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第1回 ロングステイ最近の傾向と問題点 
千葉千枝子(ロングステイ財団評議員)
  ロングステイ最近の傾向
 「ロングステイ」という新たなライフスタイルが、中高年層を中心に近ごろ脚光を浴びている。人生80年といわれる時代ではあるが、気力・体力はもとより、経済的、時間的にも恵まれた穏やかな時期というのはそう長くない。子どもが巣立ち、宮仕えを終えた熟年夫婦が、定年後のある一時期を海外で暮らし、人生を愉しむ。ロングステイは、ワーキングホリデーや駐在員などとは異なり、まさに成熟した大人の選択肢といえる。
 JTBツーリズムマーケティング研究所の調べによると、2004年現在、ロングステイを実践している人の数は約10万人。その7割が、就労や就学を目的としない観光目的の滞在者である。ここ数年、ロングステイ人口は増大しており、2010年には15万人程度の規模になると推計。団塊世代が大量定年を迎える2007年には、この数値が上方修正される見込みもあるという。
 近ごろの傾向として、ひところマスコミでもとりあげられた「海外年金暮らし」のブームは去り、地に足のついた滞在地選びを心がけるロングステイヤーが増えてきた。物価の低い国で滞在することにより、年金でもおつりがくるという考えだけでは、真の国際交流や社会貢献といった、ロングステイが本来持ちあわせる「人生の充実感」を得ることができないと実践者が気づき始めたようだ。
 また、30代40代といった現役世代の潜在ニーズが、にわかに高まりをみせていることも事実だ。年金をあてにしない世代だけに、将来設計において着実に夢を実現するための手段を模索し始めている。こうした実態は、ロングステイ専門誌などの購読者層にも顕著に現れており、今後ロングステイを実践する人は増加の一途をたどると考えられている。
  ロングステイの事前準備
 そもそも「ロングステイ」とは、移住や永住と異なり、海外のひとつの地域に比較的長く滞在することと定義されている。おおむね、観光ビザの範囲内で滞在する人が多いため、日本と往き来するという点では、まさに二重生活。経済力がなくては、長く続けることもできない。まずは、「どのようなスタイルで滞在するか」を決めることにより、ライフプランニングが可能となる。
 滞在するうちに、すっかりその土地が気に入り、「一時居住用ビザ」を取得して、半移住を決意する人もいる。代表的なものに「リタイアメント・ビザ(退職者査証)」があるわけだが(資料1参考)、発給には高い財政条件をクリアしなければならない。外国人のリタイアリーを受け入れるということは、その国にとってたいへん大きなリスクがある。自国民の労働機会を逸することを恐れ、ほとんどの国では就労を禁止している。また、社会保障の対象外だから、高額な医療費は自己負担となる。
(資料1)リタイアメント・ビザのある国
マレーシア 50歳以上
50歳以下
単身10万RM、配偶者有15万RMの預金
〃月7000RM、〃月10000RMの所得証明も
5年
タイ 50歳以上 80万バーツの預金および
月65000バーツの所得証明
1年
フィリピン 35歳以上 50歳未満は75000米ドルの預金
50歳以上は50000米ドルの預金
制限
なし
オーストラリア 55歳以上 (都市部の場合)75万豪ドルの資産提示+
年間6万5千豪ドルの所得証明+75万豪ドルの債券投資
4年
中南米 年金受給者 メキシコ・コスタリカ・グアテマラ・ブラジル等
国によって異なる
ヨーロッパ 60歳以上or
年金受給者
スイス・イギリス・ポルトガル・スペイン
何らかのつながりがあるひとであればOK
出典:「千葉千枝子のロングステイスタイル」
 ところが、リタイアメント・ビザ制度を設けているマレーシアやオーストラリア、タイなどの国々に、取得申請をする日本人の数はあとを絶たない。こうした、いわば「半移住」で成功している人の多くは、下見を数回行って、本当にその土地の水が合うかどうかを試してから決断をしている。一律的な団体の旅行とは異なり、ロングステイは「暮らし」の要素が強い。暮らしぶりの基準は人まちまちであって、ホテルの格付けのようにはいかない。自分らしい、自分にあった暮らし方を探し求めて、何度も現地に足を運び、満足感を得ている。暮らすこと=生活費が、すなわち「予算」となる。
  滞在先を選定するのに欠かせないのが、その土地の物価であろう(資料2参考)。たとえ物価が低い国であっても、生活費の大半を「住居費」が占める。エリアによっても賃料は大きく異なるため、できるだけ地の利がわかってから長期契約に踏み切るようにする。海外不動産の購入を急いでしまうのが日本人の特徴だが、非居住者の不動産購入にはさまざまな規制がある。とりわけ売却時のことは、税制も含め詳しく調べる必要がある。ことアジア諸国は、定期借地権が多いため、安いからといって飛びつくのは早計だ。
(資料2)ロングステイ人気国別物価の違い
出典:「千葉千枝子のロングステイスタイル」
  トラブルで気をつけること
 ロングステイの心配事で、トップにあがるのが「医療」のこと。防衛策として、海外旅行傷害保険の加入が必須だ。現地で民間の保険会社、いわゆるプライベート保険を利用することも可能だが、年単位契約となるうえ、英文の約款を読みこなせるだけの語学力を要する。現地プライベート保険の加入者であっても、日本の保険会社が提供する海外旅行傷害保険にダブルで加入しているケースがほとんどだ。
 テロをはじめ、「治安」を心配する人も多い。車上荒らしや空き巣被害に遭った日本人ロングステイヤーも多く、注意が必要だ。フロントを通らないと館内に入ることができないコンドミニアム様式を選ぶ、貴重品は銀行の貸し金庫に預ける、大金は持ち歩かない、といった心がけで未然に防ぐことができる。また自然災害など思いも寄らない事態に備え、滞在期間が長いロングステイヤーは管轄の公館に「在留届」を提出することも検討する。旅券法の定めで、3カ月以上の在留邦人は届出を義務付けられているが、たとえ3カ月未満であっても提出は可能。届出がなされていれば、救援保護や安否確認に手間取ることもない。
 これからロングステイをしようと考えている人に多いのが「言葉の不安」。ところが、経験者に話を聞くと、言葉の壁はさほどではないという。コミュニケーションをとるために欠かせないのは事実だが、「習うより慣れろ」「テクニックよりパッション」というのが、ロングステイの醍醐味かもしれない。
  国別ロングステイの人気トレンド
 (財)ロングステイ財団が毎年行っている希望地調査(資料3参考)によると、10年前は圧倒的に西側諸国が上位を占め、ハワイが1位を独走した。ところが、5年ほど前から、オーストラリアが首位の座をとってかわり、マレーシアがアジア諸国で唯一ベスト10入りする。
 その理由として、気候が温暖で治安がよく、親日的、物価が低いといった好条件があげられる。観光立州のハワイでは、夫婦ふたりが1カ月暮らすとなると、約36万円程度は必要だ。それに比べてオーストラリアでは、たとえ都市部であっても30万円以下でゆとりある暮らしができる。ましてや、物価が日本の3分の1といわれるマレーシアであれば、16〜17万円程度で同等のクオリティーを得ることができるのだ。
 昨年度(2004年)の調査では、第1位オーストラリア、第2位にはマレーシアが躍進。さらに、リタイアメント・ビザ制度のあるタイやフィリピンも上位につけた。今後は、時差が少なく物価安のアジア諸国が、ますます台頭すると考えられている。
(資料3)ロングステイの希望地調査

