消費者運動を考える 名古屋経済大学名誉教授 小木 紀之
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消費者問題の普遍化は、つまるところ企業優先の思想に帰結される。例えば、完全な競争が行われていない現実の市場では、企業に従属化する消費者像がクローズアップされる。

したがって、消費者が市場で商品・サービスの供給者である事業者(企業)と対等の力関係を持ちうるためには行政が消費者政策を通して必要な手段を講じるとか、消費者自身が団結し、学習し、抗議し、生活防衛のために行動する運動を展開することが宿命的なものとなる。

とりわけ、消費者の欲求と必要性を正しく反映した消費者のための生産・流通を事業者(企業)に求めるという、消費者主導型の生産・流通体制の確立は消費者運動の大きな課題の一つでもある。

また、現代の市場経済下にあって消費者が真に人間として大切にされ、消費者の権利が確保されるためには、企業・行政・消費者の三者が一体となって現実に生じつつある消費者問題の解決に真剣に取組まなければならないであろう。

その意味からも、消費者は自ら進んで消費者問題に対する関心を持ち、学習活動に参加する中でその解決の方途を見い出していく必要がある。

とりわけ、現代経済社会において必然的に発生する消費者問題への対応という立場から求め続けられた「消費者のかしこさ」は消費者の権利意識と行動力、消費者の理解力と判断力にフォーカスされる。

組織化された消費者団体が、その時代環境の中で発生した消費者問題にどの様に対応し、運動を展開してきたかを知ることは、これからの消費者問題解決の方途を知る上で極めて重要なことなのだ。

「すべての消費者が購入した商品によって身の危険にさらされる」、「どの消費者も商品の購入に必要な十分な情報が与えられていない」、「どの消費者も不当な値段で買わされて選択することを阻まれている」等そうした現実に直面した時、消費者運動は消費者主権の確立をめざして、前述した「団結し、学習し、生活防衛し、抗議し、行動する運動」として機能する。

主婦連合会、全国地域婦人団体連絡協議会、全国消費者団体連絡会、日本生活協同組合連合会等は戦後の消費者運動に大きな役割を果たしてきた。消費者問題はある意味で「時代の落し子」でもある。「製品の安全性」、「医療サービス」などはこれからの消費者運動の重点的取組み課題といえる。消費者運動をどう把握するかは「運動を企業にとっての早期警報システム」として位置づける姿勢が大切だ。

人間が人間としての生活を求める運動、そして人間が人間らしい生活を実現できる社会を求める運動、さらには「消費者による消費者のための政治」をめざす、そのことが、将来に対する希望の灯をともすことを可能にする。消費者市民社会の形成にも消費者運動の果たす役割は大きい。

余談であるが19世紀アイルランドの土地管理人(退役軍人)であったボイコット(Boycott)の厳しい納税取り立てに反発した農民たちは徒党を組んでこれに対抗した。今日消費者運動用語となっている「不買=ボイコット」の語源は人名に由来する。

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小木 紀之(おぎ のりゆき)

小木 紀之
(おぎ のりゆき)


ノートルダム清心女子大学・長崎大学各助教授を経て名古屋経済大学経済学教授。
その間、放送大学客員教授(消費者問題論)歴任。
現在、日本消費者教育学会名誉会長。
名古屋市消費生活審議会長、岐阜県消費生活安定審議会長を務める。
平成24年度 消費者支援功労者表彰(内閣総理大臣表彰)受賞。

 
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