仏作ったら、魂も入れよう 主婦連合会 事務局長 佐野 真理子
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消費者行政の司令塔「消費者庁」。その監視役となる「消費者委員会」。2つの機関が発足して3年目。私は消費者委員会で、1期目の委員をこの8月まで2年間務めました。新たな「制度」の重要性、それを担う「人」の大切さを痛感しました。

制度は「人」との関係でこそ語られるべき、と思います。ある制度ができると、その制度に合わせるように、人が動き、物事が成る。これまでなかった新しい制度であれば定着には紆余曲折があり、時間もかかります。途中で人々に熱意、主体性が欠けてしまうと、制度の定着は未来永劫、実現しません。

「仏作って魂入れず」。その見極めはどこにあり、何を基準に考えるか。重要な制度であればあるほど「人」の行動が大きな要件になると思わざるを得ない例が散見しました。
この「人」とは誰か。

「制度」を「ルール」や「しきたり」に置き換えると状況は明確になります。世の中のほとんどの「ルール」は、その地域・社会に必要性が生じ、その地域・社会の構成員に合理的と思われる方法で決定され、コンセンサスを得る中で普遍化されてきました。その過程は実践の積み重ねです。

「消費者の権利」についても、「消費者基本法」に明記されているだけでは不十分で、権利が実現・定着するには、それを保証する多くの制度に関する制定・改善への働きかけ、実践が前提となります。
担うのは消費者一人ひとりです。制度を支える「人」とは消費者一人ひとりのことであり、新しい消費者行政にあっても、それを監視する消費者の熱意・主体性がかなめとなります。

NHKドラマ「ラストマネー」が人気のようです。消費生活に必須となった生命保険の制度。この制度を担う人は誰か。それは契約者です。愛がお金で測れないように、人の生命はマネーでは測れません。しかし、それを可能とすることを前提に生命保険の制度は定着してきました。
保険金支払いが愛の実践として生かされることもある、とする主張は現実世界ではインパクトがあります。

このドラマはその査定人の悲哀・苦労を通し、生命保険の本質に迫ろうとしている点で制度のもう一人の維持者である「人」の顔もかいま見ることができます。それを通し、視聴者には「契約者の権利」「消費者の権利」の実現にはまだまだ課題が多いことも示唆しています。

人が幸せになる制度創りには、それにかかわる「人」の姿勢が大きいと思います。より良い制度にするためには、事業者・行政だけではなく、モノ言う消費者、行動する消費者の存在が重要です。生命保険業界も、新しい消費者行政機関も、その認識を再確認することに謙虚であって欲しいと思います。

プロフィール 佐野 真理子(さの まりこ)

佐野 真理子(さの まりこ)
東京生まれ。
スペインに14年間滞在。
帰国後、1988年に主婦連合会事務局に入局。
事務局次長を経て、2003年に事務局長に就任〜現在に至る。

 
 
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