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2013年度 夏季セミナー報告(意見交換/大阪・福岡)
web.11
(2014.2)
【講評:京都府立洛北高等学校 竝川 幸子(なみかわ さちこ)先生】

竝川 幸子先生

2013年度 夏季セミナー(意見交換/大阪)

当生命保険文化センターと日本損害保険協会の共催で、高等学校の先生や教育関係者の方を対象とした夏季セミナー「くらしとリスク管理」を東京・福岡・大阪の3カ所で行いました。
10月から5回にわたってセミナーの内容(「基調講演」、「授業実践報告(家庭科)」、「グループ形式による意見交換」)をご報告しています。

今回で最終回となりますが、大阪会場と福岡会場で行った「グループ形式による意見交換」の内容をご報告します。グループごとに意見交換した内容を発表していただき、その後、当日「授業実践報告」をしていただいた竝川先生にコメントをいただきました。※意見交換は、当日のセミナー参加者によるものです。

INDEX

 

1. 竝川先生の授業実践報告について

竝川先生の授業実践報告の内容につきましては、2013年2月に「教育の現場から」でご紹介しています。タイトルは「生命保険文化センター実学講座の活用について〜点から線へ・広がりへと〜」です。 なお、実際の授業風景を収録した動画も掲載しています。下記より、ご覧ください。

授業実践報告・動画【生命保険実学講座・ダイジェスト(23分)】

※動画は、生徒代表によるロールプレイングをはじめ竝川先生独自の内容となっていますが、通常は当センター職員が当センター作成の副教材などを使用して生命保険や生活設計について講義します。

 

2. 意見交換/大阪・福岡

(1)生徒の生活や認識の現状について

●人生設計、生活設計、消費者教育に対する生徒の関心は高い。生徒アンケートでは人気の調理実習と並んでこの分野が1番という学校も。生徒が「役立つ、大事だ」と感じていることに驚いている。 ●20歳から年金を払うことを心配している生徒は多い。また、就職できるのか、正社員になれるのかという不安もある。 ●受け身の生徒が多く、自分で考えることが難しい。未来に対するイメージ力がない。データや計算に弱い生徒がいる。 ●生徒たちにとって保険は、生活に余裕もない中で本当に必要なものなのかと疑問に思うものかもしれないが、リスクに対する認識をしっかり持たせる必要がある。特に高校3年間にどのようなリスクがあるのかを認識させることは大事。

(2)「生活設計」や「保険」をどのように授業に取り入れるか

●保険は、学校のレベルや生徒の生活状況によっては授業に取り入れるのが難しいテーマではないか。やはり、ある程度生活に余裕がないと保険に入れないため、どのように生徒に話をするかが課題。 ●「高齢社会」や「家庭経済」の単元で社会保険と任意保険の違いやリスクについて取り上げている。 ●生活設計を考えさせるにあたっては、教育費の計算など具体的な金額を提示するのが効果的。 ●学年によって生徒の精神的な発達段階が違うため、どの学年でやるかによって大きな違いが出る。 ●総合学科などでは、3年生の進路がある程度決まった段階で生活設計について改めて考えるというような、科目をまたいだ形の授業もあるのではないか。

(3)授業を進める上での課題

●ライフプランと経済分野は「家庭基礎」では時間が足りず、時間を割きたくても割けないのが現状。その中で、どれだけを生活設計に使えるか、どんなふうに時間をかけていくかが工夫のしどころ。どの分野でお金のことを絡めるかをよく考えなければならない。 ●他教科との連携が難しい。「総合的な学習の時間」や進路指導、現代社会などと重複する内容があるため、生徒の反応は「またこれか」になってしまう。 ●総合学科では、働き方や生き方について扱う学科の中でこの分野を学ぶ。他教科とできるだけ話し合って連携し、重複する内容があればきちんと調整していくことでよりよい授業ができるのではないか。 ●同じ内容でも先生が違えば切り口が変わる。いろいろな先生から話を聞くなかで初めて自分の生活とのつながりがわかることもあるので、重複するのもよいのでは。 ●保険のメリットを教えるだけではなく、生徒が考えて選択できるような授業が望ましい。また、生活の質について考え、生活設計ができるような問いかけをしていく必要がある。 ●親の管理のもとで主体的に生きていない高校生にはリスクが想像できず、リスク管理など考えもしないのでは。「生活者目線」をより意識した教材を生命保険文化センターに作成して欲しい。そうすれば、家庭科の授業でもっと活かせるようになると思う。

