「お互いさまの保険」 財団法人 消費科学センター 理事 犬伏 由利子
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昨2011年は、東日本大震災という大きな天災に見舞われ、加えて人が作り出した「科学」の結集とも言える原子力発電の制御が津波の力に及ばなかったために、単なるエネルギーの枯渇に留まらず農産物や水そして子供たちの健康等に様々な不安を国内のみならず海外へまでも広げてしまいました。

自然の力が人に及ぼす影響、天災の威力を改めて思い知らされた年でした。


また、全国民がその被害の膨大さに茫然自失の状態に陥った天災ではありましたがその中で、他人を思いやる国民性、秩序を尊ぶ国民性を海外から高く評価された年でもありました。


早いもので、あれから10カ月経とうとしています。まだまだ被災地では落ち着かない日々を過ごされている方も多くおられ、遠く離れた私たちにも貧者の一灯ではありますが何か出来ることがあればと目も耳も精一杯開いている毎日です。


日頃、私たちは自助として保険に加入し、月々何がしかの金額を専門家に預け運用してもらうことで、もしもの時の経済的負担を少しでも軽減しようと努力しています。また、怪我一つ、入院一つすることなく満期を迎えた人には、かつての郵便定額預金のような金利が付いてくるということはありませんけれど、「西に病の母あれば」と、どこかで誰かのお役に立ったことを思って、ただ感謝の思いを持つと思います。


この自助・互助の保険会社が、あの3月の被災に対して、いち早く現地入りをしたという話を聞き、さすが保険会社と感銘を受けたことではありました。

それも個々の会社が個々に「我此処にあり」というのではなく、家族がかけていたのかいないのかも分からない人の問い合わせを業界が一丸となって受け付け、自社の該当調査と同時に他社へも照会するという手際のよさを示されたようです。

 

宅配の元祖ともいえるあの郵便配達さえも転居先不明という扱いしか出来なかった時に、地域々々の出張所や支社の職員の方達が、手間暇をかけて一人一人の安否をたずね探し出す努力を重ね、数カ月の内に9割以上の方の安否を調べ、可能な限り簡略化しスピードをあげて支払を実行したという話に、さすが民間と感動したものでした。


復興するにも、再起を図るにも、まずは住み慣れた土地でと願うのは極当たり前のことのように思います。が、そう言える基本は、向こう三軒両隣、遠くの親戚より近くの他人と言える、その地元への日頃の愛着、慈しみあってのことでしょう。


小さな灯一つ持たない私でも「保険」というシステムを通すことで、他を思いやる、お互いさまの思いを形にできるということをもっと広めていきたいものです。

プロフィール 犬伏 由利子(いぬぶし ゆりこ)

犬伏 由利子(いぬぶし ゆりこ)
1991年から消費科学連合会副会長。

同年から(財)消費科学センター理事。消費科学センターの「消費者大学講座」などを通し、

考える消費者、科学する消費者を育成する努力を続けている。 

 
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