特集2 栄養と食事編
健康に過ごすための毎日の食生活
株式会社えいよう塾代表 管理栄養士 井上 八重子
食事をこころより楽しんで食べられる幸せを堪能するには、毎日がご馳走である必要はないのです。食欲があって、そのときの食べ物が安心して食べられることではないでしょうか。食事の量はその日その日で多少変動があっても、1週間を平均してみれば同じくらいというのが理想です。毎日細かくエネルギーを計算してチェックしてみなくても、体重を計ってみて、同じようなら食べている摂取エネルギーと使っている消費エネルギーはつりあっていると考えてよいでしょう。しかし、中高年になると1年に1〜2kgとほんの少しずつ体重が上昇している人もいます。これは基礎代謝といって、からだを動かさないときの消費エネルギーが少しずつ少なくなっているのが原因です。基礎代謝を高くするには、適度な運動によってからだを筋肉質に保つことが大切です。
井上 八重子
[いのうえ・やえこ]
株式会社えいよう塾代表 管理栄養士
女子栄養大学卒業、女子栄養大学栄養クリニック勤務後に独立。1991年、株式会社えいよう塾代表、現在に至る。日常生活に役立つ栄養学(1食500kcal、塩分3g)をコンセプトに料理教室を開催。東京都墨田区すみだ福祉保健センタ−健康増進の栄養指導や各企業・官公庁の健康管理室で栄養相談などのほか、東京YMCA国際ホテル専門学校講師(95年4月〜)としても活躍。
最近の著書及び共著に、『元気なからだをつくる ビタミンがわかる本』(日本文芸社、98)、『からだの不調を食事で治す』(女子栄養大学出版部、2001)、『コレステロール・中性脂肪を下げるレシピ』(新星出版社、02)などがある。
栄養のバランスのとれた食事
《栄養のバランスのとりかた》
 食べたいものを食べたいだけ食べるのは、身体が要求しているからいいんだという人がいますが、身体を動かす機会が少なくなっている今の生活では、身体の要求どうりに食べていると太ってきたり、生活習慣病になる人も少なくありません。からだをつくるたんぱく質とからだの調子をととのえるビタミンやミネラル、エネルギー源になる糖質や脂質をバランスよくとることが大切です。
 たんぱく質の必要な量は1日約60gです。たんぱく質はいろいろな食べ物に含まれていますが、良質のたんぱく質は魚や肉、豆腐など大豆や大豆製品に多く含まれます。1日に卵1個、魚や肉を1日に2切れ、それに大豆製品を組み合わせるとよいでしょう。卵はコレステロ−ルのこともあり、敬遠する人もいるようですが、血液のコレステロ−ル値が正常であれば、手軽にとれる良質タンパク質です。魚と肉は献立によっては、魚が続いたり肉が続いたりしてもよいですが、1週間を通しては、半々が理想的で、どちらかに偏りすぎないようにしたいものです。豆腐や納豆はそのまま食べたり、料理したりと応用範囲が広いですから、豆腐なら半丁を毎日食べたいものです。
 ビタミンやミネラルは野菜を1日に350gと果物を1〜2個組み合わせてとるとよいでしょう。ここまではからだを作るために必要な栄養素です。だれでも必ずとりましょう。
 エネルギー源になるのは主に糖質と脂質です。これらはからだを動かすのに必要なものですが、とりすぎると肥満などにつながります。自分の活動量に合わせてとりたいものです。ご飯なら1日茶碗に3〜4杯が目安です。脂質はサラダ油なら1日で大さじ1〜2杯がよいでしょう。

