「告知の意味を知ろう」― 告知義務違反による契約解除について、告知の大切さ ― 財団法人 消費科学センター 理事 犬伏 由利子
文字サイズ変更大中小閉じる

「告知」という行為を私たちが行うことは保険加入時以外にあるのでしょうか?受胎告知に始まって破産告知・がん告知など告げ知らされることはあっても、こちらから誰かに「告げ知らせる」などということはそうそうあるものではなく、日常の生活のなかではあまり馴染みのない行為と言えるのではないでしょうか。

一般的に告知とは、私たちにとってはあくまでも「告げられる」という受け身の行為であって、「知らせる」という能動的行為として意識されてはいないように思います。そのせいか、「保険には加入していたのにいざ蓋を開けたら告知義務違反として支払われなかった」とか契約解除になったという話を耳にします。

生命保険における「告知」とは、同性同年代では、統計的に死亡リスクや罹病リスクを同程度として掛け金の設定がされているので、加入前に既に何かの病気に罹った事実があると罹患率は高くなることが多いことから、そうした人を無差別に加入させてしまうと健康な人にとって割高な保険料を支払うことになって公平感覚に齟齬をきたすことになるため、大体(1)3ケ月以内に医師の診察を受けたか、(2)過去2年以内の健康診断で異常はなかったか、(3)過去5年以内で7日以上の治療の有無、(4)障害の有無、といったことが聞かれるようです。

こうした質問にまじめに事実をしっかりと思い出して回答することを「告知」と言うようです。こうした告知は契約締結に欠かせない手続きなのですが、加入してから入院や通院といった保険事故が起きるのは大分時間が経ってからのことが多く、加入時に何を聞かれ、なんと答えたかを忘れてしまう場合も多く、後々の言った言わないの苦情に繋がっているようです。

折角自助の思いから、また家族への思いやりなどから加入していたのに事故が起きたら告知義務違反として契約解除になるというのはあまりに残念なことと言えます。

さらに例え一時(いっとき)ではあっても、敢えて故意に違反するモラル違反者ではないかという疑惑の目で見られる訳でもありますから注意が必要なことと言えます。

鼻風邪を引いて耳鼻科で風邪薬を7日分処方されたことがあったとしたら、例えその薬を3日間しか飲まずに治ってしまったとしても7日以上の治療を受けたと、カルテの上には記録される訳で、その事実を告知することなく加入した後、1年足らずの内に耳鼻科の病で入院その他の治療を受けると、耳鼻科の診断書には加入前の処方が出てきますし、風邪と思っていたものがカルテの上では副鼻腔炎等といった病名が書かれ、立派に告知違反ということになってしまいます。

現在は例え持病があっても保険料を少し高くするとか、その病気だけは保険対象から除外するとか色々な手だてを考えてくれるようですので、なにより正直に事実をしっかり思い出して伝えることが必要なことのようです。

プロフィール

犬伏 由利子(いぬぶし ゆりこ)

犬伏 由利子(いぬぶし ゆりこ)
1991年から消費科学連合会副会長。

同年から(財)消費科学センター理事。

消費科学センターの「消費者大学講座」などを通し、

考える消費者、科学する消費者を育成する努力を続けている。

Back Number バックナンバー
2012年1月掲載
「お互いさまの保険」
 
閉じる
発行/(公財)生命保険文化センター Web Design/Ideal Design Inc.