中国の環境汚染と消費者問題 名古屋経済大学名誉教授 小木 紀之
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中国の環境汚染は極めて深刻な状況にある。新聞の国際面には必ずと言ってよいほどこの問題が取り上げられている。報道内容を見る限り、わが国の高度経済成長時代よりもその実態の深刻さがある。新聞に取り上げられた報道の一部を紹介してみよう。

1月12日 読売国際面「北京大気汚染 超危険」と、昨年以来汚染が深刻化し、1月10日には北京の米国大使館の観測データが測定できないほどの数値を示したと報じた。「大気汚染による視界不良のため、日中でもライトを点灯して走る車」の写真が掲載されていた。

2月26日 中日新聞(東京新聞)国際面「下水溝油、死刑適用も」の記事。食用油の廃油を利用した「下水溝油」と呼ばれる粗悪油を製造・販売し消費者の食への不安が社会問題化しているという実態を受けての公安当局の措置だ。最高刑に死刑適用という厳罰姿勢を示し、国民の信頼や国家イメージの回復を図ろうとする狙いがあるという。

4月17日 中日新聞(東京新聞)特派員報告「有害薬用カプセル製造」は、薬用カプセル剤を作る際に使用するゼラチンカプセルが工業用皮革を原料に製造され、安全基準を超えた重金属のクロムが含まれていることが分かり、国家食品薬品監督局は人体への影響を考慮して、9社が製造するカプセル13種類の販売と使用を禁止する措置をとったという記事内容だ。製造されたカプセルからは最大で基準値の90倍のクロムを検出。公安当局は工業ゼラチンを転用、販売した浙江省の会社責任者らを拘束したとあった。

「人と人」、「人と自然」、「都市と地方」などが調和し、持続的な発展を図る(和諧(わかい)社会の実現)ということは、成長一辺倒からの脱却を目指す胡錦濤政権の政治課題の一つであった。貧富の格差、環境破壊、企業倫理の欠如、行政の腐敗をどう克服するかは軍事大国中国が抱える見通しのきかない内政問題でもある。

中国の問題は上記した一連の環境汚染問題だけではない。国際的な企業倫理につながる問題がクローズアップされてきている。それは「商標侵害」という新たな問題だ。しかも、これは中国一国の問題ではなく、わが国を巻き込んだ難問でもある。

例えば、本年8月に上海での出店を計画しているが、既に「高島屋」の名称が商標登録済みで、高島屋が自社名を使用することが困難な状態にあるという。当然のことながら、高島屋は中国商標局に異議申し立てを行ったが却下されている。

この他にも、日本生産地の米(コメ)、ブランド名、地域名付き牛肉(松阪牛、米沢牛)を手始めにあらゆる分野の商標侵害が起こっている。

これは日本商品の高品質イメージを演出して高価格で国内消費者に売りつけようとする販売戦略だ。商標権売買ビジネスは今後ますます盛んになるものと予測される。とすれば中国市場への進出の如何を問わず先手を打って出願登録をしておくことも企業防衛の一策である(国際情報誌サピオ4月25日号に詳しい)。

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小木 紀之(おぎ のりゆき)

小木 紀之
(おぎ のりゆき)


ノートルダム清心女子大学・長崎大学各助教授を経て名古屋経済大学経済学教授。
その間、放送大学客員教授(消費者問題論)歴任。
現在、日本消費者教育学会名誉会長。
名古屋市消費生活審議会長、岐阜県消費生活安定審議会長を務める。
平成24年度 消費者支援功労者表彰(内閣総理大臣表彰)受賞。

 
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