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第6回 80年前の生命保険をすすめる標語
流通科学大学商学部教授 田村祐一郎[たむら・ゆういちろう]

いまからちょうど80年前、昭和4年の『保険日日通信』という保険業界紙に、ある生命保険会社が募集した「生命保険思想を鼓吹する標語」の入選作品がのっている。応募総数3,871通。最優秀作品1通、優秀作品5通、選外佳作15通。

まず、優秀作品5通を紹介しよう。賞金は「貯蓄債券10円」である。当時は男性整髪料が50銭位である。くり返し読んでみると、なるほどと思われるであろう。
「増す健康に増す保険」
「妻の節倹、夫の保険」
「保険へ入るが我家の家憲」  「増える保険に減る苦労」  「生命保険は恒産なり」

選外佳作の賞品は「革製紙入」、つまり財布である。いくつか紹介しよう。
「愛する一生まかせる保険」  「平和な家庭に保険の武装あり」  「主人は柱、保険は土台」  
「義理と保険は欠かされぬ」
どの句も保険の意義をきまじめに唱えている。このほかに選外佳作にはおもしろい作品がある。
「保険証書見てから娘やりましょう」
アメリカの花婿は結婚指輪とともに生命保険証券を渡し、花嫁への責任と愛情を誇示するときかされたことがある。ふとそれを思い出した。
「夫婦のからだに保険をつけて可愛い坊やに取らせたい」
なるほど気持ちはわかる、うーん、でも、やっぱり親心ですかねえ。
「保険に勝る胃酸なし」
「胃酸」は胃薬である。明治12年から売られ、このころだと1日分3銭位である。たしかに保険に入るとホッと安心して胃薬もいらなくなるのであろう。
「保険ある身に不安なし」という句も入選していた。
「からだ太れば保険も太る」
なかなかおもしろい。「からだ太れば」はお腹がでっぱることで、いまならメタボといわれる。かつては出世を意味したから、収入もふえて保険金をましたのかもしれない。

さて、最優秀作品である。賞金は「復興債券50円」。小学校教員の初任給に相当した。
「明るき家に保険あり」

なんの変哲もない句に見える。が、よく読むと味がある。経済的にも家族の結びつきの面でもトラブルのない「明るい」家庭にこそ保険はにあう。家庭の明るさのシンボルこそ生命保険ではないか、筆者はそう思ってきたから、はからずも80年をへだてて選者と意見が同じであることを知ってとてもうれしく思ったものである。

プロフィール
田村祐一郎[たむら・ゆういちろう]氏

田村祐一郎
[たむら・ゆういちろう]氏

流通科学大学商学部教授

専攻分野
保険;リスク・マネジメント

学歴
昭和42年、神戸大学大学院経営学研究科商学専攻修士課程修了、平成2年、商学博士(神戸大学)。

職歴・経歴
昭和42年小樽商科大学講師、46年助教授、49年長崎大学助教授、58年教授、平成元年姫路独協大学教授を経て、11年流通科学大学商学部教授、現在に至る。
著書
「生活と保険―生活保障システムにおける生命保険」
「社会と保険―社会・文化比較の鏡としての保険」等多数
訳書
モートン・ケラー「生命保険会社と企業権力」等

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