消費者教育推進の課題 名古屋経済大学名誉教授 小木 紀之
文字サイズ変更 大 中 小閉じる

本年8月10日、消費者教育推進法の成立をみた。第3条には「消費者教育は消費者市民社会を構成する一員として主体的に消費者市民社会の形成に参画し、その発展に寄与することができるよう、その育成を積極的に支援することを旨として行わなければならない」と書かれている。

消費者問題の多様化・深刻化に対処するための消費者政策の展開は、ますます重要性をおびてきている。そうした中で消費者もまた自己責任、役割認識に価値判断を示す時代に入っている。

そのことは、いままで以上の生活科学的な視点を滋養しておかなければならないことを意味する。消費者教育の意義と必要性が強調されるのもそうした側面が大きな比重を占めているからである。

1981年設立の日本消費者教育学会設立趣意書には「消費者が生活の価値を守り、生活の質を向上させるための自立人間能力を開発する」ことが明記されている。その意味では消費者が消費者学習を通じて、自主的、自立的、自助的生活能力を身につけることは社会の安定と発展にとっても基本的な重要ファクターなのだ。

こうして消費者が生活環境醸成の力を強めることは結果的に消費者問題の発生を最小限にするというメリットを持つ。その意味からも消費者能力は生涯を通して、常に新しく生起する社会状況に対応し、必要な生活環境を醸成する力として持続されなければならない。

またこのことは、極めて大切なことであるが、消費者が生活環境醸成の力を強めることは一方において行政や企業が消費者問題の解決に必要とする社会的諸費用(ソーシャルコスト)も最小限に近い状態にするというメリットも生じる。推進法に示されている様に、学校における消費者教育の推進、地域における消費者教育の推進は同法の基本的施策の一つである。

9月24日同法の施行に向け重要な役割を果たす「消費者教育推進のための体系的プログラムを作成するための研究会」が発足した。研究会での議論は4月6日消費者庁の消費者教育推進会議報告「消費者教育推進のための課題と方向」が問題提起のベースになり、年内に研究会報告がまとめられる方針である。

なお、消費者教育の体系化とは、推進会議報告が指摘する様に「消費者がすべてのライフステージを通じて消費生活の特徴的な場面において必要となる消費者としての諸能力を発展させることができるよう、断片的でなく、かつ重複のない、系統的な教育を受ける機会を保障するためのプログラム作りというべきものである」としている。

また、体系的プログラム作りに際して前提となる共通理解は
(1) 社会における消費者の位置づけ
(2) 消費者問題の背景と消費者の権利保障のための施策の意義
(3) 消費者教育を受ける権利と問題解決に向けた消費者の行動の重要性
(4) 将来を見通した生活の設計の必要性
(5) 消費者の特性に応じた支援の重要性

これらの共通理解のもと、ライフステージ(幼児期、小学生期、中学生期、高校生期、成人期)ごとの消費者教育の具体的目標は、より明確化されることになろう。

閉じる
小木 紀之(おぎ のりゆき)

小木 紀之
(おぎ のりゆき)


ノートルダム清心女子大学・長崎大学各助教授を経て名古屋経済大学経済学教授。
その間、放送大学客員教授(消費者問題論)歴任。
現在、日本消費者教育学会名誉会長。
名古屋市消費生活審議会長、岐阜県消費生活安定審議会長を務める。
平成24年度 消費者支援功労者表彰(内閣総理大臣表彰)受賞。

 
発行/(公財)生命保険文化センター Web Design/Ideal Design Inc.