消費者教育推進法制定に寄せて 名古屋経済大学名誉教授 小木 紀之
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新年度を迎え、消費者教育に関する嬉しいニュースが伝えられた。
かねてからの念願であった「消費者教育推進法案」が通常国会に提出されることになったからだ。

議員立法であるが、こうした法案が制定されることは、極めて画期的なことと言わねばならない。同法は消費者教育を総合的かつ一体的に推進することによって、国民の消費生活の安定及び向上に寄与する目的を持つ。

消費者教育を推進するための法制定の背景には、一連の悪質商法の悪質化、巧妙化が進んでいることが指摘されている。悪質商法などの被害から、消費者自らが生活防衛するための知識の涵養(かんよう)がどうしても必要となる。 いわゆる「消費者力」を身につけるということだ。

今から37年前(1975年)、当時のアメリカ大統領フォードが、消費者の権利として、1962年のケネディ大統領の「消費者の4つの権利」に第5の権利として「消費者教育を受ける権利」声明を出したことは広く知られている。

以来、消費者教育は消費者の権利として位置づけられてきた。と同時に、消費者の権利を持つことは、一方において「責任と自覚」が存在することを消費者に認識させた。

「悪質な商品・サービスを排除し、良質な商品・サービスを選択する責任と自覚」、「製品欠陥を指摘し、企業責任を問う責任と自覚」、「不必要な浪費をしない責任と自覚」等とその責任と自覚は重い。
消費者問題の深刻化、多様化はますますその責任と自覚が希求される。

消費者の権利の実現を目指す消費者教育は「生産者と消費者間の力関係をバランスあるものとし、より活動的で啓発された市民を生み出すこと」にフォーカスされる。
そして「政策プロセスの役割を理解し、個人的、集団的行動を通して公共政策に影響を与えていく」、つまり社会的意思決定が出来る消費者力を持つ、「消費者市民の育成」こそが権利実現を目指す消費者教育の狙いでもあるのだ。

前述した「消費者教育推進法案」では、その基本理念として、「消費者教育は消費生活に関する知識を習得し、これを適切な行動に結びつけることができる実践的な能力が育まれることを旨として行われなければならないこと」、「消費者教育は、消費者が消費者市民社会を構成する一員として主体的に消費者市民社会の形成に参画し、その発展に寄与することができるよう、その育成を積極的に支援することを旨として行われなければならない」等が掲げられている。

消費者被害にあわないための教育にとどまらず、消費者市民社会の一員として行動できる消費者の育成を目指すことも同法案の特色でもある。
エッセイ連載にあたり出来るだけホットな内容をお届けしたいと思っている。


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小木 紀之(おぎ のりゆき)

小木 紀之
(おぎ のりゆき)


ノートルダム清心女子大学・長崎大学各助教授を経て名古屋経済大学経済学教授。
その間、放送大学客員教授(消費者問題論)歴任。
現在、日本消費者教育学会名誉会長。
名古屋市消費生活審議会長、岐阜県消費生活安定審議会長を務める。

 
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