消費者教育推進法制定に寄せて 名古屋経済大学名誉教授 小木 紀之
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最近、注目されてきている戦略的フィランソロピー(SP)について解説しておこう。
これは、競合企業の社会貢献活動との差別化をはかり、競争に打ち勝つ手段として戦略的にフィランソロピーを活用していくことを企図した活動形態をいう。

フィランソロピー活動は今後ますます進化していくものと思われる。
具体例をみてみよう。現在「名古屋パルコ」は、館内でカロリー控えめのヘルシーな食事をすると、アフリカの支援活動に寄付金が贈られる社会貢献プログラムを始めている。

館内レストランでカロリー控えめの食事をするとアフリカの5国(ルワンダ、ウガンダ、エチオピア、マラウィ、タンザニア)の学校給食支援活動に一食あたり20円の寄付金が贈られるというものだ。

また、4月25日に千葉県船橋市にオープンした商業施設「イオンモール」。その特長点は総合クリニック(診療所)を併設していることだ。内科、歯科、整形外科など総合病院並みの13の診療科がそろっている。医師数は非常勤をふくめ約20人。毎日午前9時から午後9時まで受け付ける。

「ショッピングセンター内なら、多くの患者に気軽に来てもらえる」と運営を担う医療法人の弁(朝日新聞経済面4月26日)。消費者が集まるショッピングセンターに総合病院並みの診療科を開設し、買い物と診療、薬の購入を一度に済ませられるようにすることで高齢者層をターゲットにしている。

A生命では、小児がんや難病に苦しむ子どもと家族を支援する総合支援センター「ペアレンツハウス」(東京2棟、大阪1棟の計3棟)を運営している。1人1泊1,000円で宿泊できる。

東京や大阪の病院に長期入院する子の近くで家族が安く滞在できる施設だ。メディカル・ソーシャルワーカーも常駐している。この施設は社員と保険販売代理店の寄付とA生命の資金で運営されている(読売新聞経済面6月5日)。

R銀行は6月20日から死後の手続きや家族に伝えたいことを書き留める「エンディングノート」を遺族に届けるサービスを始めた。

東日本大震災後、「万が一の備え」を記すノートへの社会的関心が高まっており、業界初の試みだという。新商品(信託商品)に50万円以上預けた利用者から、家族や友人への感謝の言葉や、希望する葬儀の形、自分史など書き込めるノートやメッセージ・カードを預かり、死後、指定された受取人に渡す。気軽に自分の気持ちが書き込めることもあり、中高年層を中心に広がりを見せている。

社会貢献活動は「企業市民」宣言をする以上、より公益性、社会性に富んだものとして、位置づけられる必要があるといえよう。

J銀行「新入社員意識調査」では、「あなたにとって会社とは」の回答中、一番多かったのが「収入を得る場」より「社会貢献の場」であった。若者の意識も大きく変化してきている。

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小木 紀之(おぎ のりゆき)

小木 紀之
(おぎ のりゆき)


ノートルダム清心女子大学・長崎大学各助教授を経て名古屋経済大学経済学教授。
その間、放送大学客員教授(消費者問題論)歴任。
現在、日本消費者教育学会名誉会長。
名古屋市消費生活審議会長、岐阜県消費生活安定審議会長を務める。
平成24年度 消費者支援功労者表彰(内閣総理大臣表彰)受賞。

 
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