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第3回 快適な睡眠のためのコツ 
三橋美穂(快眠セラピスト)
  睡眠時間を十分にとったはずなのに、なぜか目覚めがスッキリとしないといった経験はありませんか? それは睡眠の質に問題があったからかもしれません。快適な睡眠を得るためにはどうしたらよいのでしょうか。快眠セラピストの三橋美穂さんにお聞きしました。
  眠りの質と睡眠時間
資料1
(資料1)   
  快適な睡眠は、イキイキとした日常生活を送るうえで欠かせないものです。
  質の良い眠りとは、寝始めの深いノンレム睡眠がしっかりとれていて、その後のレム睡眠(※)とノンレム睡眠が、交互にリズミカル(約90分ごと)に繰り返されている状態を指します(資料1参考)
  「寝つきが悪い」とよく言いますが、これは全体的に眠りが浅くなった状態で、眠りの質が下がります。
  眠りが浅くなると、睡眠時間を長くとるように身体がはたらきます。季節で例えると、冬は寒さが刺激となって深い睡眠をとりにくいので、睡眠時間は一年の中で一番長くなります。質の良い眠りには、室内が適温であることも大切な条件となります。
  では、寝始めのノンレム睡眠が深くとれていれば睡眠時間は短くていいのかと言うと、あまり極端なことはできないように身体はできているものです。6時間以下の短い睡眠でも心身の疲労回復ができる「ショートスリーパー」と、9時間以上眠らないと回復できない「ロングスリーパー」が、それぞれ人口の1%程度と言われています。ほとんどの人たちは、6〜9時間で調整しながら眠りをとっている「バリュアブル(可変型)スリーパー」なので、あまり睡眠が短か過ぎると、日中の集中力が落ちたり、体にだるさが残ったりと、何らかの支障をきたします。短くとも6時間程度の睡眠をとるよう心がけてください。
(※)レム睡眠のレム(REM)とは、閉じたまぶたの下で眼球が急速に動くこと=Rapid Eye Movementの略
  日中は活動的に過ごす
資料1
  (資料2)
  睡眠の目的は、昼間使った肉体と大脳の疲労回復ですから、体を動かすと睡眠の必要性が高まります。デスクワークが多く、脳を使う機会が多い現代は、運動不足になりがちですから、睡眠障害とも無関係ではありません。
  睡眠は、体温の変動とも深い関係があります。体温は1日のうちで1℃くらいの高低差があり、一番高いのは就寝5時間前くらいで、一番低いのは就寝4時間後の頃です。深夜0時に寝ている人は、午後7時頃に体温は最高点に達し、体温が下がってくると眠気を感じます。睡眠中は明け方の4時頃が一番低く、徐々に体温を上げながら起きる準備を始めます(資料2参考)
  あまり体を動かさないと体温が十分に上がらないので、体温の下がり方が緩やかになり、体は眠気を感じにくくなります。「ちょっと眠れないな」と感じたら、身体を動かすのもいいでしょう。運動も夕方から夜にかけてすると、体温がきちんと上昇するので、下降の仕方にメリハリがついて、夜はぐっすり眠れます。
  眠る前にはリラックス
  昼間活動して、夜は眠る。ごく自然のことですが、活動時と睡眠時の体の状態は、同じではありません。活動するときには物事にすぐに対処できるように筋肉はやや緊張して引き締まっている状態です。そのため、骨盤や頭蓋骨などの骨も締まっています。ですから、眠るときには緊張をゆるめ、リラックスをする必要があります。リラックスをした先に気持ちの良い眠りは訪れます。  
 リラックスをするためには「気持ちがいいなぁ〜」と感じることをすれば、自然と緊張がほぐれます。ゆったりと入浴をしたり、アロマテラピーを楽しんだり、音楽を聴いたり、軽くストレッチをするなど、自分に合った方法を見つけてください。
 特におすすめしたいのは入浴です。バスタブに入ると「ふぅ〜、気持ちいい〜」と思いながら、長く息を吐いていることでしょう。呼吸は息を吐くときに筋肉がゆるみますから、筋肉の緊張を取ることができます。また、お風呂に入りながら眉間にシワをよせるのが難しいことからわかるように、自然に精神的な緊張を取り去る効果もあるのです。
  寝る前の光、カフェイン、お酒に注意
  眠りを妨げるものには注意が必要です。テレビやパソコンなどの光の刺激は、眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。メラトニンは昼間太陽の光を浴びると脳内で作られて、暗くなると分泌を始めます。眠る前は照明の明かりを一段階落とすなどして、ほの暗い部屋で過ごしてください。  
 カフェインの覚醒効果が消失するのには4時間くらいかかりますから、眠る前は避けましょう。カフェインを多く含む飲み物は、コーヒー、紅茶、緑茶、スタミナドリンクなどがあります。眠る前は、番茶やほうじ茶、ハーブティーなどがおすすめです。
  お酒は、喉が渇いて寝ている途中で目覚めたり、その後なかなか寝つけないなど、眠りの質を落とします。そのうえ、眠るためにお酒を飲んでいる場合は、徐々に酒量が増えていく傾向があります。そうなると、眠っているようでもとても快眠とは言えません。朝まで意識がなかったとしても、それは麻酔で意識を失っているようなもので、眠りの質としては低いものです。お酒は食事のときに楽しむ程度にしてください。
  寝具にこだわる
資料2
(資料3)   




  布団やベッド、枕、パジャマ、シーツ、毛布など、睡眠中に使う寝具は、ダイレクトに眠りの質を左右します。例えば、枕が高いと首筋が突っ張って、肩こりや首の痛みの原因となります。また、気道も狭くなるので、いびきをかきやすくなります。枕をしないと頭が心臓より下がって血流が悪くなり、眠りが浅くなったり、顔がむくみやすくなります。体型に合った枕は、枕をしているかしていないかわからないような感じで、全身の力が抜けて楽に眠れます。そのため、疲れの取れ方も違います。
  適切な枕とは、立っているときの姿勢を寝ているときにも保てる枕です(資料3参考)。後頭部の丸みを受けとめるために、枕の中央はやや低く、首元は少し高い方が自然な姿勢を保てます。また、横向きになっても肩が楽なように、枕の両サイドが高くなっていると、寝返りもスムーズに打てます。
  最近はパジャマに着替えず、ルームウェアのまま眠りについてしまう人も多いようですが、ルームウェアは部屋で過ごすためのものなので、生地が厚く、ごわごわした感触が気になるものです。パジャマを着るようになっただけで、熟睡感が変わったという声はよく耳にします。さらに、オーガニックコットンやシルクなど、素材にもこだわれば、肌が喜んでいるかのように感じて心地よい睡眠に入れることでしょう。

  さまざまなことが影響する睡眠ですが、ここにあげた中で興味をもったことを、ひとつでも二つでも試してみることから、どうぞ始めてみてください。まずは行動をとってみる、それが快適な睡眠への第一歩です。
三橋美穂 <プロフィール>
三橋美穂(みはしみほ)
快眠セラピスト(快く眠るためのセラピーを行っている)
寝具メーカーの研究開発部門長を経て独立。講演や執筆、個人相談を通して、眠りの大切さや快眠の工夫、寝具の選び方などをアドバイスしている。特に枕は、その人の頭を触っただけで、どんな枕が合うかすぐにわかるほど。大手企業の眠りのアドバイザー育成や、商品開発のなどにも携わっている。
著書に『幸せを呼ぶ 快眠ヒーリング』(日本実業出版社)、『快眠セラピー』(KKロングセラーズ)。

オフィシャルサイト  http://sleepeace.com
  発行/(財)生命保険文化センター