ベスト10 1993年調査 2000年調査 2004年調査
第1位 ハワイ オーストラリア オーストラリア
第2位 カナダ ハワイ マレーシア
第3位 オーストラリア ニュージーランド ハワイ
第4位 米国西海岸 カナダ カナダ
第5位 ニュージーランド スペイン タイ
第6位 スイス イギリス スペイン
第7位 イギリス スイス 米国本土
第8位 フランス イタリア イギリス
第9位 スペイン 米国西海岸 ニュージーランド
第10位 米国東海岸 マレーシア フィリピン
出典:(財)ロングステイ財団
  ロングステイおもな情報収集先
ロングステイ財団 TEL:03−3505−4477
  http://www.longstay.or.jp/
   
ワールドステイクラブ TEL:03−3268−2731
  http://homepage3.nifty.com/worldstayclub/
   
NPO日本ロングステイアカデミー TEL:03−3506−1747
  http://www.longstay-academy.com/
   
<プロフィール>
千葉千枝子(ちばちえこ)
中央大卒業後、富士銀行入行。シティバンクを経て、JTBに中途採用第1期生として入社。
96年有限会社を設立。海外ロングステイの普及・啓蒙に伴う執筆、講演活動を行う。著書に「悠々パース暮らし」「ハワイ暮らしはハウマッチ?」ほか。ロングステイ財団評議員・日本旅行作家協会会員・ファイナンシャルプランナー・総合旅行業取扱管理者資格を有し、オールアバウト海外移住サイトhttp://allabout.co.jp/travel/immigration/のガイドを務める。
千葉千枝子のロングステイスタイルhttp://www.longstaystyle.com

※「Long Stay」は、(財)ロングステイ財団の登録商標です。
  発行/(財)生命保険文化センター