※お奨めメニューは【レシピ-1】参照
《規則正しい食事のとりかたは朝食がポイント》
 朝起きたときに、空腹感があるか食欲がないかでは、大きな差があります。長年の習慣だから朝ごはんは食べないという人でも、夕食の時間を少し早くしたり、量を少な目にしてみると、意外に朝食が食べられるようになることが多いのです。夕食が軽くなると、増え気味だった体重が減ったりと体調の良さを再確認をする人も多いようです。
 朝食の効用は
(1)身体を目覚めさせる。
目が覚めていても、身体は目覚めていない場合は少しでも食べて胃腸を目覚めさせる。
(2)太りにくい身体をつくる
1日2食の人と3食の人を比べると、食事と食事の間があきすぎて身体が一種の飢餓状態になって食べはじめると食べ過ぎたり、吸収がよくなり、太りやすい傾向に。
(3)エネルギ−の補給
脳のエネルギ−源はブドウ糖だけ。朝食を食べてブドウ糖を補ってあげないと朝起きても体温が上がらないで頭がボ−ッとした状態に。朝の仕事がはかどらない人は昨夜の疲れのせいにしないで、朝食を食べる努力を。
(4)便秘予防
朝食を食べて、腸の動きに刺激を与えて、快食と快便を。

【お奨め朝食メニュ−】

「ご飯にみそ汁、納豆、お浸し、果物」と揃うと理想的です。
 そこまではとても無理という方は、難しく考えないで、とにかく「何かは口にいれる習慣」をつけることが、第一歩です。料理をしなくても食べられるもの、例えばバナナに牛乳やヨ−グルト、コ−ンフレ−クに牛乳をかけたものでもよいです。また、通勤途中で、おにぎりと野菜ジュ−スを調達してもよいでしょう。
 朝食を美味しく食べられるかどうかは、1日を元気で過ごせるかのバロメ−タ−です。
食物繊維をきちんととって生活習慣病予防
《食物繊維の働き》
 食物繊維というとさつま芋やセロリの筋など筋っぽいものを思い浮かべる人が多いのですが、今の食物繊維の考えかたは「人の消化酵素で消化されない食物成分」で水に溶ける食物繊維と水に溶けない食物繊維の2種類があります。
 食物繊維の身体のなかでの働きは、コレステロ−ルを吸着させて排泄させる作用や食物繊維自体は消化吸収されないので血糖値が急に高くなるのを防いだりする作用があり、排便をスム−ズにすることで大腸がんの予防になることがわかってきました。
 栄養相談をしていても、食物繊維のとりかたを中心にアドバイスをすることで、高脂血症や糖尿病が改善する方が大勢います。栄養の1日の目安を示す栄養所要量が平成7年より新しくなり、その中で食物繊維の目標量が1000kcalあたり10gと示されました。成人の1日の摂取エネルギーは2000〜2500kcalですから、食物繊維は20〜25gはとりたいものです。
食物の1回量の食物繊維量
種類 1回目安量 食物繊維量
穀物 ライ麦パン 1枚(60g) 3.4g
  玄米ごはん
1杯(150g)
2.1g
  食パン
1枚(60g)
1.4g
  ご飯
1杯(150g)
0.5g
豆類
納豆
1パック(50g)
3.4g
  ゆで大豆
20g
1.4g
  木綿豆腐
1/3丁(100g)
0.4g
種実
ごま
10g
1.3g
野菜
かぼちゃ
4切れ(100g)
3.5g
  にら
1束(100g)
2.7g
  なす 1個(100g)
2.2g
  ブロッコリ−
2房(50g)
2.2g
  トマト
1/2個(100g)
1.0g
  オクラ
2本(20g)
1.0g
  人参
1/3本(30g)
0.8g
  ピ−マン
1個(30g)
0.7g
  ごぼう
10g
0.6g
茸類
えのき茸
1パック(100g)
3.9g
  エリンギ
1本(50g)
2.2g
  生しいたけ
1枚(20g)
0.7g
藻類
干しひじき
5g
2.2g
  昆布
小1枚(5g)
1.4g
  わかめ(戻し)
10g 0.3g
果物
アボカド
1/2個(70g)
3.7g
  キウイフル−ツ
1個(100g)
2.5g
  りんご
1/2個(100g)
1.5g
  もも
1/2個(100g)
1.3g
  バナナ
1本(100g)
1.1g
《食物繊維の多い食べ物野菜の上手なとりかた》
 毎日の食事で、いろいろなものを組み合わせて、食物繊維を上手にとりましょう。
食物繊維の多いものばかりがよいのではなく、1日の食物繊維の目安量は20〜25gが望ましいとされています。

