特集-3 キャリアウーマンからあえてシングル志向へ
 「窓の外をただずっと何時間もぼんやり見つめていたり、廊下にごろりと寝ころんだまま眠ってしまったりする。読んだ本は開きっ放し、洗濯物は乾燥機に入れっ放しで、食べたい時に食べ、眠い時に寝る。自分の部屋と台所以外は何年も掃除すらしていない……」
 これは1989年に発売以来、ロングセラーを続けている吉本ばななさんの『哀しい予感』の一節。シングルの音楽教師の生活ぶりを示す一節だ。
 まさに、この自由な感覚こそがシングルライフの核心なのだが、ここでは30代40代女性の「シングル感覚」について考えてみた。

 3年前に当センターが行った『ワークスタイルの多様化と生活設計に関する研究』というセミナーで、大沢真知子日本女子大学教授は、「キャリアアップを目指して派遣(社員)を選んだ人が大卒女性の4人に1人いて、自分がやりたいことに多くの時間を使いたかったから、という理由で正社員ではなく派遣を選んだ女性が22.3%いる。世の中変わってきて、自分の都合で働きたいとか、留学するためにお金を貯めたいとか、自分の生き方、将来に対する希望も変わってきており、ナンバー1よりオンリー1という、従来の集団的なみんなで頑張るという社会から個人の目標を自分なりに達成するような社会へ変化する兆しがみられる」と、報告していた。
 その彼女たちの人生観の変化は当然恋愛・結婚観の変化とつながる。
 人生の充実度を測るのに、働きがいだけではなく、自分なりのライフスタイルを手に入れ、恋愛もして、というように私生活を含めたトータルな視点から考えて、測ることが多い。これまでのキャリア志向の女性は、ともすれば仕事第一、男性も家庭もかえりみる余裕はなく、結果的にシングルとして仕事一筋の人生だったが、今は仕事と人生のバランスを重視する傾向が強く、シングルもあえて自らが選んだ道といえる。つまりキャリアウーマンから、ひとりで立派に生きていくシングル志向の道を選んだということなのだ。
 本号の「調査報告」でも、結婚否定派は男性の25.3%に対し、女性は49.4%と半数近い数字がでている。
 5年前に山田昌弘東京学芸大学助教授が、学卒後も親と同居している未婚者を「パラサイト・シングル」と名付けて、流行語になった。その量的増大と未婚率上昇の関連が裏付けるように、結婚するのが普通という社会通念が薄らいでいる現在、この数字は不思議でも何でもない。その理由はさまざまだが、婚姻制度にもこだわらない新しい形を模索している女性が出現していることも確かである。
 結婚というカタチをとらなくてもパートナーとしてつき合い、婚姻届を出さずに一緒に住むという事実婚もひとつだし、また、結婚を前提としない恋愛関係を続けることで仕事オンリーの生活とバランスをとろうとする女性も増えている。さらにはシングルマザーという選択肢もある。いずれにしても、そこには結婚を含めて自分らしい生き方をしようと迷い、悩む女性の姿がある。
 が、それは悲しいことではなく、自分で選べる自由度が今の女性にはあるということだ。選択肢は多ければ多いほどいいが、そこにひとつの落とし穴があるのも忘れてはならない。あまりの多さに絞りきれずに、ずるずると時の流れに流されてしまうことの危険がある。そこで必要になるのは「個」をもっているかどうか。自立という言葉におきかえてもいいが、「個」とは何がしたいかを自分がわかっているということ、そして、したいことをつねに自分で意識し、それに対して責任をもつということだ。
 結婚はその結果であり、シングルもまたしかりなのである。

表 いまのところ結婚しない理由は?(複数回答)
 
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