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若い独身女性を前にしたとき、私はよく女性が元気になるためには「仕事、お金、恋愛があれば大丈夫よ」なんていう言い方をします。自分を支えてくれる3大要素ですね。もちろんその3つがすべてが揃っている人は少ないけれども、そのうちの何か一つでも、自分が欲するものから獲得していく。そのプロセスが女の人を元気にするんだと思います。これはきっと、男性の場合でも「仕事、お金、家庭」などと言い換えれば、当てはまるんじゃないでしょうか。
で、私の場合の3要素の現状がどうなっているかですね。まずは仕事について。
いま、マンガだけでも、連載は週刊で5本、隔週で2本、月刊で2本ぐらいあります。仕事はたしかに忙しく、肉体的にきついときもあるんだけれど、仕事をすること自体が楽しくて、それがストレス解消にもなっているという、うまい循環が働いています。むちゃくちゃ走りながら、それが同時に発電機にもなっているという構造。だから私の場合は、充電期間とか特別な余暇は必要ないんですね。 |
仕事の何が楽しいかというと、毎日新鮮な出会いがあるから。マンガの取材もそうだし、今日みたいなインタビューもそうだし、テレビ出演などをすると、ほんとたくさんの人に出会います。人に会えばたしかにエネルギーも消耗するけれど、同時に元気にもなれる。
とりわけ相性のよい人、私が興味の惹かれる人に出会うと、すごいパワーをもらえる。もともと人と会うことが私、大好きなんです。たとえば、その人が提示してくれた新しい問題を一緒に考えたりするのが好き。だから、今の仕事は、ほんとに天職だと思いますね。
そういう意味では仕事のストレスはあまりないけれど、唯一の問題は、マンガのネームを考えたり、文章を書いたりするとき、ついつい食べ過ぎちゃうこと。食べることを我慢できないタチなんですよ。今日は食べ過ぎたなというときは、夜にウォーキングしています。ガシガシ、汗かきながら、1時間ぐらい早足で(笑)。 |
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くらたまの元気の素の二つめは恋愛。というか、仕事、お金、恋愛の三本柱でいうと、恋愛がいちばん私に喜びを与えてくれるものですね。この数年、ずっといい感じですよ。恋愛をしているとき、ドーパミンみたいなのがどぉーと出る。その甘美さは仕事やお金では絶対に味わえないもの。
私の場合、一緒にいてくれていろいろ気を遣ってくれる男性より、すごく面白い話をしてくれたり、ドキドキさせてくれたり、刺激を分け合う関係のほうがいい。癒しよりも刺激系。だからそんなに長く会わなくても大丈夫だし、一緒に生活するということは今はあまり考えていません。
もちろん男女の長いつきあいのなかで、刺激を持続させるのは難しい。工夫が必要です。たとえば、会いすぎないというのも刺激を持続させる秘訣。男女って燃え上がっているときは毎日会いたくなるもの。でも、そこをあえて遠ざかるアプローチというのかな。その工夫を今もいろいろ模索中で、有効な方法があったら、それを世の中の人にも提案していきたいですね。 |
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「長く会わないと不安になっちゃう」という人もいるけれど、それは、相手のことをまだ把握していない証拠ですね。自分が見ていないときの、相手の心理状況や行動を想像することができなければ、たしかに不安になります。でも、私の場合は私と会っていないときの彼が、何を考えているか、何をしているかだいたい想像がつきますから。だから安心。
久しぶりに会えるとき、どんな話をしようかっていつもシミュレーションしている。そのときがとても楽しいですね。 |
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三つめはお金ですけれど、お金ほど、人さまざまに価値観が違うものもありません。
『だめんず・うぉ〜か〜』の取材でたくさんの女性に会ってきましたが、「お金のない男とつきあうぐらいなら、お金があって殴るぐらいの男とつき合う方がまだましよ」って言う人がいてびっくりしたことがあります。その人の論理がふるっていて、「殴られてついた傷は治るけれど、お金がないのは治らないじゃないですか」っていうんですよね。へぇ〜と思わず感心しちゃいました。それに対して「そんなの愛じゃないっ」とか諭す人もいますけれど、そうかなって。その人にとってそれは真実だと思うんですよね。
そういう人はお金のある人といるのが幸せなのだから、そういう人を探せばいいと思う。お金を基準にすれば、男の見分け方がわかりやすくなるという利点もあるわけで。少なくとも「優しさ」みたいな曖昧な基準より、お金のあるなしは外からもわかりやすいですから。 |
つまり、大事なのは自分にとって最優先したい価値は何かを知っておくことなんですよ。それに気づかないでいると、けっこうきついことになる。ほんとはお金が一番の価値なのに、「優しい人だから」なんてついふらふらと貧乏な人とつき合っちゃうと、いつまでも不満のままなんですよ、その人は。
自分にとっての人生のプライオリティを自分で知らない人が、いま多いなって気がします。たしかに若いときはそれがなかなかわからないものだけれど、でもね、もう若くない人でも、案外「自分の好きなもの」を知らない人って多いんですよ。