 栄養指導をしていて感じることは、野菜不足の人が多いということです。
 1日の食事内容を聞くと、朝はパンにコーヒー、昼は麺類、夕食はメインのおかずに野菜のおかずが1〜2品という人が多いようです。夕食には野菜料理を食べているので、野菜をけっこう食べているような気がしている人が多いのですが、野菜の1日量を食べるには、3食とも野菜料理が入らないとなかなか難しいです。
 野菜料理は生で食べようとすると、かさが多くて食べきれません。加熱して食べるには料理をしてということで、手間がかかるので、野菜が後回しになりがちです。また、家族の人数が少なくなると、野菜の種類をたくさん買っても食べきれないうちに腐らせてしまうこともよく聞きます。そういうときは、1回の買い物では、緑黄色野菜は1種類、淡色野菜は2種類として、それを食べ終わったら、次は違う種類の野菜を買うなどの工夫をすると、いろいろな種類がとれます。
 野菜の効能は、食物繊維以外でも身体の調子を整えるビタミンやミネラルが豊富なことです。野菜の1日の目安量は緑黄色野菜を150g、淡色野菜200gです。緑黄色野菜は人参、小松菜、カボチャ、チンゲン菜などがあり、淡色野菜にはもやし、レタス、大根、かぶなどがあります。これらの野菜を上手に組み合わせて3食に振り分けて食べることで、料理しなければと肩に力を入れ過ぎずに続けることです。

※お奨めメニューは【レシピ-2】参照
【レシピ-1】 ◆豚肉とかぼちゃの炒めもの
[262kcal・たんぱく質 18.5g・塩分1.5g・食物繊維1.5 g]
材料【準備】 4人分  
  豚肉 薄切り【1口大に切る】 320g  
  大1+1/3  
  しょうゆ 小2  
  かたくり粉 小2  
  かぼちゃ 【いちょう切り】 240g  
  きくらげ 4g  
  【水でもどし、石づきをとり、一口大にちぎる】  
  長葱<a> 1/2本  
  しょうが 少々  
  にんにく 少々  
  大1+1/3  
  しょうゆ 大1+1/3  
  スープ (ブイヨン0.5) 1カップ  
  トーガラシ 少々  
◎作り方
長葱、しょうが、にんにくはみじん切りにし、かぼちゃは皮つきのまま、1口大の薄切り。

豚肉に、酒としょうゆをもみ混ぜ、次にかたくり粉をもみ混ぜる。

中華鍋を弱火で熱し、油を入れ<a>とトーガラシをいため、香りがでたら、豚肉をほぐしながら炒める。豚肉の色がかわったらかぼちゃときくらげを加え炒める。

43にスープを加え、かぼちゃが柔らかくなるまで煮る。 しょうゆを加え、水分をとばす。


【レシピ-2】 ◆アボカドときゅうりのわさび和え
[69kcal・たんぱく質 1.6g・塩分0.7g・食物繊維2.3g]
材料 4人分  
  アボカド 小1個(30g)  
  レモン汁 少々  
  きゅうり 2本(5g)  
  ミニトマト 4個  
  レモン汁 <a> 大1+1/3(5g)  
  しょうゆ 小2(3g)  
  少々 (0.3g)  
  わさび 少々  
◎作り方
アボカドは皮と種を取り、いちょう切りにし、レモン汁をかける。

きゅうりは薄切りにし、塩(分量外)を振り、しんなりしたら、絞るトマトは輪切りにする。

<a>をよく混ぜ、アボカドときゅうりとトマトを和える。

43を器に盛り、わさびを添える。
 
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