SPECIAL 02 【国際化】 世界レベルのオペラハウスにするために
新国立劇場 オペラ部門芸術監督 トーマス・ノヴォラツスキー

トーマス・ノヴォラツスキー
[Thomas Novohradsky] 
1959年オーストリア生まれ。80年、ウィーン音楽演劇専門大学卒業。同年、サンクト・ガッレンオペラ劇場(スイス)において演出助手としてデビュー。82年にはウィーン国立歌劇場の演出助手となり、以降ミラノ・スカラ座、ザルツブルグ・フェスティバル、ブレーゲンツ・フェスティバル等で演出助手として活躍。94年にはウィーン国立歌劇場日本公演の事務局総監督を務めた。93年ウィーン国立歌劇場制作部長に就任。99年より、新国立劇場で調査員を務め、2001年、新国立劇場オペラ部門芸術参与に、03年、オペラ部門芸術監督に就任。


 ―ノヴォラツスキーさんはオーストリアにお生まれですが、地続きのヨーロッパにあって「国際化」ということに関して、どんなことを感じていらっしゃいますか。
「オーストリアは長い間『オーストリア・ハンガリア帝国』として歩んできたので、国際化という概念はよくわかります。
 そして第一次・第二次の不幸な世界大戦があり、ヨーロッパの多くの国が厳しい戦争を経て、何か一緒にならなければいけないという気持ちが高まり、いまのEUの設立につながったと思います。このこともひとつの今日的国際化の象徴だと思います。まだEU加盟に躊躇している国もありますが、そうした躊躇は芸術にはありません。昔から多文化、多国籍というなかで芸術は発展してきましたから」

―特にオペラでは国際化は当たり前ということですね。日本のオペラハウスの芸術監督として、どういうことをいつも考えていらっしゃいますか。
「目標にしているのは、この新国立劇場を国際的なオペラハウスにすること、世界のトップクラスに肩を並べられるようなレベルにすることです。その評価はステージそのもので決まり、ステージこそが真実で、そこには国籍も関係なければ、スタッフ、キャスト個々人の肩書きも関係ありません。みんな同等です。上演プログラムではモーツァルトから現代ものまでのバランスが必要だと思いますし、キャスティングでは国際的なアーティストと日本人のアーティストのバランスも考えました。そして起用するのは最高のレベルのキャストをということを決めました」

―日本ではまだオペラが本当の意味で根付いてるとはいえないと思うのですが、それに対しては……。
「こう観なさいと、聴衆は教育できるものではありません。聴衆そのものが真実です。われわれの仕事は、物語を伝え、それを観て聴いて聴衆のみなさんが理解し、楽しんでいただけたら、それで成功なのです。そういう意味では、みなさん楽しんでいらっしゃると思いますよ。もう一歩進んでヨーロッパでは、ステージは聴衆とアーティストたちとの交流の場になっています。聴衆からこういうものが観たいという強い気持ちやアイデアがいつもあります。アーティスト側はその聴衆の意志をしっかり受け止めて舞台に立ちます。ですから、1つひとつのパフォーマンスは、聴衆のハートにアーティストたちが近づく機会なのです。

 そのために私は聴衆の意見を興味深く聞くようにしています。みなさんとお話をする機会をできるだけつくり、終演後のオペラトークを通じて話し合ったり、休憩時間やトークのあとにも積極的に話をしています。E-mailもいただきますし、お手紙もいただきます。みなさまが何を必要とし、どういうところを向上させてもらいたいのか、そうした意見を非常に大切にしています。みなさんの意見のなかには私を驚かせるものもあります。聴衆の前に身をさらしているわけですから、いろいろな意見があるのもごく自然なことです。そうした意見もなるべく耳をかたむけるようにしています。すべての意見を尊重し、真面目に受け止めることで全体像が把握できるからです」

―日本人の国際化に対する姿勢をどうお感じになりますか。
「東京に住んで1年ちょっとですが、非常に心地よく過ごしてます。そうしたなかで、日本人の国際化ということを考えてみると、いろいろ考える余地はありますが、国際化という概念、そしていろいろな国の人たちの考え方を学んでいるのではないでしょうか。意見が違ったとしても、それに対応できるようになってきています。ヨーロッパの人、アメリカの人というのではなく、あくまで同等の人間として相手の考え方を理解しながら、自分の意見も主張するということを実践していると思います。どの国も個性があり、私も日本(人)から学ぶことがあるし、みなさまも私から学ぶことがあると思う。一緒になって新国立劇場を世界のトップの音楽を提供するオペラハウスにするという目標に向かって進みたいと思っています」

―秋からの新国立劇場のオペラ公演も楽しみです。
「世の中、音楽がなければどんなに寂しいものになるでしょうか。新国立劇場のオペラハウスでぜひ魔法を楽しみ、みなさまもそこからインスピレーションを受けていただけたらと思っています」

 
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