リスク管理教育に思うこと 社団法人 全国消費生活相談員協会  参与 原 まさ代
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大学で家庭経営に関する科目を担当しています。
その中で生活設計を考える基礎資料にして欲しいと、学生に生命保険や損害保険の仕組みを話します。

「最初の生命保険はロンドンのセントポール寺院で牧師さんたちが作った香典前払い組合です。いいことを思いついたでしょう。」

「それからどうなったでしょうか。この組合は長くは続かなかったのですが、何でだと思いますか。」

「損害保険は大航海時代に船の難破や海賊に襲われたりするリスクに対応するために出来た仕組みなのです。ベニスの商人は知っているでしょう。損害保険会社には○○海上という名前の会社があるでしょう。」といった話をするのです。

保険の歴史を話すと、とても分かりやすく保険制度が説明できます。ところが面白がっているのは講師だけで、学生はどうも興味がなさそうで退屈そうなのです。無理もない、ベニスの商人も知らないし、花の21歳、前途洋々、厳しい就職戦線への参戦もまだだし、人生のリスクなんて現実のものとしては考えられないのでしょう。

車で実習先に通う学生に「車の任意保険の保険証券のコピーを提出しなさい。」というと自賠責保険証を持ってくるのはいい方で、生命保険証券、おじいちゃんの健康保険証(車の名義がおじいちゃんらしい)などいろいろ持ってくるという話を聞きました。笑い話ではないのです。

高校までに、社会保障やそれを補完する私的保険について学ぶ機会は少ないし、学んだとしても身についていないのかも知れません。保険について知らないので、就職して勧められるままに、あまり考えずに保険に加入している若者もいます。

リスクを怖れるあまり必要以上の保険に加入したり、ゆとりがあり保険などなくてもその時々に十分対応できるのにさらに保険で備えていたり、反対に経済的理由で保険に加入できず、無保険のまま何かが起きてますます困窮してしまうなどの例があります。

そういう私も自分のこととなると、子どもたちも独立したのに家族型の特約に入っていたり、貯蓄を目的に一時払いの保険に入って、だんだん利回りが下がっているのに満期になるとまた続けていたり、忙しさにかまけて保険のメンテナンスはなおざりになっています。そろそろセカンドライフをどう生きるかを考えつつ、保険の見直しもしなければと思っているこの頃です。

プロフィール 原 まさ代(はら まさよ)

原 まさ代(はら まさよ)
消費生活専門相談員 消費生活アドバイザー AFP
(社)全国消費生活相談員協会参与、佐賀県消費生活センター相談員
佐賀県金融広報アドバイザー、西九州大学非常勤講師

 
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