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第2回 出張の楽しみ財団法人消費者教育支援センター主任研究員 柿野成美[かきのしげみ]

夏は教員を対象とした消費者教育の研修会が全国各地で開催されています。私も講師として出向き、消費者教育の教材紹介や指導方法などをお伝えしています。研修会の参加者は家庭科の先生方がほとんどですが、最近では新学習指導要領の重要項目として、消費者に関する学習内容を充実するよう示されていることもあって、改めて関心が高まっているようです。

8月上旬の猛暑日、私は真新しい香りがする徳島阿波おどり空港におり立ちました。研修会の講師として徳島入りするのはこれで3度目。東京から離れると、食いしん坊の私は現地の美味しいものを食べることを楽しみにしていますが(空港で徳島ラーメンを食べ、和三盆の小さなお菓子をお土産にしました。)、それと同じくらい研修会に参加する先生方との出会いが楽しみになっています。

空港からは、車で20分ほど走ったところにある徳島県立総合教育センターに向かいました。ここは各都道府県等にある教員のための研修施設です。この日もたくさんの研修が行われている中の一つとして、徳島県消費者情報センターと連携した講座が企画されていました。対象は教員経験10年目の先生方。このような研修は全国的に見ても珍しいと思います。

研修は1日のカリキュラムで、私は「身近に潜む多重債務の罠―社会に出る前に知っておきたいお金の話」と題して、演習を交えて午後2時間ほどお話をさせていただきました。多重債務は貸金業法が改正され消費者保護のルールとなりましたが、依然として深刻な問題であることに変わりありません。高等学校家庭科や生徒指導の話題として、また先生ご自身の生活を振り返った時、決して無視できない問題だと考え、テーマに設定しました。

「30万円を年利18%で借りて月1万円ずつ返済する場合、最終的な利息支払い分はいくらになるでしょうか?」

このように質問しても、すぐに答えられる人はまずいません。実際には、3年5カ月(41カ月)で10万円以上の利息を支払うことになります。講義では、平成20年に金融庁の委託で作った多重債務問題の映像教材(はじめての金融ガイド 金融取引の基礎知識〜トラブル予防のために〜DVD版「多重債務に陥らないために」)を使って、映像を一旦停止しながら、問いかけに応じてワークシートを使って考えるようにしました。このDVDでは、お金を借りることは簡単ですが、生活費に借金が組み込まれていると貯蓄ができず、その先の生活設計もできない、ということをメッセージの一つとしています。これを理解するためには、学校ではほとんど教えられていない金利の計算方法を学び、金利負担の大きさを実感できるように配慮しています。

私が講師を務める研修会では、参加した先生方が考えたり話し合ったりする時間を重視しています。これは、学校における消費者教育の指導方法もそうであってほしいという願いからです。しかしこの参加型の学習方法は時間がかかり、学習時間の確保が難しいという現実もあります。とても大きな問題ですが、これからも研修に参加してくださる先生方に会えることを楽しみに、先生方の先にいるたくさんの子ども達が生き生きと活動する姿を思い描いて教材を開発し、全国に発信していければと思っています。

柿野成美[かきのしげみ]さん

柿野成美
[かきのしげみ]

財団法人消費者教育支援センター主任研究員

静岡大学教育学部卒業、お茶の水女子大学大学院修了後、平成10年より財団法人消費者教育支援センターに勤務。 これまで中央省庁や地方自治体等の教材作成や調査報告書、大学の非常勤講師、高等学校家庭科、中学校の技術家庭科の検定教科書などに従事。 学校や地域における消費者教育の普及を目指して、全国各地に講師として出向いている。

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