(4)わかりやすく、興味・関心をひく授業のための取り組み

●商業高校の生徒はほとんどが就職するため、求人票などを使って家庭科だけでなく進路指導も行い、生徒からも好評を得ている。一方、普通高校は「家庭基礎」で座学中心のため、ロールプレイのような実践型の授業が効果的。 ●人生双六を取り入れ、高校生から人生の終わりまでのライフイベントにおいてプラスとマイナスの両面を考えさせる。プラスの例としては結婚、マイナスの例では事故に遭うなどを挙げさせ、マイナスのライフイベントをどのように避けていくかなどをグループで1枚の模造紙にまとめている。 ●ライフプランを考えるにあたり、結婚や共働きについて、するかしないかの意見を出し合ったり、人生双六を作っている。経済分野では、悪徳商法についてのビデオ視聴、契約・クレジットカード・消費者の権利について取り上げるほか、教育費の計算をさせたり、「家計管理マスターシール」を使った授業などを行っている。 ●「仮想生活ゲーム」というトランプカードを使ったゲーム形式の授業により消費支出の項目を学んでいる。グループごとに、手取り額を60万円として、さまざまな保険と預貯金を合わせ10万円以内の支出内容を考えさせ、最終的に預貯金の多さを競う。 ●今まで自分にかかったお金と、どんなところにどんな人たちの助けがあったのかなど、これまで自分がどのように育ってきたかを振り返りをすることで、ライフプランを考えるきっかけにしている。 ●生徒の身近なものと関連づけると効果的。例えば、生徒は携帯やゲーム、SNSなどに費やす時間が長いため、それらに使った時間を数字で出すことは、生徒が自己管理をする上で意味がある。 ●自転車事故の損害賠償のリスクは高校生でも現実にあり得る。事故を起こすとどれくらいのお金がかかるのかについて、自転車マナーの指導を含めて行っている。 ●部活でケガをしたときなどに支払われるスポーツ振興共済掛金について再確認させることも大事なのではないか。 ●社会保障については、社会のしくみとして知っておくことが大切。給与明細や求人票を使い、社会保険も社会制度の一つとして教えることができるのではないか。

(5)その他、質問

●発表の中で「ロールプレイング」をさせているとあったが、どのように行っているか教えてほしい。 →福岡・大阪会場ともに、意見が多かったので、その場で「ロールプレイング」を行いました。 ※動画にも登場します。

 

3. 竝川先生からの講評

●生徒にどんな力をつけさせたいのかを明確に

「自分にとって何が必要な情報なのか」を考え選択することは、生徒はもちろんですが、指導する先生側にも必要です。たとえば4月に教材に関するいろいろなパンフレットが送付され、これもいいな、あれもいいなと思うけれど、実際、すべて活用することは不可能です。

そこで「何が必要か」を考えるわけですが、そのとき、生徒たちに何についてどんな力をつけさせたいかを先生ご自身が明確にすることが大切だと思います。先生それぞれ個性も考え方も違います。学習指導要領のねらいは定められていても、プラスアルファの部分は先生がそれぞれ独自のねらいを持たれることが大切だと思います。

そのねらいをどう実現していくか、それにはいろいろな方法があり、山頂に至るルートは1つではありません。しかしその頂点にある目標は「生徒たちが自分で歩んでいけること」だと私は考えます。私はそれを常に念頭に置き、彼らにいろいろなことを考えさせる試みをしています。

一方的に教えるのではなく、知的好奇心をくすぐること。少し難しいことを教えたとき、生徒たちが「?」という反応をするような、「あっ」と気づくような事柄を授業に取り入れていきたいと考えています。ワークシートも穴埋めにせず、考えて書かせることを意識して作り、また、考えることの大切さについて日頃から生徒に話をしています。

