文字サイズ変更フォントサイズ大フォントサイズ中フォントサイズ小閉じる
第1回 キャリア教育としての「消費者問題」−就職支援の視点から−愛知みずほ大学 伊藤 由美子[いとうゆみこ]

『先生!今日の午後に面接が入っちゃって・・・・、どうしよう。・・・なに聞かれるかな・・・』と、飛び込んでくる学生との会話はこうして始まる。

最近の大学の話題としては、就職が非常に厳しいこと。そしてキャリア教育の導入が規定されたことであろうか。いわゆる、大学設置基準の改正により「社会的および職業的自立を図るために必要な能力を養うための体制づくり」が本格化してきたのである。初等中等教育から高等教育までのすべての教育段階において、いわゆるキャリア教育が導入されることとなった。しかし、学生に対して直接的な就職支援をおこなっている部署からすると、キャリア教育の導入により即就職に結びつき内定率アップにつながるとは考えにくいと思う。

その理由(1)としては、教育効果があらわれるには時間がかかること。
その理由(2)としては、教育効果のあらわれ方が一定でないこと。
などが挙げられるのである。しかし、就職支援はきわめて現実的な支援にならざるを得ない。
就職支援担当部署には、内定率という成績目標が常に存在するし、学生は就職内定を獲得するために就職支援担当部署を頼るのである。そのような関係において、これまで3者はうまく連動できてきたのである。

大学における「消費者問題」という科目は、その関係において、うまく馴染んできたといえる。10年以上前になるが、就職活動学生をターゲットにした資格商法が問題となったことがあった。普通自動車免許以外の資格を持たない学生を対象に、就職活動で有利となるパソコン資格の取得を促すというものであった。講座受講料やパソコン機器を含めて50万円(割賦販売)が必要というものである。
筆者自身も、被害者である学生と共に、クーリングオフを実行するために内容証明郵便を作成するという対応をした記憶がある。その後も、様々な就職活動生をターゲットとした「消費者問題」が起こったが、3者の利害が1つであったからこそ、うまく対処することが可能であった。まさしく筆者が担当してきた「消費者問題」は、待ったなしの現実的課題としての授業であったし、就職支援とうまく連動することができたのである。

さて、2004年の消費者基本法の改正は、自立する消費者の育成を主眼としたものであった。筆者なりに言い換えれば「自ら考え行動し、他者との関係において自立した社会人となる」ということであろう。その中で、もっとも重要なポイントは「他者との関係」ということである。キャリア教育は、これまで「職業観」や「勤労観」等の醸成という文脈の中で論じられてきた。したがって、職業に対する適性や自己理解の欠如が問題視される傾向にあった。振り返ってみると、そこには他者との関係があまり感じられないのである。就職活動は、他者との関係の中で行われるものである。職業社会は、他者との関係において成り立っているはずである。そう考えると、「消費者問題」という科目は、まさしく他者との関係を直視するキャリア教育科目なのかもしれない。

伊藤 由美子[いとうゆみこ]さん

伊藤 由美子
[いとうゆみこ]

愛知みずほ大学 人間科学部専任講師

学校卒業後幾つかの企業転職を重ね、1997年10月愛知みずほ大学就職指導室へ入職、学生支援を続けながら、後2001年4月より人間科学部専任講師として講義を行なっている。

閉じる
発行/(財)生命保険文化センター Web Design/Ideal Design Inc.