国際協同組合年に寄せて 名古屋経済大学名誉教授 小木 紀之
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今回は消費者運動に大きな影響を与えてきた協同組合運動(生協)について考えてみたい。

私が生協運動に関心を持ったのは、かれこれ半世紀前のこと、日本生協運動の父と呼ばれる賀川豊彦の自叙伝的小説「死線を越えて」を読んでからであった。

そして賀川という人物像を探ることとなった。キリスト者であった賀川は、常に貧しき人々が人間らしい生活を享受出来るしくみを念頭に、その社会活動を展開していった。

「万人は1人のために、1人は万人のために」は生協運動の理念そのものであり、賀川の精神的バックボーンであった。

賀川は生協運動の核心として「利益共楽」(利益は皆んなで分け合う)、「人格経済」(人間中心の経済社会の確立)、「資本協同」(資本は皆んなで出し合う)、「非搾取、権力分散、超政党」(生協は主義主張を越えた人と人のつながりで成り立つ)に求めた。

これらの核心から相互扶助、防貧、教育、自立を生協活動の原点においていることが読み取れる。1909年、賀川21歳の時、神戸の貧民窟(新川)に身を投じ、以後14年間、救貧活動に奔走した。救貧活動の中で賀川は救済や施しでは真に貧しき状況は改善出来ないことを知った。

このことがアメリカ留学(プリンストン大学)の動機となった。「搾取からの解放」としての労働組合の存在とその運動の必要性を学んだ。

賀川の社会改良的思想は、帰国後、わが国の労働運動、農民運動、生協運動に大きな影響を与えた。その足跡を全国の賀川記念館・関連施設で知ることが出来る。

「弱者が人間らしい生活を送る」(人間尊重の精神)は今日の生協運動に脈脈と生きている(西 義人「現代に生きる賀川豊彦」コープナビ2012年7月号参照)。

ところで、世界の生協運動の原点は約170年前(1844年)の英国の小さな町ロッチデール(マンチェスター北東)で28人のフランネル職工(綿布)たちによって開店した「ロッチデール公正開拓者協同組合の店」が出発点となっている。

彼らが掲げた崇高な理念「ロッチデール原則」は、今日、国際協同組合同盟(ICA)の 原則として生き続けている。

・第1原則:自発的で開かれた組合員制、・第2原則:組合員による民主的管理、
・第3原則:組合員の経済的参加、・第4原則:自治と自立、
・第5原則:教育・訓練および広報、・第6原則:協同組合間協同、
・第7原則:コミュニティへの関心

ICAは1995年、マンチェスターでの大会で「協同組合のアイデンティティ声明」を採択、「自助、自己責任、民主主義・平等・連帯」を取り上げ、「組合員は正直、公開、社会的責任、他者への配慮という倫理的価値を信条とする」とした。

ICA加盟組織は93カ国247団体。組合員総数は現在、世界全体で10億人を超えている。
毎年7月第1土曜日は「平和とよりよい生活を築くための運動前進を誓い合う日」として「国際協同組合デー」となっている。

また、平和のシンボル「虹」を協同組合旗としている。東日本大震災後の地域生協の果した役割は枚挙にいとまがない。今年2012年は国際協同組合年、生協の社会的存在意義を改めて認識したい。

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小木 紀之(おぎ のりゆき)

小木 紀之
(おぎ のりゆき)


ノートルダム清心女子大学・長崎大学各助教授を経て名古屋経済大学経済学教授。
その間、放送大学客員教授(消費者問題論)歴任。
現在、日本消費者教育学会名誉会長。
名古屋市消費生活審議会長、岐阜県消費生活安定審議会長を務める。
平成24年度 消費者支援功労者表彰(内閣総理大臣表彰)受賞。

 
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