち行かなくなるのではないかという思いばかりがよぎったようです。

公的医療保険制度

日本には充実した公的医療保険制度があります。義務教育就学前は原則2割負担、70歳になるまでは3割負担、70歳以上74歳までは原則2割負担、75歳以上は原則1割負担で医療が受けられます。

以前は70歳になれば1割負担でしたが、日本社会の高齢化による医療費増大に伴い変更され、現役並みの所得がある高齢者は3割負担と引き上げられました。

当時70歳を超えていた父ですが、自営業だったため、現役並み所得の3割負担でした。それ故に緊急で重篤な病は体への負担だけではなく、医療費の負担として気持ちにまで大きくのしかかり、父を苦しめたのでしょう。

また、医療費の自己負担額が高額になった場合に「高額療養費制度」があります。一定金額を超えた場合に、超えた部分を健康保険制度がカバーしてくれるという仕組みです。

高額療養費制度の見直しについて

更に今年の8月から高額療養費の自己負担限度額が引き上げられました。一般の場合の医療費負担の限度額「12,000円」は「14,000円」に、現役並みの所得がある人の場合は、外来の個人ごとの医療費負担の限度額「44,000円」が「57,600円」に引き上げとなりました。この限度額が上がったということは、実際に医療機関で支払う金額が増えるケースも多くなるということになります。

参考: http://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/medical_security/medical_security_q1.html

なお、移行期間が終わる平成30年8月分からは、更に引き上げられます。「現役並み」については、年収による区別が69歳以下と同様になり、上限額も69歳以下と同じになります。「一般」の外来については上限額が「14,000円」から「18,000円」に上がるなど、ますます医療費の自己負担分が増えることになるのです。

医療は今後も高度化し、負担も増えることになるでしょう。この先の長寿時代において豊かな老後生活のためのもしもの備えは必要です。私の父はといえば……すっかり忘れていたものの、あれほど面倒くさいと言っていた医療保険とうるさい娘に感謝するよと言い、早くに病から回復して現役復帰を果たすことができたのでした。

プロフィール

小倉 絵里

特定社会保険労務士 小倉 絵里
社会保険労務士事務所 オフィス 代表

東京都荒川区生まれ。日本女子大学卒業。
大手企業勤務を経て、2008年に社会保険労務士登録。
商工会議所や大手金融機関などで、セミナーを実施。雑誌などで記事の執筆も多く手掛けている。