それはともあれ、私の金銭観といえば、大切なものだけれど、プライオリティは3つの中では一番下ですね。お金が好きな人の多くは、それを使うことが好きなんですよ、きっと。でも、私はお金を使うことがあまり好きじゃないみたい。たとえばブランドもののバッグを買うことに血湧き肉躍らない。そういうのって、あまり私にとって気持ちいい汁が出るものじゃないんですね。実際、私ぐらい安い服を着てテレビに出ている人も珍しいかも(笑)。
もちろん最低限のお金は必要で、食べたいものを食べるぐらいのゆとりはいつだって欲しい。子供のためにもある程度は残したいし、彼が成人するまで困らないぐらいの経済力はもっていたいですね。だから生命保険にももちろん入っていますよ。ただ、お金のあることでいいこともあるけれど、お金のあることで悪いこともありますからね。親にあんまりお金があると、子供の働く意欲が失われるということもあるから、適度というのが大事だと思います。 |
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「くらたま! はらへりまんが」より |
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女性にとって仕事も恋愛もお金も大切だけれど、私個人のことでいうと、やはり子供ですね。それまでは子供ってそんなに好きじゃなかったのに、6年前に子供を産んでから、価値観ががらっと変わりました。仕事、お金、恋愛の3要素の上に子供が来ちゃいましたから。今は息子が一番の支え、この盤石の支えがあるから、こんなにがむしゃらに仕事ができるし、恋愛もできるのかもしれません。なにより気持ちが楽になりました、ものすごく。
子供はいま福岡にいて、会うのは週のうち半分ぐらい。もちろん福岡でも書き物の仕事はしていますけれど、子供がそばにいるだけで、気持ちが楽になれる。子供が私に安定感を与えてくれているって、ほんと思います。
20代の若いときは仕事で自己実現したいと考えて、それにむかってガツガツと邁進してきたけれど、それがある程度叶うようになった30代、もし子供がいなかったら、私、それに替わる動機をなくしてたんじゃないかと思うんですね。自分のためだけに生きていくことに、きっと飽きてしまっていたかもしれません。
子供がこんなにいいものなんだってわかるから、もっと欲しくなりますよ。結婚はしなくてもいいから、子供はもう一人欲しいなあ(笑)。
だからといってね、子供は素晴らしいからみなさん絶対生むべきですよ、なんてことは私は言えないし、言わない。それぞれの人生の選択ですからね。少子化問題で国がいろんな政策を立てていますけれど、余計なお世話だと思いますよ。そもそも国の活力のために子供を産むなんていう発想の女性はいませんって。それぞれの意思で子供をもったり、もたなかったりするわけですから、そこは尊重して欲しいですね。 |
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当たり前のことですが、人は歳を取っていきます。肉体も美貌も衰えていくでしょう。でもそのことを私は怖がってはいません。それは人生を歩むにつれて、意見や考え方や価値観を変えることを怖がっていないからだと思うんです。
意見を変えることに躊躇したり、昔の自分の価値観に固執するということは、そこから動けなくなるということ。そういう頑固な人は歳を取ることがむしろマイナスになってしまいますよね。だって考えていることの中味が同じなら、30歳と50歳ではそりゃ肉体が若いほうが、自分にとっても傍目にみても、いいに決まっていますから。
いろんな経験を積んで、中味が成長していって、グレードアップするからこそ、歳を取る意味があると私は思います。私は加齢することがプラスになっている人が好きだし、自分もそうありたいと思います。だって、私、いま35歳だけれど25歳の私には負けていないっていう自信がありますもの。
ただ意見は変わるというのが前提なので、45歳になったら、「35歳の私のほうがよかったわ、あれが人生のピークだったわ」なんて言っているかもしれません。だから将来の私には責任はもてないんですけれど(笑)、いまはそんなふうに考えていますね。 |
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1971年、福岡生まれ、福岡育ち。マンガ家。一橋大学を卒業後、就職が決まらず、ヤングマガジンギャグ大賞に応募して、なんと大賞受賞。このまま順調なマンガ家人生が訪れるかと思ったが、まったく仕事がなく、塾講師や麻雀バイトなどで食いつなぐ。 ダメ男を好きになる女たちを描く『だめんず・うぉ〜か〜』がブレイク。28歳で結婚し、男の子が生まれ、今度こそ順風満帆の人生が訪れると思ったら、30歳で離婚。 現在は両親と息子が住む福岡と、東京を往復する生活。現在も週刊SPAに『だめんず・うぉ〜か〜』を連載中。単行本(扶桑社刊)は10巻を数えた。日本テレビ「スッキリ!!」の毎週木曜レギュラーのコメンテーターも務めている。
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倉田真由美著
『だめんず・うぉ〜か〜』第10巻
2006年6月4日扶桑社刊
税込み価格900円 |
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発行/(財)生命保険文化センター Interview & Writing/広重隆樹
Photo/吉村隆 Editor/宮澤省三(M-CRUISE) Web Design/Ideal Design Inc. |
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