●生徒の生の声を大切にする

そのために必要なことの1つは、生徒の状況を把握し、生徒にとって何が大事なのかを知ることです。
授業内容がどのように生徒に活きているかは、テストで測れるものでもなく、生徒自身に問いかけるしかありません。

そういう意味で学年末アンケートは生徒の素の声を聞くことができるので、ぜひ有効活用されてはと思います。生徒のアンケートで保険分野が1位になったというお話がありましたが、私自身もアンケートを見て保険分野の大切さに気づいたことがありました。生徒の声を大事するところから授業内容を深めてきたという経緯もあります。

●他教科との連携

そしてもう1つ、他教科との関連です。内容が重なるという話がありましたが、それでもいいと思います。なぜなら、現代社会には現代社会の、家庭科には家庭科の見方があるからです。私たちは経済について家計を中心に見ていきますが、現代社会では企業や行政中心の視点になります。

いろいろな見方を知って、生徒自身が1つにつなげていけたらいいと考えます。ただ、雑談程度でもいいので、各教科で情報交換をし、お互いを知っておくことは大事だと思います。その上で、生徒に「家庭科ではこういうことをやるんだよ」と言えば、内容の重複に対して生徒も納得できます。

●指導時間のやりくりを上手に

時間数が足りないことはとても大きな問題ですが、生徒の状況把握をしながら自分のねらいをしっかりと定められていれば、どこにウェイトを置くかが見えてくると思います。たとえば私の指導計画では、「住まい」の単元がありません。それでも学習指導要領の内容は網羅しています。

なぜそれが可能かというと、「住まい」を「乳幼児の発達と福祉」「高齢者の生活と福祉」の単元に取り入れているからです。「乳幼児〜」では、子どもの成長と合わせて住まいを考え、「高齢者〜」では、簡単なシニア体験を通じてバリアフリーや住まいについて考えています。このように「題材の組み入れ」を行えば、自分がおさえたいところはある程度おさえていけるのではと思います。

生活設計と保険に割り当てる時間数ですが、生命保険文化センターさんとの授業を含めて4時間くらいで行い、損保さんのワークシートは別の時間を設け、全部で4.5時間くらいをこの分野に当てています。中学で学習している収入・支出などは復習程度にとどめるなど、臨機応変に進めています。

●家庭科はすべてがつながっている、という意識を大切に

家庭科はすべての分野が1つにつながっています。この「つながり」を先生方が意識されたうえで授業を組んでいかれたら、生徒にとって大変わかりやすいものになるだけでなく、それが生活に活かせ、将来自分の足で生きていく力につながっていくのではないかと考えています。

単発で保険を扱うのではなく、すべてがつながっているという意識を持って指導することが大切だと思います。学年末アンケートで、「家庭科で学ぶ内容で、役に立たないものはない」と答えた男子生徒がいました。それを見たとき、やってきて良かったと思うと同時に、こういうことを大事にしながら頑張っていこうと思いました。

●ティームティーチングのメリット

その頑張りの源の1つに外部講師の先生との「ティームティーチング」があります。私は、生命保険文化センターや消費生活センター・長寿すこやかセンターなど外部の方に講師に来ていただき、ティームティーチングの形で授業を進めています。授業の組み立てや展開のしかたについては、講師の先生と綿密に相談しながら進めます。

ティームティーチングは、自分自身も大きく成長できる授業形態です。
まず、これまで知らなかった専門的なことを学ぶ機会になり、とてもありがたいことだと思っています。
そして、生徒をよりよく観察できます。自分が授業をしていると生徒の反応や動きは見えにくいものですが、ティームティーチングではじっくり生徒の反応を見ることができ、大きな意義があると思っています。

また、外部講師をお招きするので、挨拶、言葉遣いなど、当たり前のことを改めて指導する機会にもなります。このような理由から、私はティームティーチングをとても大切にしています。先生方もぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

 
 

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