文字サイズ変更フォントサイズ大フォントサイズ中フォントサイズ小閉じる
第3回 消費者の社会的責任と消費者教育財団法人消費者教育支援センター主任研究員 柿野成美[かきのしげみ]

突然ですが、ここでクイズです。次のうち正しい選択肢をひとつ選んでください。
(1)偽ブランド商品は、ニセモノであることを明示して売られていれば問題はない。
(2)偽ブランド商品は、本物より価格が安く設定されていれば問題はない。
(3)偽ブランド商品は、本物そっくりに作られていれば問題はない。
(4)偽ブランド商品は、持っているだけで犯罪に加担している。

この問題の正解は(4)です。以前からこのクイズを出し続けていますが、正答率はいまだに50%を超えておらず、選択肢は(1)と(4)に二分される傾向にあると感じています。

私がこのようなクイズを出す理由は、消費者教育の内容が「消費者被害に遭わない」ことに加えて、消費者の社会的責任(CSR: Consumer Social Responsibility)について考えさせることが重要だと思うからです。最近では、社会的責任投資(SRI)、社会的責任消費(SRC)も広がりを見せつつあり、消費者の日々の選択が責任ある「投票」であり、何を選択するかによって社会の在り方を左右することに気づき、行動することの重要性が広く認識され始めています。

冒頭の問題で言えば、偽ブランド商品など知的財産権を侵害する物品の購入は、自分が満足し納得していれば、誰にも迷惑をかけないので問題ないと考える人もいます。しかし、偽ブランド商品そのものは商標権を侵害した違法商品です。今のところ消費者は持っているだけで直ちに罰せられませんが、これらの購入によって、製造に関係している暴力団やマフィアに対し、日本の消費者が資金提供していると言われても仕方がない状況です。消費者は「買わない、持たない、持ち込まない」ことが鉄則です。

では今後、私たち消費者はどのような社会を展望し、選択を行えば良いのでしょうか? 平成20年版の「国民生活白書」では、「消費者市民社会への展望―ゆとりと成熟した社会構築に向けて」というサブタイトルのもと、「消費者」をキーワードに詳細な分析がなされています。そこでは、欧米で生まれた「消費者市民社会(Consumer Citizenship)」の考え方がこれからの社会像として紹介されています。

消費者市民社会とは、個人が消費者・生活者としての役割において、社会問題、多様性、世界情勢、将来世代の状況などを考慮することによって、社会の発展と改善に積極的に参加する社会であり、そこで期待される消費者・生活者像は、自分自身の個人的ニーズと幸福を求めるとしても、消費者や社会生活、政策形成過程などを通じて地球、世界、国、地域、そして家族の幸せを実現すべく、社会の主役として活躍する人々であると定義されています。

消費者市民社会において消費者は、環境配慮型の商品、フードマイレージの少ない商品(地産地消)、フェアトレード商品など、個人の利益だけでなく社会全体の利益を配慮した選択が求められていると言えるでしょう。また消費行動に限らず、エッセイ第1回で紹介させていただいた高齢者の消費者被害を防ぐための見守り活動のように、一人ひとりがやさしい眼差しをもって消費者市民として他と連帯し、よりよい社会形成に参画していくことが重要だと思います。今後は、このような幅広い視点から消費者教育の在り方について多くの方々と意見交換し、情報を発信していければと思っています。

最後になりましたが、このような機会を与えてくださったこと、またお付き合いくださった皆様方に心から御礼申し上げます。ご意見ご感想などお聞かせいただければ幸甚です。

柿野成美[かきのしげみ]さん

柿野成美
[かきのしげみ]

財団法人消費者教育支援センター主任研究員

静岡大学教育学部卒業、お茶の水女子大学大学院修了後、平成10年より財団法人消費者教育支援センターに勤務。 これまで中央省庁や地方自治体等の教材作成や調査報告書、大学の非常勤講師、高等学校家庭科、中学校の技術家庭科の検定教科書などに従事。 学校や地域における消費者教育の普及を目指して、全国各地に講師として出向いている。

閉じる
発行/(財)生命保険文化センター Web Design/Ideal Design Inc.