取り戻そう「みずほの国」 主婦連合会 事務局長 佐野 真理子
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東日本大震災と福島原子力発電所事故。復興対策は遅れ、原発事故は依然として収束されていません。国際社会では、ギリシャ、イタリア、EU、金融危機、失業率上昇など、暗たんとした時代を示すキーワードが次々と登場しています。

今年はとてつもない試練の年として歴史に名を留めるでしょう。しかも、その試練はまだ入り口に過ぎません。将来への不安感が解消されないどころか、日々、増しています。となれば、消費行動には今後も長期間、慎重さが伴います。

消費者問題は身近な生活問題に端を発し、その影響は地域から全国へと拡大し、対応を誤ると取りかえしのつかない事態を招きます。

一つの例がTPP(環太平洋経済連携協定)。関税や非関税障壁の撤廃をめざす24分野にわたるTPPは、参加よりも非参加による消費者利益の方が大きいとの試算があります。TPP参加は「亡国への道」との指摘もあり、市場経済万能主義やグローバリズムへの負の軽視、その懸念も主張されています。しかし、最も重要なのは、国論まっぷたつの問題に対し、「はじめにTPP参加ありき」の議論が多かったことです。

同じ例が「消費税10%」への引き上げです。11月上旬に開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議で「国際公約」になったと報道されましたが、国内での意見が十分反映されていない中での政府声明。今後、多くの反発と混乱を生むことは確実でしょう。

「消費者目線」が謳われ、それを政策に体言すべく消費者庁が設置されて2年。消費者行政の分野では次第にその重要性が認識されつつも、他省庁の消費者関連政策は依然として、縦割り、産業育成に軸足が置かれています。

本来、それらを調整する司令塔の機能が消費者庁に付与されたはずなのに、なかなか発揮されません。東日本大震災に伴う放射性物質の拡大汚染に対しても、管轄省庁による縦割り対応で消費者が右往左往しているのが実態です。被災者救援や復興が遅れがちなのは、未曾有の大震災による被災規模の大きさだけではなく、省庁間の連携、協力、政治と行政との連動がうまくいっていないことも背景にあるのだと思います。

晩秋、地方の寒村の秋祭りに参加しました。五穀豊穣、家内安全を祈って毎年開催されているものです。福島原発から遠いにもかかわらず、多くの村民は子どもたちに与える秋の山菜、キノコの放射線量を気にしていました。検査体制も不備のまま、全国津々浦々、消費者目線からの情報が圧倒的に不足しています。

「みずほの国」に似つかわしい消費生活を復権するには、消費者に寄り添う施策の実施が本当に求められています。そして問われているのは政治や行政だけではないところに現在の深刻さがあるのです。

プロフィール 佐野 真理子(さの まりこ)

佐野 真理子(さの まりこ)
東京生まれ。
スペインに14年間滞在。
帰国後、1988年に主婦連合会事務局に入局。
事務局次長を経て、2003年に事務局長に就任〜現在に至る。

 
 
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