雄飛へ期待 主婦連合会 事務局長 佐野 真理子
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今年の流行語大賞は「なでしこジャパン」。世界一になった日本のなでしこの活躍に、東日本大震災からの復興や、経済沈滞からの脱却へ向けた気概が重なります。

では、消費生活の中ではどんな言葉が話題になったでしょうか。「ベクレル」「ホットスポット」「出荷停止」「ユッケ」「茶のしずく」「TPP」「消費税」・・・。
深刻な事件や今後の生活を大きく左右する文言ばかりです。

実際、東日本大震災によって消費生活が一変した、そのことへの言葉にできない不安感は巷にあふれかえりました。被災者の嘆きや憤り、見えない放射能への恐怖、これまでの生活の何がどのように変ったのか、人それぞれに思いが異なることが事態の深刻さを物語っています。

このような不安感、緊張感は、本来は非日常的なことのはずです。異常事態から日本は早晩、復興を遂げ、日常生活に戻れると多くの人が確信してきました。その希望は失われることはありません。

しかし、それでもなお、どうしても飲み込めない、心の重圧を感じるのも事実でしょう。それが今後数10年にもわたる放射能汚染の問題です。
事故がまだ収束されていない現実はとても重たいものがあります。

福島県では、県外への避難民が約6万人もいらっしゃいます。子どもたちを他県の親戚の家へ疎開させているご家庭もたくさんあります。
一家離散の状態がいつまで続くのか、避難できないまま現地にとどまり、懸命に生業を模索されている方もたくさんいらっしゃいます。

その心配は被災県のご家族だけではありません。高い濃度で放射性物質が検出される「ホットスポット」は全国に点在しています。食品汚染は大丈夫か、お茶は、飲料は、お米は・・・と考えるときりがありません。これこそが原発事故の実態であると気づかされるにはあまりにも大きな犠牲が払われました。

今年は2年前にスタートした新しい消費者行政の真価が問われた年でもあります。
事業者寄りの軸足を消費者の権利を尊重する「消費者目線」へと移す。消費者行政の司令塔として消費者庁がどう威力を発揮したのか。

それは事業者の消費者対応がどう改善されたのか、という問題でもあります。
国民生活センターが12月にまとめた今年の「国民動向調査」によると、消費者被害にあった消費者のうち、4割強がどこにも相談せずに泣き寝入りを強いられていることがわかりました。消費生活センターに相談する消費者は3.6%に過ぎないことも判明しました。

1件の相談の背後に27件の不満や被害が潜在化しているのです。全国の消費生活センターへの相談件数が約90万件ですので、単純計算でも潜在苦情は2,430万件になります。この相談は生活に関連するすべての業界にわたるものです。

確かな展望が持てない、不安感が頂点に達している、そのようなぎりぎりの生活環境の中にあって、なお消費者は希望を失いません。保険業界にはこの希望に応えるべくかつてない大きな課題が提起された年ではなかったでしょうか。

来年は辰年。すべての人が雄飛できる環境整備を消費者・事業者・行政が「消費者目線」で取り組める年にしたいものです。

プロフィール 佐野 真理子(さの まりこ)

佐野 真理子(さの まりこ)
東京生まれ。
スペインに14年間滞在。
帰国後、1988年に主婦連合会事務局に入局。
事務局次長を経て、2003年に事務局長に就任〜現在に至る。

 
 
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