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第3回 介護コンビニエンスの今
−24時間訪問介護サービス

森山典明(アースサポート株式会社代表取締役社長) 

平成12年の介護保険制度スタート時、高齢者が自宅で暮らせるように支援することを目的に打ち出されたのが、「訪問介護サービス」です。「24時間訪問介護サービス」は、その柱とされてきました。 “24時間365日営業”のコンビニエンスストア並みに便利な同サービスですが、 来年4月の介護保険法改正を控え、 その現状はどうなっているのでしょうか。 アースサポート株式会社社長(本社:東京・渋谷)の森山典明氏に伺いました。
   24時間訪問介護を必要とする人々
 アースサポートは、介護保険の対象となるケアプランの作成、訪問入浴、訪問介護、デイサービスをはじめ、配食サービス、寝具の衛生加工など多くの在宅介護サービスを総合的に提供している。24時間訪問介護サービスは、渋谷営業所・川崎営業所・名古屋営業所で行っており、渋谷営業所の利用者数は40人前後。そのほとんどが老老介護のご夫婦、独り暮らしか、 老親を抱える二世帯同居の方だ。
 訪問介護サービスには、1回30分未満の「巡回型」と30分以上かかる「滞在型」の2パターンがある。深夜のサービスは、安否確認、水分補給、体位交換とおむつ交換が主で、そのほとんどが「巡回型」で行われている。
 「手厚い介護を必要とする方がいらっしゃるなら、私たちはそれに応えていきます。しかし、正直なところ、24時間の体制を作り、スタッフを集め、維持していくのは大変なことです。深夜は予定がポツポツと入っているというのが現状で、スタッフに待機時間が生じるのもやむを得ません。だからといって、スケジュール表が真っ黒になるほどにご利用者を集めることは考えていません」と森山氏は語る。

一般的に家庭の浴槽は、壁際に設置しているので介助が難しい。訪問入浴は特殊浴槽を室内に持ち込み、体調チェックをしながら入浴するので安心だ。

  割高な深夜料金
 その理由は明快だ。深夜(22時〜翌朝6時)は料金が50%増になる。たとえば、同社・渋谷営業所で30分未満の身体介護を利用した場合、利用者の自己負担は、昼間で248円となる(資料参考)。早朝(6〜8時)と夜間(18〜20時)は25%割増で310円、50%増の深夜では372円。1か月で1万円近い負担増となる。
参考資料
 

訪問介護サービス基本料金表(アースサポート渋谷営業所の場合)

実際のサービス提供時間ではなく、ケアプランに定められた目安の時間を基準とする。
上記基本料金(昼間)に対して、早朝(6〜8時)・夜間(18〜22時)帯は25%増、深夜(22〜翌朝6時)帯は50%増。
訪問介護員養成研修3級修了者が身体介護を行った場合は、上記料金の90%の料金とする。
 森山氏は言う。「できるだけご利用者の負担を軽くしてあげたい。切実にサービスが必要な方には誠実な対応をしたい。でも、必要のない方に無理やり押しつけるつもりはありません」
 現在、サービス開始前にケアマネジャーが作成したケアプランを持って、スタッフが利用者の状況確認のために利用者宅を訪問している。本当にケアプランに盛り込まれた内容が必要かどうかを見極めるためだ。ケアプランに“深夜介護の必要あり”の内容があっても、利用者宅を訪ねたスタッフが、“不要”と判断することもあるという。そのような場合には、ケアマネジャーと相談して、ケアプランを変更することもある。
  “ご利用者本位”が大前提
 「24時間介護サービスとは、たとえば、他人が夜中に鍵を開けて入ってきて、おむつ交換をして、また鍵を閉めて出ていくというサービスなのです。あなたがご利用者なら、どうですか?」つまり、24時間訪問介護サービスとはそういうことなのだ。だから、と森山氏は続ける。
 「今後、24時間訪問介護サービスを拡大する予定はありません。でも、このサービスを必要とする方は、確実にいるのです。ですから、ご利用者がいる限り、続けていく考えです。夜中でもご利用者に『今、来て欲しい』と言われれば、“今”サービスをしなければいけないのです。待っていただくわけにも、断るわけにもいきません」
 24時間訪問介護サービスは、何かあったときすぐに駆けつけられるよう、サービス提供エリアを拠点から車で15分圏内にとどめている。

渋谷営業所では3台の車が深夜に巡回。各車にスタッフが2人一組になって利用者宅を訪問する。

  信頼が必要とされる仕事だからこそ
 スタッフの誠実な対応ぶりを示す、次のようなエピソードがある。ある日の未明、常務に巡回中のスタッフから電話がかかってきた。訪問した家の引き戸の玄関ドアがどうやっても閉まらないのだという。利用者は眠っていて、起こすことははばかられる。しかし、施錠をしないまま、その場を離れることもできない。常務が駆けつけ、古い家屋の玄関ドアの枠そのものがゆがんでいることがわかった。そこで、スタッフと協力し、ドア枠ごと持ち上げて静かに元の位置に戻し、何とかドアを閉めたという。

  鍵を預かって深夜に訪問するというサービスである以上、利用者との信頼関係が大切なことはいうまでもない。“安心”と“満足”を提供することが、スタッフのモチベーションの向上にもつながっている。
   続けることに意味がある
 喜ばれるサービスを提供しているというプライドがある一方で、複雑な思いもある。
 「24時間介護サービスは、需要が少なくて採算がとれないというのが実状です。必要な人に必要な介護を提供するというのが福祉事業の本来の姿ですが、民間企業としては厳しいところです。しゃにむに利益を上げればいいという事業ではないですから。やりがいのある仕事であることは確かですが、行政側とも話し合って、新しいシステムを作る時期にきていると思います。介護は続けることに意義があるので、一度提供したらやめるわけにはいかないのです」
 森山氏は、最後にはっきりとこう話してくれた。

たとえ訪問が深夜であっても、スタッフとの会話を楽しみに待っている利用者もいるという。

<プロフィール>
森山典明(もりやま・すけあき)
アースサポート株式会社代表取締役社長
http://www.earthsupport.co.jp
1951年生まれ。1974年、日本初の民間介護企業アサヒサンクリーン(株)設立に参加。布団の丸洗い乾燥事業からスタートし、1977年に巡回入浴サービス事業を民間企業として日本で初めて展開する。1996年、アースサポート(株)を設立。全国に95か所の営業所(在宅サービスセンター)と9か所の在宅介護支援センター、5か所のデイサービスセンター、関連企業など、従業員約4,500名を抱える総合的な在宅介護サービス企業へと成長させた。民間介護のパイオニアとして、有限責任中間法人日本在宅介護協会常任理事をはじめ、各種役職を歴任している。

  発行/(財)生命保険文化センター